3. 「オールドメディア」も変化を
2位 オールドメディア
『三省堂国語辞典』飯間浩明先生
オールド メ┓ディア〔old media〕〔SNSなど、インターネットの新しいメディアに対し〕新聞・雑誌・放送など、従来のメディア。〔けなした言い方として生まれ、二〇二〇年代に広まった〕
2位の「オールドメディア」は、SNSなどの新しいメディアに対し、従来の新聞・雑誌・放送などのメディアを指したことばです。SNSでは批判的な意味合いで使われ始めました。一方、既存メディアはしっかりと裏取りをして伝える手段を持っており、その力に期待する声は、依然として多く聞かれます。
そもそも、「オールドメディア」ということばは1980年代、ケーブルテレビやファクシミリなどの「ニューメディア」が話題になった頃、従来の出版・放送などのメディアを指して使われるようになりました。既存メディアはその新しい波を乗り越えましたが、SNSの普及により、ふたたび試練を受けています。
ネット上では、とりわけ、2024年11月の兵庫県知事選挙、2025年10月の自民党総裁選挙の際に「オールドメディア」の語が多く飛び交いました。選挙結果が既存メディアの予想を裏切るものだったからです。
AIで何でも調べられるようになった現在、国語辞典もまた「オールドメディア」と呼ばれることがあります。ただ、「オールド」ならではの手段で独自性を発揮し、存在感を示すこともできるはずです。「オールド」側に反省を促し、変化する必要性を明らかにしたという意味で、このことばを2位に選びました。
なお、このことばは『三省堂現代新国語辞典 第七版』に載っていることが選考委員会の後に判明しましたが、2024~25年に急速に普及し、時代を画する重要なことばであることから、結果は変えないことにしました。
3位 えっほえっほ
『新明解国語辞典』編集部
えっほ えっほ1-1(感)物や知らせを届けるために、一心不乱に走る時の掛け声。
3位の「えっほえっほ」は、2025年2月に知れ渡ったフレーズです。白いメンフクロウの赤ちゃんが草地を走る様子を捉えた写真がSNSで拡散されました。元はオランダの写真家の作品です。これに〈エッホエッホ ママに夜ご飯いらないって伝えないと〉などとせりふがつけられ、さらに広まりました。いわゆる「ネットミーム」のひとつになったのです。うじたまいさんによる「エッホエッホ豆知識」という歌もできました。
これだけなら、「昔からある掛け声が注目を集めた」というにすぎません。ところが、「えっほえっほ」は辞書を作る私たちをはっとさせました。現在の主要な国語辞典に、このことばは載っていないからです。
「えっさえっさ」「えっちらおっちら」などは、載せている辞書が多くあります。「えっほえっほ」はそれに比べれば実際の用例が少ないようですが、やはり昔から使われてきたことばです。たとえば、『ホトトギス』1924年3月号には〈 橇 は 前曳 後押 を加へて三人エツサエツサエツホーエツホーと威勢よく走る〉という文があります。人がそりを運んで走って行く様子を描写したものです。
このように、「えっほえっほ」は荷物・ 駕籠 など、物を運ぶときの掛け声として使われてきました。現在では一生懸命走る場合にも使われます。今後の辞書は、このような掛け声にも目を配らなければならない。そんな気持ちとともに3位に選びました。なお、投稿数は48通で、投稿順位では4位でした。
