古語辞典でみる和歌

第1回「時鳥…」

2014年6月10日

時鳥(ほととぎす)鳴くや五月(さつき)の菖蒲草(あやめぐさ)あやめも知らぬ恋もするかな

出典

古今・恋一・四六九・よみ人しらず

ほととぎすが鳴く、この五月に咲くあやめ草、そのあやめ草ではないが、私はものの筋道(あやめ)もわからない、無我夢中の恋をすることだ。

技法

上三句、同音反復で「あやめも知らぬ」の「あやめ」を導く序詞。

「鳴くや」の「や」は、詠嘆の間投助詞。「ほととぎす鳴く」は「五月」にかかる連体修飾語。

参考

恋のために分別を失っている人の歌である。「あやめも知らぬ」の「あやめ」は、ものごとの筋道、分別という意。

(『三省堂 全訳読解古語辞典』)


◆関連情報
「五月」は、陰暦五月のことです。『三省堂 全訳読解古語辞典』で「さつき」を引くと、以下のようなコラム「読解のために」が付いています。

「さつき」は雨の季節
五月闇 現代の季節感覚でいうと、五月はさわやかな季節であるが、陰暦五月は、今の六月、梅雨の頃にあたり、五月雨(さみだれ)が降り、月のない「五月闇(さつきやみ)(=五月雨が降るころの暗い夜。また、その暗闇)」がつづく季節でもあった。
ほととぎす 一方、五月は花橘(はなたちばな)やほととぎすの季節でもあり、ことに、ほととぎすは五月を待って公然と鳴くと考えられ、それ以前の鳴き声は「忍び音(ね)」といって、区別した。

筆者プロフィール

古語辞典編集部

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