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「てにをは辞典」について

はしがき

この本を開くと、▲や▼といった記号と単語が並んでいるばかりで、国語の辞書のような言葉の説明が見当たりません。「この本はどういう本なのか?」 「どう使えばいいのか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

実は、この本は文章を書くときの手助けとなることをめざして編集したものなのです。より適切な言葉を選びたい、表現を工夫したい、そう思った時に役に立つ、いわば、"文章を書くとき頼りになる相棒"といったところでしょうか。

言葉は単独でも使われますが、多くの場合、二つ以上の言葉が結びついて使われます。この結びついた形を、本書では、「結合語」と呼ぶことにします。国語辞書は言葉の意味と文法的な解説を主とするので、紙面の制約上、わずかしか結合語の例を載せられません。

本書には、言葉の意味と文法的な解説はありませんが、のべ六十万の結合語例を載せています。本書は、国語辞書を補完する一冊として使っていただくと、より力を発揮すると思います。

編者が、この結合語に関心を持って採集を始めたのは、今から二十年ほど前のことです。

きっかけは、文章に関わる仕事(校正)をしながら、この言葉はどうもしっくりしないな、他の言い回しや表現はないのだろうかとさがした時に、参考になる本が見当たらなかったことでした。それならと、自力で結合語を採集し始め、『逆引き頭引き日本語辞典』 (講談社+α文庫、97年)にまとめました。助詞「を」をとる結合語十七万例を集めた辞典です。読者からは、一見、無関係な言葉が次々と並ぶので、発想があちこち飛んで脳が刺激されて面白い、どのような場面でこの言葉を使ったのか情景を思い浮かべながら読んでいくのも楽しい、翻訳の時に役に立つ、言葉さがしに使っている、などの声が 届きました。

今度の『てにをは辞典』は、「を」だけでなく、「が」「に」「の」などの助詞を介して結びつく結合語や、形容詞や副詞などとの結合語まで収めたので、前作とは比べようもないほど大部のものとなりました。脳がハレーションを起こしてくらくらするという方もいらっしゃるかもしれませんが、それは、その人の語彙が豊富で、想像力が豊かな証拠でもあります。

言葉の結びつきには、助詞が大きな役割を果たします。本の内容をイメージしてもらうのによいと考え、本書のタイトルには、助詞の代名詞でもある「てにをは」を使うことにしました。また、一つでも多くの結合語例を入れたいと考え、スペース省略のために記号(▲▼…〜)を使ったので、最初はとまどわれるかもしれませんが、ちょっとした頭の体操だと思って楽しんでいただけたら幸いです。

本書に収めた結合語は、文庫本を中心に採集したものです(引用書籍は巻末に掲載)。ジャンルは、近現代の大衆小説・時代小説・純文学・評論など幅広く、作家数では二百五十名以上になります。その他、雑誌や新聞などからも採集しました。一人でこつこつとパソコンに打ち込んでデータベース化した結合語を、どのような形で、どのように並べたら一番役に立つか、この数年はまさに試行錯誤の連続でした。ようやく落ち着いたのが本書の形です。至らないところは多々あると思いますが、初めての試み、ひとつの到達点として、受け止めていただけたら幸いです。

みなさんに、本書の「言葉の海」「言葉の野原」を楽しんでいただき、さらに、文章を綴っていくときにいくらかでもお役に立てれば、編者としてそれにまさる喜びはありません。

また、この辞典は、若い人にぜひ読んで楽しんでもらいたいと思って作りました。結合語をたくさん入れたために千八百ページを超える本になりましたが、学校や地域の図書館にも本書を備えていただき、若い人が本書を身近で使える機会が増えることを願っております。

本書の出版にあたっては、大部の原稿を読んでくださった三省堂辞書編集システムの皆さんほか、校正の吉岡幸子さん、山口英則さんにお礼申し上げます。三省堂出版部の阿部正子さんには、七年前の企画の段階から、言葉に尽くせないほどお世話になりました。

そして結合語採集の対象とさせていただいた作者の皆様に、心からお礼申し上げます。

二〇一〇年七月

編者 小内一