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「コンサイス日本地名事典」について

第5版の刊行にあたって

先日,京都駅八条口付近を歩いていると,修学旅行生に呼び止められ,「ひがしでらはどこですか」と尋ねられた。 一瞬,私は言葉につまり,「とうじ(東寺)のことですね」と聞き返し,寺への道順を教えた。 また,駅の表口では,観光客が「ふかどろいけ」だ「みぞろがいけ」(深泥池)だと話し合っている場面に出会って微笑ましくさえ思った。 正確な地名の表記と読み,できれば古い読みや別の名称を含めて知ることは,社会生活を円滑に営むために必要な条件ではないか。 こう思って『コンサイス日本地名事典』の初版を刊行したのは1975年正月のことである。 コンパクトながら,日常生活に必要で内容は魅力に富むという世評を得て版を重ねること4回におよび,このたび第5版を刊行することに至った。 感無量である。私は繰り返して言うが,社会生活をスムーズに営むうえで,地名事典は必要なものではないか。 今ではこのような自負心さえ抱くようになっている。

都市化・情報化の急速な進展,交通手段の革新に次ぐ革新は止まるところを知らない。 現用地名はすべて生きている。根幹部分は変わらないとしても徐々に変化してゆくことは必須である。 第5版も当然のことながら,記載内容に最新の情報を盛り込み,とくに市区町村の行政地名に関しては2007年10月1日現在の状況を記載することとした。 この地名事典がいつまでも読者諸賢に愛用され続けることを,執筆と監修にたずさわった者として願ってやまない。

2007年10月

谷岡武雄