「今年の新語 2024」の選評

4. 「しごでき」な人も「スキマバイト」

4位 しごでき

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

しご でき⦅名・
⦆〔「シゴデキ」とも書く〕〔俗〕〈仕事が できる/手ぎわがいい〉ようす。また、そういう人。「で しごはやな〔=仕事が早い〕人」〔二〇二〇年代に広まった ことば〕

 4位の「しごでき」は、2020年代になって広まってきました。「今年の新語」では2022年以来、継続的に投稿があります。「シゴデキ」と書く人もいます。

 「仕事ができる」の略で、仕事に有能な様子を指します。日常業務だけでなく、何かを頼めばてきぱきと作業してくれる様子、または人にも使います。選考委員のひとりは、辞書に関するトーク番組の収録現場で、よく気がつく男性タレントのことを、出演者たちが「しごでき」と呼んでいたのを印象深く覚えています。

 「しごでき」のほか、「しご」のつく新語はいくつかあります。「しごはや」は仕事が早い様子。「しごおわ」は仕事が終わったことです。缶チューハイの広告には〈しごおわ。おつ〔=仕事終わり。お疲れ〕、じゃないってば〉とありました。さらに、「しごおつ」は「仕事お疲れ」です。LINEなどで仕事のことを話題にするため、「しご」のつくことばが増えているのではないでしょうか。この流れは今後も続くものと推測します。

5位 スキマバイト

『新明解国語辞典』編集部

すきま バイト 4【隙間バイト】空いた時間に不定期に行なうアルバイト労働。専用のアプリ上で求職が行なわれ、単独かつ短時間の雇用契約を結ぶ。手軽に働けたり、人材不足を補えたりするなどのメリットの一方、人材の使い捨てや犯罪に引き込まれるなどのデメリットもある。スポット-ワーク。[表記]スキマバイトとも書く。

 5位の「スキマバイト」は、単発・短時間で柔軟に働けるアルバイトです。忙しい学生などでも空いた時間を利用して働くことができ、雇用側も急な人手不足を補うことができます。スマホでマッチングアプリが使われることで可能になった、新しい働き方です。

 マスメディアでは「スポットワーク」と言うことも増えています。一般社団法人スポットワーク協会という団体もあり、「スポットワーク」のほうが正式なニュアンスです。とはいえ、現状では「スキマバイト」を使う人のほうが多く、名称が今後どちらに落ち着くかは引き続き注目する必要があります。

 同じく単発の「ギグワーク」(2021年の7位の語)もコロナ禍の時期から知られるようになりました。ギグワークが運営会社と業務委託契約を結ぶのに対し、スキマバイトは勤務先と直接雇用契約を結ぶなどの違いがあります。労働形態の変化とともに生まれる新しい概念や用語を、辞書はきちんと説明しなければなりません。

6位 メロい

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

メロ・い〈形〉見ているほうが夢中になって、だらしなくなるほど、圧倒的な魅力のあるようす。「推しのダンスが━」《由来》擬態語「めろめろ」の基本的構成要素「めろ」に形容詞語尾「い」を付けたもの。通常は、擬態語の基本的構成要素に「い」を付けて、「キラい」「フラい」などとは言わないので珍しい。類似のものに、「ちょろい」「ペラい」がある。

 6位の「メロい」は、「めろめろになるほど相手がかっこいい、可愛い」ということ。多く、推しているアイドルに使います。動詞形「メロつく」(めろめろになる)もあります。SNSでは2024年に使用例が増えました。

 「メロい」は今回多く投稿されたことばのひとつです(19通で投稿数の8位)。投稿者は30代以下の女性が多いのが特徴です。また、「メロい」とされる対象は男性アイドルが多い傾向があります。女性から女性に対して「メロい」と言う例も一定数あります。「メロい」が使われる対象に特徴があるのは興味深いことです。

 もうひとつ特筆すべきこととして、「めろめろ」から「メロい」になるような、オノマトペ由来の形容詞は珍しいのです。最近の俗語としては「バブい(←ばぶばぶ。赤ちゃんのように可愛い)」がありますが、あまり広まっていません。「メロい」は、オノマトペ由来の形容詞を代表することばとして定着するでしょうか。

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