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俳句 短歌 ことばの花表現辞典について

  • はしがき

はしがき

 神田神保町の古書店街を歩くと、俳句や短歌・詩などの短詩型の文学作品がひっそりと並んでいます。高価な希少本もありますが、かつて出版された全集ものなどの中には、百円玉数個で購えるものもあります。ありがたいことに千年にわたる、うたびとの“表現の宝庫”を手にすることができるのです。

 とはいえ、せっかくの宝庫に目を通す時間はなかなか持てないのが現実です。
編者は数人の仲間と連句を楽しむかたわら、十年ほど前から短詩型の表現の収集を続けてきました。時には一日十時間近く読み耽って採集をしたこともあります。念頭にはいつも連句仲間を思い浮かべながら、実作者にとって、どのような表現が参考になるかと考えてきました。そして刊行した本が三冊の五七語辞典です。

 五七語辞典は文字通り、5音7音のしらべを基調に、採集した表現例を漢字一文字で分類した辞典です。一種の言葉の混沌(カオス)から読者が新しい発想を広げられるようにと考えました。ことば探しをしていた実作者の方々はすぐ趣旨を理解してくださり、活用されているようです。

 御存じのように短詩型の文学には、独特の言葉づかいがあります。日常使われる散文の言葉とは一味ちがう、いわゆる「雅語」とか「うたことば」といわれるものですが、それら一つ一つの言葉に光をあてて見出しにたて、類語引きの辞書に仕立てたのが本書です。

 収録した表現数は約四万。見出し数は一万四千になりました。辞典といっても表現集なので、「初めに表現ありき」です。引用した作品は、時代も万葉から昭和前期まで千年にわたります。それらを一堂にまとめるのにはかなり無理があります。普通の辞典のような整合性は望めません。臨機応変に、用例がもっとも生きてくるようにまとめたつもりです。

 とくに主眼としたのは、「語彙を広げること」です。どのように分類したら、読者が語彙を広げるのに参考になるかと考えて、類語引き仕立てにしました。うたのイメージがわいたものの、どんな言葉で表現したらいいだろうかと考えたときに参考になるでしょう。そして、まずは読めなくては始まりませんから、ふりがなを多くつけました。この本を一冊読んでおくと俳句や短歌などがすらすら読めるようになるはずです。

 また本書は実作者でなくても、言葉を味わえる辞典です。用例はごく短いものですが、その短い言葉の中に、それぞれの時代のうたびとたちの表現の模索(苦闘)の跡が垣間見られます。

 ぜひ、短詩型ならではの凝縮された美しい表現(=ことばの花)の世界にひたってみてください。    

編者