三省堂 現代川柳必携

定価
1,980円
(本体 1,800円+税10%)
判型
A6判
ページ数
528ページ
ISBN
978-4-385-13781-0

21世紀に向け、さらに発展する可能性の高い「現代川柳」のハンディなアンソロジー。

田口麦彦 編

21世紀に向け、さらに発展する可能性の高い「現代川柳」のハンディなアンソロジー。

創作によく詠まれる課題1,400を人間、社会、文化、自然など34に大分類し、7,000の佳句を選択。

情報通信・福祉・環境などの項目も設置。鑑賞に句作に、スピーチにも役立つハンディ辞典。

巻末に「語句」「掲載作家」の索引。

2002年に熊本日日新聞の第23回「熊日出版文化賞」受賞。

特長

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見本ページ

まえがき

 俳句には歳時記、短歌には秀歌集が数多く世に出ている。そして川柳は、と問われたときに返すことばがなかった。

 江戸時代に詠まれた川柳については著作が多いが、現代川柳のアンソロジーは数少ない。特に、一般の読者の方たちが手軽に見られるハンディな辞典の出版は悲願であった。

 目にふれることがなければ、文芸として評価されることもない。人間洞察の深さ、時代批評の鋭さで多くの人々に愛されている川柳が、もっと世の中に広まってほしい――その思いひとすじでこの本を編ませていただいた。

 本書は、現代川柳によく詠まれるテーマ約1400を人間・社会・文化・自然など34の大分類項目に配列し、広範な作品より7000余の秀句を選択して例示したデータブックである。いま注目の情報通信・福祉・環境・教育等の項目を設け、最新の作品を収めた。

 川柳の川幅は広くて、かつ深い。

 例句として掲載させていただいた多くの作家には深く感謝申し上げる。

 なお、本書はデータブックとしての目的のため語句の解説はない。既刊の『川柳表現辞典』(飯塚書店)と併せてご利用いただければ幸いである。

2001年 7月

田口麦彦

ジャンル構成

愛情/医療・保健・福祉/環境/季節/教育/行事/経済/芸術/形容/国家/時間/自然/思想・哲学/社会/宗教/趣味・レジャー/情報通信・IT/職業/植物/人生/身体/心理/スポーツ/生活/政治/戦争と平和/地理・交通・運輸/動作/動物・虫・魚・鳥/人間/文化/倫理/歴史からなり、

「愛情」は愛・愛人・愛する・逢うなど19項目、「医療・保健・福祉」は遺伝子・医療ミス・介護・リハビリなど49項目からなる。

熊本日日新聞での書評

 若老男女必携の一冊である。と、あえて「若」を筆頭にあげたのは、若い人たちにこそ本書を勧めたいからだ。

 最近、若い世代のさまざまな問題が取り上げられるが、一方的に どうすればいいか? それはできる限り多くの人と出会い、人そして人を取り巻く社会に真剣に向き合うことだ。でも、人は一生の間に何人の人と、いくつの人生と出会えるのだろう。老いも若きもこれまでに知り合った人の数を勘定してみればよい。雑踏の中ですれ違う見知らぬ一人一人が一つ一つの人生を持ち、その中には玉もあれば石ころもあるのに、それを知ることはなかなかできない。

 そこで、本書のページをめくってみてはいかがだろう。川柳は人と人を取り巻く社会そのものを詠みこみ、映し出す鏡なのだから、川柳の中には宝も石ころも転がっている。まずは、本書を一読して、みようみまねでよいから川柳を一句詠んでごらんなさい。社会を映すと同時に、自分を映す鏡であることに気がつくはずだ。

 田口氏は川柳を通じて全国的に活躍されており、既に何冊もの著作を上梓されている。本書はこれまでの活動の集大成とも言うべきもので、千四百テーマ七千におよぶ句がコンパクトに収録されている。収録された七千句は七千の人生の一コマにほかならないが、一句ごとに瞬間の心情や世相が描かれている。

 十コマのスライドだけによる映画こそが理想であると書いていたのはビートたけし監督であるが、その意味で、本書には数百のストーリーが詰め込まれていると言っても過言ではないだろう。川柳愛好家だけでなく、まさに若老男女「必携」として机上に置きたい一冊である。

(九州東海大学工学部教授・嶋村清)