明解方言学辞典

定価
1,980円
(本体 1,800円+税10%)
判型
B6判
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-385-13579-3

方言学の広い分野を統合整理し、近年急速に研究が進んだ新しい概念も取り込んだ、初学者から研究者まで使える辞典!

方言学に親しみ、方言学を学ぶための1冊!

木部暢子 編

  • 引きやすい、読みやすいレイアウト。
  • 方言学の基礎から専門知識まで学べる、約190項目。
  • 新しい概念を多く取り込み、方言学の世界を大きく広げる。
  • 関連項目を見つけやすい、便利な「目次索引」・「英日対照表」。

特長

さらに詳しい内容をご紹介

はしがき

本辞典は、各地域のことば(方言)を調査・研究するときに知っておきたい概念や用語、必要な事項をできるだけ分かりやすく解説したものです。これまで、各地の方言を集めた、いわゆる方言語彙集やフィールドワークの方法を解説した書籍はいくつかありましたが、方言学に特化したコンパクトな辞典はありませんでした。フィールドワークに持っていって、その場で必要なことが調べられるような辞書があったらなあ、と思っていたところ、三省堂の飛鳥勝幸さんから本辞典のお誘いを受け、すぐにお引き受けしました。

本辞典は、すでに刊行されている『明解言語学辞典』を参考にしています。大きさがハンディーで、フィールドワークに持っていくのにちょうどいいこと、見出しがすべてページの上に来ていて、引きやすくなっていること、各項目の記述が半頁から2頁の間でコンパクトにまとめられていることといった体裁上の特徴もさることながら、最も参考にしたのは、「近年急速に研究が進んだ分野の新しい概念も多く取り入れられ」ている点です(『明解言語学辞典』「はしがき」より)。方言の分野でいうと、近年の琉球諸方言の研究成果には目を見張るものがあります。本辞典では、これらを積極的に取り入れました。各項目の説明にも琉球諸方言の事例が多く取り上げられています。ただし、これらを琉球だけの問題と考えないでください。似たようなことは本土諸方言にもあるはずです。本土諸方言の事例も同じで、他の地域にも似たようなことがあるはずです。読者の方々はこれらを参考にして、是非、それぞれのフィールドで同じ問題を調査し、分析してみてください。

本辞典の編集にあたっては、協力者の青井隼人氏、原田走一郎氏、平子達也氏、山田真寛氏に項目の設定の段階から加わってもらい、執筆者の調整や各執筆者の原稿のチェックなどをお願いしました。執筆者の方々には、分かりやすい表現への書き換えや方言の事例の追加などをお願いしましたが、みなさん、これらを快く受け入れてくださいました。

英訳に関しては、Celik Kenan Thibault氏の力を借りました。彼は沖縄県宮古島や多良間島の方言の研究者で、フィールドワークの経験も豊富です。そのような視点から英訳のチェックをお願いしました。じつは、各地の方言の特徴を考慮した上で用語を英訳しようとすると、従来の訳ではしっくりこない場合があります。たとえば、本辞典では「方言のアクセント」を‘accent systems of Japanese dialects’ではなく‘prosodic systems of Japanese dialects’と訳しています。方言の中には、英語のaccentにうまく対応しないシステムをもつものがあるからです。ほかにも、従来とは異なる訳をしている項目がありますが、それはこのような理由によるものです。

最後に、動きの遅い私たちの編集作業を根気強く支えてくださった三省堂の飛鳥さんに深く感謝申し上げます。

本辞典が各地のフィールドワークで使われることを願っています。

2019年2月 木部暢子

執筆者一覧

編集

木部暢子[国立国語研究所]

執筆者一覧(*は編集協力者)

青井 隼人 阿部 貴人 有田 節子
有元 光彦 五十嵐 陽介 井上 優
大槻 知世 大西 拓一郎 小川 俊輔
菊澤 律子 衣畑 智秀 木部 暢子
小西 いずみ 相良 啓子 佐々木 冠
笹原 宏之 重野 裕美 渋谷 勝己
下地 理則 白岩 広行 白田 理人
高木 千惠 高田 三枝子 當山 奈那
トマ・ペラール 友定 賢治 中川 奈津子
中西 太郎 新永 悠人 野間 純平
林 由華 原田 走一郎 日高 水穂
平子 達也 松浦 年男 松倉 昂平
山田 真寛 鑓水 兼貴 横山 晶子

項目

挨拶/相づち/曖昧アクセント/アクセント対応/アクセントの類別語彙/アコモデーション/アスペクト/東歌/育児語・幼児語/意志表現/位相/一段化/イディオレクト/忌みことば/意味論/依頼表現/因子分析/イントネーション/インフォームドコンセント/受身/ウチナーヤマトゥグチ/S字型モデル/N型アクセント/応答表現/オ段長音の開合/音韻史/音韻論/音響分析/音声学/音声記号/音節/音素/音便/音変化/外来語/係り結び/格/過剰修正/活用/仮定表現/可能表現/漢語/感情語彙・感覚語彙/感動詞/間投助詞/勧誘表現/擬音語・擬態語/記述文法/気付かない方言/希望表現/基本周波数/疑問表現/逆使役/九琉祖語(九州・琉球祖語)/共時論・通時論/キリシタン資料/禁止表現/句・節/敬語/形式名詞/形態音韻論/形態素/形態論/経年調査/京阪式アクセント/形容詞/形容動詞/原因理由表現/言語獲得/言語習得/言語生活/言語接触/言語地理学/言語の島/言語類型論/語彙/口蓋化/喉頭化音/コードスイッチング/コーパス/語声調/五段化/コピュラ/語用論/再活性化/サンプリング/子音/使役/指示詞/指小辞/自然談話/自他の対/自発表現/社会言語学/終助詞/主語/授受表現/述語/準体助詞/条件表現/証拠性/情報構造/消滅危機言語/親族名称/身体語彙/新方言/スイッチリファレンス/推量表現/ズーズー弁/ストレス/清濁/接語/接辞/促音/存在表現/待遇表現/代名詞/多型アクセント/他動性/談話分析/地名/中間方言/中舌母音/調音器官/直音・拗音/テンス/同音衝突/東京式アクセント/統語論/東西対立/動詞/ドキュメンテーション/特定性/とりたて表現/内省/内輪方言・中輪方言・外輪方言/南北対立/日琉祖語/日本手話の方言/ノンバーバル・コミュニケーション/波状仮説/撥音/反語表現/半母音/比較言語学/比況表現/ピジン・クレオール/否定表現/卑罵表現/標準語/品詞/フェイスシート/副詞/フット/文法化/文法数/ヴォイス/母音/母音融合/方言意識/方言区画/方言周圏論/方言地図/方言のアクセント/方言札/方言文献/方言文字/ミラティビティ/民間語源/無アクセント/無声化/名詞/命令表現/モーラ/目的語/モダリティ/屋号/有気性/有声化/有生性の階層/有標性/ゆすり音調/様態表現/四つ仮名/呼びかけ表現/ラ抜きことば/リズム/類推/レジスター/連体節/連濁/連母音/VOT