『日本国語大辞典』をよむ―第17回 できないこと

2017年 9月 24日 日曜日 筆者: 今野 真二

第17回 できないこと

 『日本国語大辞典』は慣用句・ことわざの類も豊富に載せている。見出し「やきぐり(焼栗)」の後ろには次のようにある。

やきぐりが芽(め)を出(だ)す 不可能なことのたとえ。また、不可能であるとされていたことが、不思議な力によって実現することをいう。枯木に花咲く。

 使用例として、「浮世草子・諸道聴耳世間猿(筆者注:しょどうききみみせけんざる)〔1766〕」があげられているので、江戸時代には使われていたことがわかる。「枯木に花咲く」は見出し「かれき(枯木)」の後ろに載せられている。「枯れ木に花を咲かせましょう」というと、「花咲爺(花咲かじいさん)」を思わせる。

かれきに花(はな)咲(さ)く (1)衰えはてたものが再び栄える時を迎えることのたとえ。こぼくに花咲く。枯れたる木にも花咲く。(2)望んでも不可能なことのたとえ。転じて、本来、不可能と思われることが不思議の力によって実現することのたとえにいう。枯れたる木にも花咲く。(以下略)

 他にも「不可能なこと」を表現する慣用句はかなりある。どうやってその「不可能」を表現するかがおもしろい。

あごで背中(せなか)搔(か)くよう 不可能なことにいう。

あざぶの祭(まつり)を本所(ほんじょ)で見(み)る 麻布権現の祭礼を本所(東京都台東区)から見るの意で、不可能なことのたとえ。

あひるの木登(きのぼり) あり得ないこと、不可能なことのたとえ。

あみのめに風(かぜ)=たまる[=とまる] (1)ありえないこと、不可能なこと、かいのないことのたとえにいう。(2)わずかばかりでも効果が期待できることの意にいう。

いしうすを箸(はし)にさす (石臼を箸で突き刺すのは不可能なことから)無理なことをいうことのたとえ。だだをこねる。

おおうみを手(て)で堰(せ)く しようとしても不可能なこと、人力ではどうしようもないことにいう。大川を手で堰く。

おととい=来(こ)い[=お出(い)で] もう二度と来るな。不可能なことをいって、いやな虫を捨てたり、人をののしり追い返すときにいう。「おとといおじゃれ」「おとといござい」「おとといごんせ」などとも。おとつい来い。

かの睫(まつげ)に巣(す)をくう (略)きわめて微小なこと。また不可能なことのたとえ。

かかとで巾着(きんちゃく)を切(き)る かかとを使って巾着をすり取る意。不可能なことのたとえ。

かわむかいの立聞(たちぎき) (大きな川の向こう側で話している内容を、こちら側で立ち聞きしても聞こえるはずがないところから)とうてい不可能でむだなことのたとえ。

こうがの水(みず)の澄(す)むのを待(ま)つ 濁った大河の水がきれいになるのを待つ。気の長いことや不可能なことのたとえ。百年河清(かせい)を俟(ま)つ。

こおりを叩(たた)いて火(ひ)を求(もと)む 方法を誤っては、事の成就の困難なこと。また、不可能なことを望むことのたとえ。木に縁(よ)りて魚を求む。

さおだけで星(ほし)を打(う)つ 竹竿で星を払い落とす。不可能な事をする愚かさ、また、思う所に届かないもどかしさをたとえていう。竿で星かつ。竿で星。

しゃくしで腹(はら)を切(き)る できるはずのないことをする。不可能なことをする。また、形式だけのことをすることのたとえ。
 たまごの殻(から)で海(うみ)を渡(わた)る 非常に危険なこと、また、不可能なことのたとえ。

つなぎうまに鞭(むち)を打(う)つ (つないだ馬に鞭を打って走らせようとしても不可能であるところから)しても、むだであること、するのがむりだということのたとえにいう。

はたけに蛤(はまぐり) 畑で蛤を得ることはできない。全く見当違いなこと、また、不可能なことを望むことなどのたとえ。木によって魚を求む。

みずにて物(もの)を焼(や)く  不可能なこと。ありえないことのたとえ。

 「おとといおいで」は子供の頃に耳にして、どういう意味だろう、と思ったものだ。「おとといには来られないじゃないか」と。まあその理解でよかったわけですね。

 「かの睫(まつげ)に巣(す)をくう」の「(略)」としたところには、中国の道家の書物である『列子(れつし)』の、「焦螟」という虫が群れ飛んで蚊の睫に集まるという記事が紹介されている。こうしたことが、日本の室町時代頃に成立した易林本『節用集』(1597)にちゃんととりこまれているのですね。易林本では、この虫は「ショウメイ(蟭螟)」という名前になっている。こういうことも『日本国語大辞典』をよみ、使用例を丁寧にみることによってわかる。やはり『日本国語大辞典』をよむことはおもしろい。

 「こうが(黄河)」は改めていうまでもなく、中国の華北を流れる大河の名前で、固有名詞だ。川の水が黄土を大量に含んでいるため、黄色く濁っているところからそう名づけられているわけだが、つまり濁った川である。それが澄むのを待っても永久にそんなことはない、ということだ。

 「しゃくし(杓子)」は現在では「杓子定規(しゃくしじょうぎ)」という場合には使うが、一般的には「しゃもじ」だろう。『日本国語大辞典』の見出し「しゃもじ(杓文字)」には「(1)(「しゃくし(杓子)」の後半を略し「文字」を添えた女房詞が一般化したもの)汁や飯などをすくう道具。めしじゃくし。いいがい」とある。しゃくし=しゃもじは身近な道具だけに、「しゃくし」を含む慣用句は「しゃくしで芋を盛る」=「道具をとりちがえて事を行ない失敗する。あわてて事を行なう様子をいう」や「しゃくしは耳搔にならず」=「大きい物が、必ずしも小さい物の代用になるとは限らないことのたとえ」などいろいろある。

 それにしても、いろいろな「不可能」表現があるものだ。「雪中のカブトムシ」なんてどうでしょう? そんなことを考えるのも楽しいかもしれません。

 * 

※特に出典についてことわりのない引用は、すべて『日本国語大辞典 第二版』からのものです。引用に際しては、語義番号などの約物および表示スタイルは、ウェブ版(ジャパンナレッジ http://japanknowledge.com/)の表示に合わせております。

◆この連載の目次は⇒「『日本国語大辞典』をよむ」目次へ

* * *

【筆者プロフィール】

今野真二(こんの・しんじ)

1958年、神奈川県生まれ。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。日本語学専攻。

著書に『仮名表記論攷』、『日本語学講座』全10巻(以上、清文堂出版)、『正書法のない日本語』『百年前の日本語』『日本語の考古学』『北原白秋』(以上、岩波書店)、『図説日本語の歴史』『戦国の日本語』『ことば遊びの歴史』『学校では教えてくれないゆかいな日本語』(以上、河出書房新社)、『文献日本語学』『『言海』と明治の日本語』(以上、港の人)、『辞書をよむ』『リメイクの日本文学史』(以上、平凡社新書)、『辞書からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書)、『振仮名の歴史』『盗作の言語学』(以上、集英社新書)、『漢和辞典の謎』(光文社新書)、『超明解!国語辞典』(文春新書)、『常識では読めない漢字』(すばる舎)、『「言海」をよむ』(角川選書)、『かなづかいの歴史』(中公新書)がある。

*

【編集部から】

現在刊行されている国語辞書の中で、唯一の多巻本大型辞書である『日本国語大辞典 第二版』全13巻(小学館 2000年~2002年刊)は、日本語にかかわる人々のなかで揺らぐことのない信頼感を得、「よりどころ」となっています。
辞書の歴史をはじめ、日本語の歴史に対し、精力的に著作を発表されている今野真二先生が、この大部の辞書を、最初から最後まで全巻読み通す試みを始めました。
本連載は、この希有な試みの中で、出会ったことばや、辞書に関する話題などを書き進めてゆくものです。ぜひ、今野先生と一緒に、この大部の国語辞書の世界をお楽しみいただければ幸いです。隔週連載。


続 10分でわかるカタカナ語 第27回 レガシー

2017年 9月 23日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「レガシー」の意味と使い方

どういう意味?

 「遺産」、「従来型の」、「時代遅れの」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 レガシー(legacy)は英語で「遺産」を意味する言葉です。本来は「亡くなった人がのこした財産」を意味するのですが、派生的に「世代から世代へ受け継ぐものごと」も意味します。日本語のレガシーは、後者をさします。例えば「前政権のレガシー」と表現した場合、ここでのレガシーは、前政権によって残された「政治的業績」を意味します。

 またレガシーという言葉は、レガシーシステムなどのように、名詞の前に付いて複合語となることもあります。そしてその多くで、レガシーが「従来型の」「時代遅れの」という意味を持ちます。例えばレガシーシステムとは、コンピューター分野で「負の遺産となった旧式のシステム」を意味します(詳細は後述)。

どんな時に登場する言葉?

 「遺産」という意味のレガシーは、政治・スポーツなどの分野でよく登場します。例えば政治分野ではレガシーが「政治的業績」などを意味します。またスポーツではオリンピックや大きな大会などの開催の成果や影響について語る場合にレガシー(後述)が登場します。

 「従来型の」、「時代遅れの」という意味のレガシーは、複合語の一部として、経営・コンピューター・航空などの分野でよく登場します。例えば経営分野ではレガシーコスト(後述)、コンピューター分野ではレガシーシステム(後述)などの専門用語が登場します。いっぽう航空分野ではレガシーキャリア(後述)という言葉があります。

どんな経緯でこの語を使うように?

 この言葉が本格的に使われるようになったのは1980年代から90年代にかけてのことでした。

 まず1989年に、自動車メーカーの富士重工業(現 SUBARU)が「スバル・レガシィ」を発売開始。レガシーという言葉が一般社会に浸透するきっかけをつくりました。また1990年代に入ると、コンピューター分野でレガシーシステム(後述)という概念が広まりました。

 近年では政治・経済の世界でもレガシーをよく見聞きします。例えば2010年には、日本航空の経営破綻問題に関連してレガシーコスト(後述)が話題になりました。またアメリカのオバマ前大統領(2009年~17年)の医療保険制度改革などの政治的業績について、各国メディアが功罪双方の観点から「レガシー」と呼んだことも、日本で盛んに報じられました。さらに2020年東京オリンピックの開催準備にあたり、大会の遺産を意味するレガシーが注目されています。

レガシーの使い方を実例で教えて!

「レガシーを残す」

 未来の遺産となり得る物事を作ることを「レガシーを残す」「レガシー(を)創出(する)」などと表現できます。例えば「任期が切れるのを前に、政権のレガシー作りに奔走する」などの表現が可能です。

「レガシーキャリア」

 航空分野では、LCC(ローコストキャリア/格安航空会社)に対する既存の航空会社のことを「レガシーキャリア」(legacy carrier)と呼びます。別名では「フルサービスキャリア」(full service carrier)とも言います。機内食や飲み物を有料で提供するなど、サービスを必要最小限に抑えるLCCに対して、従来型の航空会社のことを区別していう呼び方です。

オリンピックの「レガシー」

 国際オリンピック委員会(IOC)が定めるオリンピック憲章の中に次のような一節があります。「オリンピック競技大会の有益な遺産(positive legacy)を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」(オリンピック憲章・2016年版/日本オリンピック委員会による和訳)。この項目は2003年版で新設されたものです。そして2020年の東京オリンピックを控え、日本語としても「オリンピックのレガシー創出に向けた活動を進める」などの用例が増えています。ここでいうレガシーとは、スポーツ・社会・環境・都市・経済の各分野で長期的に残っていく「有益性の高い影響全般」のこと。その中には競技施設のような「有形」のものもあれば、観光地としての知名度など「無形」のものもあります。

負の遺産(1)「レガシーシステム」

 コンピューターの分野には「レガシーシステム」(legacy system)という概念があります。新技術が登場したため、相対的に古びてしまった情報システムをさします。

 そもそも長期的に運用している情報システムは、それだけ業務に密着した運用が行われています。そのようなシステムが「レガシー化」すると、システムの改良や置き換えが難しくなるだけでなく、古いシステムの維持自体にもコストがかかるようになってしまいます。なお、レガシーシステムを新しいシステムに換えることを「レガシーマイグレーション」(legacy migration)といいます。

負の遺産(2)「レガシーコスト」

 過去から引き継がれており、なおかつ経営を圧迫する要因に掛かる費用を「レガシーコスト」(legacy cost)と呼びます。これを「負の遺産」と表現する場合もあります。例えば日本航空の経営破綻問題(2010年)では同社が退職者に払っていた年金がレガシーコストとして注目されました。

言い換えたい場合は?

 中立的な意味のレガシーを言い換える場合、単独であれば「遺産」、複合語なら「従来型の」「既存の」などを使うことができます。

 肯定的な意味のレガシー(多くは複合語ではなく単体で登場する)を言い換えたいときは「業績」「功績」を使うことができます。

 否定的な意味のレガシーを言い換える場合は、単独であれば「負の遺産」「過去の遺物」などの表現を使うことが可能です。また複合語では「旧式の」「古びた」や、状況によっては「時代遅れの」が使えます。

 なお「負の遺産」はレガシーコストを言い換える時にも利用可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

枯れた技術 コンピューターを含む技術分野では、古びた技術がむしろ評価されることもあります。長期間利用されているがゆえに安定性が高い状況や、不具合も含めて取り扱いのノウハウが十分に蓄積されている状況が、有益である場合もあるからです。このような成熟した技術のことを、慣用的に「枯れた技術」と言います。この分野における「枯れた」は褒め言葉なのです。

  *  

◆この連載の目次は⇒「続 10分でわかるカタカナ語」目次へ

◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

* * *

【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

*

【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『見やすいカタカナ新語辞典 第2版』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら


人名用漢字の新字旧字:「毘」と「毗」

2017年 9月 21日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

第141回 「毘」と「毗」

新字の「毘」は人名用漢字なので、子供の名づけに使えます。旧字の「毗」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。「毘」は出生届に書いてOKですが、「毗」はダメ。どうしてこんなことになったのでしょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したものでしたが、新字の「毘」も旧字の「毗」も含まれていませんでした。国語審議会は、昭和21年11月5日に当用漢字表を答申しましたが、やはり「毘」も「毗」も収録されていませんでした。当用漢字表は、翌週11月16日に内閣告示されましたが、やはり「毘」も「毗」も収録されていませんでした。昭和23年1月1日、戸籍法が改正され、子供の名づけは当用漢字1850字に制限されました。この時点で、新字の「毘」も旧字の「毗」も、子供の名づけに使えなくなってしまったのです。

半世紀後の平成12年12月8日、国語審議会は表外漢字字体表を答申しました。表外漢字字体表は、常用漢字(および当時の人名用漢字)以外の漢字に対して、印刷に用いる字体のよりどころを示したもので、1022字の印刷標準字体が収録されていました。この中に、新字の「毘」が含まれていました。印刷物には、旧字の「毗」ではなく、新字の「毘」を用いるべきだ、と、国語審議会は文部大臣に答申したのです。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、文化庁が表外漢字字体表のためにおこなった漢字出現頻度数調査(平成12年3月)、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「毘」は、全国50法務局のうち1つの管区で出生届を拒否されていて、JIS第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が1302回だったので、人名用漢字の追加候補になりました。旧字の「毗」は、全国50法務局のうち出生届を拒否された管区は無く、JIS第3水準漢字で、出現頻度数調査の結果が26回でした。平成16年6月11日、人名用漢字部会は、新字の「毘」を含む578字の追加案を公開しました。旧字の「毗」は、人名用漢字の追加候補になりませんでした。

その一方で、翌週6月18日に名古屋家庭裁判所が、新字の「毘」を子供の名づけに認める審判を下しました[平成16年(家)第1118号]。出生届を拒否された親の訴えに対し、名古屋家庭裁判所は、新字の「毘」を「常用平易」だと認めたのです。この審判を受けて、平成16年7月12日、法務省は戸籍法施行規則を改正し、「毘」「瀧」「駕」の3字を人名用漢字に追加しました。法制審議会の答申が出ていないにもかかわらず、新字の「毘」を人名用漢字に追加したのです。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、JIS第1~4水準漢字を全て含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、新字の「毘」に加えて、旧字の「毗」も書けるようになりました。でも、日本人の子供の出生届には、新字の「毘」はOKですが、旧字の「毗」はダメなのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


「日本橋 BOOK CON」に出展いたします

2017年 9月 20日 水曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部

三省堂は、丸善日本橋店内で行われる<br />
本のつくり手と読み手をつなげる本の祭典<br />
「日本橋 BOOK CON」に出展いたします

三省堂が出展するのは会期中10月20日(金)のみ
当日だけの限定企画をご用意して皆様のご来場をお待ちしております

イベント名称:日本橋 BOOK CON(nihombashi Book Convention)
主催:株式会社丸善ジュンク堂書店 丸善・日本橋店
協賛:株式会社 トゥ・ディファクト
協力:日本出版販売株式会社
会期:2017年10月18日(水)~10月20日(金)
   ※最終日(20日)17:00閉場(特設スペースを除く)
会場:丸善日本橋店 地下1階~3階
   〒103-8245 東京都中央区日本橋2-3-10 
   店舗営業時間  9:30〜20:30

公式ページURL:https://honto.jp/cp/store/recent/nihombashi-bookcon

「三省堂国語辞典」編集委員<br />
飯間浩明先生のトークイベント開催!

国語辞典の作り手であり、希代のワードハンターである飯間浩明先生による1時間のトークセッションを行います。
どなたさまも無料でご参加いただけます。ぜひふるってご参加ください。

日時:10月20日(金)16時~17時(開場15時30分)
会場:3階ギャラリー
定員:30名(先着順)

参加ご希望の方はWEBでご予約ください。(定員に達し次第、申込受付を終了します)
ご予約WEB:https://www.sanseido-publ.co.jp/tb/nbc/(クリックすると画面が遷移します)

※会場で記録用の撮影が行われる場合があります。何卒ご了承ください。
※お問い合わせお電話:03-3230-9536(午前9時~午後5時・おかけ間違いにご注意ください。)

ほかにも楽しい企画が満載! あなたの名前が辞書に! オリジナルグッズ限定販売! 「今年の新語2017」募集! 辞書編集者による辞書の選び方・使い方レクチャーも!

ブース出展企画のご案内

日時:10月20日(金)9時30分~17時
会場:3階 ブース3-5

  • 限定企画!あなたの辞書に名前が入ります。
    • 当日ブースにて購入した三省堂の辞書に、あなたのお名前を無料で入れてお送りします。
    • 購入した辞書を一度お預かりし、名入れを施したうえで10月中に発送します。
    • 名入れできない漢字が一部ございます。また、書体は明朝もしくはゴシックのみになります。何卒ご了承ください。
    • お客様の個人情報は、名入れ・商品発送の目的以外には利用しません。
  • オリジナルグッズ限定販売
    • 辞書にまつわるオリジナルグッズを限定販売します。詳しくは当日ブースにて。
    • 数量限定につき、無くなり次第終了します。
  • 三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2017」大募集
    • ブースに「今年の新語2017」応募箱を設置します。
    • [当日応募のみ限定]応募した方にオリジナル景品を進呈します。景品は無くなり次第終了します。
    • [当日応募のみ限定]大賞に選ばれた言葉を応募した方、抽選で5名様にオリジナル図書カードをプレゼントします。
    • お客様の個人情報は、賞品発送の目的以外には利用しません。
  • 三省堂の辞書編集部員がブースに常駐
    • 三省堂の辞書編集部員が、辞書の選び方や使い方を解説します。
    • 幼児・小学生には、ふせんを使った辞書引きのポイントを伝授します。
    • その他、辞書についてのさまざまな疑問にお答えします。

続 10分でわかるカタカナ語 第26回 リベンジ

2017年 9月 16日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「リベンジ」の意味と使い方

どういう意味?

 「雪辱」「再挑戦」「復讐」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 リベンジ(revenge)とは英語で、「復讐(ふくしゅう)」を意味する言葉です。すなわち「誰かからひどい仕打ちを受けた人が、その相手に対して報復すること」を意味します。

 しかし日本語のリベンジは、多くの場合、スポーツ分野における「雪辱(せつじょく)」を意味します。つまり「勝負に負けた相手に対して勝つこと」を意味するのです。例えば「前大会の決勝で敗れた相手にリベンジを果たす」といった表現が可能です。

 また一般には、リベンジが「再挑戦」の意味も持つようになりました。その場合「満員でラーメン屋に入れなかったので明日こそリベンジする」などと使われています。

 なお近年ではリベンジポルノ(後述)という言葉も広まっています。この場合のリベンジは、英語の原義「復讐」を意味しています。

どんな時に登場する言葉?

 雪辱・再挑戦のリベンジは、主にスポーツの分野で登場します。この言葉が使われるようになった経緯からとくに格闘技界で好まれる表現ですが、野球など他競技でも用いられます。また近年ではスポーツ界だけでなく一般社会でも、この意味のリベンジがよく使われるようになりました。

 いっぽう復讐のリベンジは、「リベンジポルノ」のように社会問題の分野で登場するほか、映画・ドラマなどの創作作品の題名としてもよく登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古い記載例としては、1914年(大正3)発行の勝屋英造編『外来語辞典』(二松堂書店)に「リヴェンジ」の項目があり、「復讐。敵討。」と解説があります。

 しかしながら日本でリベンジの認知度が本格的に高まったのは、1990年代に入ってからのことでした。格闘技「K-1」が1993年に始まり、他の格闘技と同様、敗れた選手と勝利した選手との再試合(リターンマッチ)が組まれることも多くありました。この頃から格闘家やそのファンの間に、雪辱を意味するリベンジが広がり始めました。

 また1999年には、 K-1のファンでもあったプロ野球の松坂大輔投手が、ある試合で負けた際に「リベンジします」と宣言して話題になりました。当時、格闘技ファンではない人にとってリベンジは馴染みのない言葉でした。したがって世間では松坂選手の発言が新鮮に受け取られたのです。「リベンジ」はその年の新語・流行語大賞において年間大賞を受賞。その後「再挑戦」の意味でも使われるようになりました。

 さらに2013年ごろには「リベンジポルノ」(後述)という言葉も知られるようになりました。リベンジの原義である「復讐」の意味も浸透しつつあります。

リベンジの使い方を実例で教えて!

「リベンジする」

 「前回負けた相手にリベンジする」のように、リベンジを動詞化して使うことが可能です。

「リベンジを果たす」

 リベンジを用いた定番の言い回しもあります。雪辱や再挑戦を目標として定めた場合は「リベンジを目指す」「リベンジを狙う」「リベンジを誓う」など、雪辱や再挑戦を成し遂げた場合は「リベンジを果たす」「リベンジ(に)成功(する)」「リベンジ(を)達成(する)」などの表現が可能です。

「リベンジマッチ」

 おもに格闘技の世界では、かつて敗れた相手との再試合のことを「リベンジマッチ(revenge match)」と呼ぶ習慣があります。「復讐戦」「雪辱戦」のことです。「リベンジ戦」と表現する場合もあります。近年では格闘技以外のスポーツでも、この表現をみかけるようになりました。

「リベンジポルノ」

 離婚や失恋などの腹いせに、元配偶者や元恋人の裸体写真や動画を許可なくインターネット上に公開すること(またはその写真や動画)を「リベンジポルノ(revenge porn)」といいます。「復讐ポルノ」という言い方もあります。2010年以降、このような行為が世界的に社会問題化しました。

 例えば日本では2013年に、リベンジポルノの問題を世間に知らしめる出来事が起こりました。ある殺人事件の加害男性が、被害女性(元恋人)の性的な写真や動画をインターネット上に公開していたことが明らかになったのです。

 この事件などが契機となり、2014年11月にはリベンジポルノ防止法(「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」)が成立・施行しています。

題名の「リベンジ」

 復讐劇は、創作作品における定番テーマのひとつです。実際、創作作品の題名には「リベンジ」の語を使ったものが少なくありません。例えば2000年の映画『極道の妻たち リベンジ』、2009年のアメリカ映画『トランスフォーマー/リベンジ(原題:Transformers: Revenge of the Fallen)』、2011年放映開始のアメリカテレビドラマ『リベンジ(原題:Revenge)』、2012年連載開始(2017年にアニメ化)の漫画作品『政宗くんのリベンジ』などの例があります。

言い換えたい場合は?

 「復讐」「報復」「仕返し」、「雪辱」「再戦」、「再挑戦」などと言い換えることが可能です。また「リベンジする」を「借りを返す」と言い換えたり、「リベンジを決意する」を「雪辱を期す」と言い換えたりする方法もあります。

 なお複合語には定訳が存在する場合もあります。例えばリベンジマッチは「雪辱戦」「復讐戦」、リベンジポルノは「復讐ポルノ」と言い換えることが可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

リベンジ転職 バブル崩壊後の就職難、またリーマンショック後の就職難を体験した世代で「リベンジ転職」が広まっていると一部メディアが指摘しています。これは新卒時に自分の希望する業界や企業に就けなかった人が、そのような業界や企業を求めて行う転職活動のことを意味します。

アベンジャーズ 復讐を意味する英単語には、revenge(リベンジ)のほかにも avenge(アベンジ)があります。このふたつの単語にはどのような違いがあるのでしょうか? 大まかに言うと revenge は「私怨」に基づく復讐を、avenge は「正義」に基づく復讐をさします。例えば人気ヒーローが勢揃いするアメリカンコミック(またはその映画化作品)である『アベンジャーズ(Avengers)』は「正義の復讐者」を意味することになります。

  *  

◆この連載の目次は⇒「続 10分でわかるカタカナ語」目次へ

◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

* * *

【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

*

【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『見やすいカタカナ新語辞典 第2版』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら


広告の中のタイプライター(15):Remington Type-Writer No.2

2017年 9月 14日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

タイプライターに魅せられた男たち・補遺

『Saint Louis Medical and Surgical Journal』1880年7月20日号

『Saint Louis Medical and Surgical Journal』1880年7月20日号
(写真はクリックで拡大)

「Remington Type-Writer No.2」は、E・レミントン&サンズ社が1878年に製造を開始したタイプライターです。発売当初は、ロック・ヨスト&ベイツ社が販売をおこなっていましたが、1878年7月にはE&T・フェアバンクス社に販売権が移っています。ただ、宣伝はE・レミントン&サンズ社が自らおこなっていて、上の広告もそうなっています。

「Remington Type-Writer No.2」の最大の特長は、大文字と小文字が両方とも打てる、という点にありました。ブルックス(Byron Alden Brooks)が発明したプラテン・シフト機構を搭載することで、38個のキーで76種類の文字を打ち分けることができたのです。上の広告では、キーが44個あるように見えますが、実際のキー数は、「Upper Case」と「Lower Case」を合わせても40個でした。「Remington Type-Writer No.2」のキー配列は、以下のようになっていて、アルファベットに関しては「Sholes & Glidden Type-Writer」を踏襲していました。

「Remington Type-Writer No.2」のキー配列

38本の活字棒(type bar)は、プラテンの下に円形に配置されています。活字棒はそれぞれがキーにつながっており、キーを押すと活字棒が跳ね上がってきて、プラテンの下に置かれた紙の下側に印字がおこなわれます(アップストライク式)。打った文字をその場で見ることはできず、プラテンを持ち上げるか、あるいは数行分改行してから、やっと印字結果を見ることができるのです。活字棒の先には、活字が2つずつ埋め込まれていて、プラテンの位置によって、大文字と小文字が打ち分けられます。「Upper Case」キーを押すと、プラテンが機械後方(オペレータから見て奥)へ移動し、その後は大文字や記号が印字されます。「Lower Case」キーを押すと、プラテンが機械前方(オペレータから見て手前)へ移動し、その後は小文字や数字が印字されます。なお、数字の「1」は小文字の「l」で、数字の「0」は小文字の「o」で、それぞれ代用することになっていました。

大文字と小文字の両方が打てるようになったことから、タイプライターの市場は大きく拡がりました。市場の大きな部分は速記者で、初期の段階ではタイプライターを速記の反訳に用いていたのが、やがて、直接、タイプライターで速記をおこなうようになりました。それとともに、速記専門学校でタイプライターを教えるようになり、「Remington Type-Writer No.2」は全米に拡大していったのです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。


三省堂辞書の歩み 新撰支那時文辞典

2017年 9月 13日 水曜日 筆者: 境田 稔信

三省堂辞書の歩み 第54回

新撰支那時文辞典

昭和14年(1939)11月20日刊行
長沢規矩也編/本文176頁/三五判(縦146mm)


左:【新撰支那時文辞典】1版(昭和14年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)

 本書は三省堂における最初の中国語辞典である。「時文」とは現代文という意味で、古典漢文を扱った漢和辞典とは違うことを表す。

 満州への移民が増える時勢に従い、文部省が昭和14年から中等学校の漢文の教科に「支那時文」を加えたため、中学用の教科書・参考書・辞書が出版されるようになった。それまでに刊行されたのは、大学用や高等学校用のものだった。

 本書には現行の教科書から、漢和辞典にない親字や熟語、あっても意味が異なるものや時文でよく使われるものを収録してある。また、中国の辞書や新聞からも補足してある。

 配列は『新撰漢和辞典』(昭和12年)に倣い、旧来の部首分類とは違う合理的な方法を採用した。例えば「木」の部首は、上「木・杏・杳・査……」、下「架・柒・染・柴……」、左「杠・村・杖・杜……」、その他「本」、と分けられている。「末」は「一」の部首、「未」は「二」の部首になり、かえって引きにくいおそれもあるが、前付の総画索引で補った。


【新撰支那時文辞典】1版のカバー
(クリックで拡大)

 親字は約3000字、熟語は約8000語を収録。初版本に貼り紙で隠された項目があり、別の初版本で確かめたところ「偽国  満洲国、正しい国家でない意。」だった。

●最終項目(画像はクリックで拡大)

※「猫」「犬」の項目なし

*

◆この連載のほかの回をお読みになる方は⇒「三省堂辞書の歩み」目次へ

* * *

【筆者プロフィール】

境田稔信(さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

*

【編集部から】

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
不定期の水曜日の公開を予定しております。


モノが語る明治教育維新 第16回―日本最初(!?)の卒業証書 (1)

2017年 9月 12日 火曜日 筆者: 唐澤 るり子

第16回―日本最初(!?)の卒業証書 (1)

 近代小学校が発足した当初の制度や実態を説明するときに重宝するのが、この草山直吉の卒業証書です。1枚の証書からどんなことが読み取れるのでしょうか。

 まず「下等小学第八級卒業」とありますが、「学制」によれば尋常小学校は上下二等にわかれ、下等小学は6歳から9歳まで4年間、上等小学は10歳から13歳まで4年間学ぶと定められています。各年は二級に分かれているので、1年前期が第八級、後期が第七級と順に数が減り、第一級卒業が下等小学卒業となります。つまり、この証書は小学1年生前期を無事修了したという証なのです。

 なぜ、このように小刻みに証書を授与したのでしょうか? 当時は現代のように入学年数に応じて異なる課程を修める学年制ではなく、能力に応じた課程を修める等級制でした。誰もが進級できるのではなく、半年ごとに行われる進級試験に合格した者だけが上の級に進むことができました。知的啓蒙を重視した時代だけに、試験は厳格さを重視し、「原級留置」つまり落第する者も多かったそうです。1年生で落第とは気の毒ですが、退学する者も多く、明治8年の等級別在籍者の比率をみると、第八級が65.2%と全体の3分の2を占めるのに対し、第七級は16.7%と激減します。上に進むほど少なくなり、第一級ともなると全児童の0.1%しかいません。いかに下等小学を卒業することが難しかったかがうかがわれます。

 そんな試験地獄の時代に直吉は、明治6年6月の開校と同時に入学し、その半年後の12月に第八級を卒業します。そして、それ以降も順調に進級し、学制が定めた4年の歳月で無事卒業したことを、その後の6枚の証書が明らかにしています。

  明治7年5月(5か月) 第七級卒業
  明治8年4月(11か月) 第六級・第五級卒業
  明治8年7月(3か月) 第四級卒業
  明治8年11月(4か月) 第三級卒業
  明治9年4月(5か月) 第二級卒業
  明治10年5月5日(13か月) 下等小学教科卒業

※( )は進級までにかかったおよその月数

 卒業月を見ると、試験は半年おきに規則正しく行われていたわけではないことがわかります。この小学校のあった足柄県(現・神奈川県)では「進歩の疾きものは臨時試験を以て之を進級せしむ」(明治7年文部省年報)としたので、優秀な児童がいれば随時試験が行われていたのです。

 また飛び級制度もあり、明治8年4月に第七級から一つ飛んで第五級へ進級しています。

飛び級といえば、夏目漱石も成績優秀のため飛び級をしたことが知られています。そこで、やはり直吉もひとかどの人物に成長したのではないかと思い、記載された住所「足柄県大住郡平澤村」を手掛かりに、現在の神奈川県秦野市教育委員会に照会したところ、今回初めてプロフィールが分かりました。元治元年生まれで長じて地方行政に邁進(まいしん) し、村長も務めたそうです。市史には、熟年期の、口ひげを蓄え謹直そうな顔写真が掲載されています。

 144年前の卒業証書からこうして、持ち主の情報が分かり、血が通ったものになる。資料を扱っていてワクワクするのは、こんな瞬間です。

◆この連載の目次は⇒「モノが語る明治教育維新」目次へ

* * *

【筆者プロフィール】

『図説 近代百年の教育』

唐澤るり子(カラサワ・ルリコ)

唐澤富太郎三女
昭和30年生まれ 日本女子大学卒業後、出版社勤務。
平成5年唐澤博物館設立に携わり、現在館長
唐澤博物館ホームページ:http://karasawamuseum.com/
唐澤富太郎については第1回記事へ。

※右の書影は唐澤富太郎著書の一つ『図説 近代百年の教育』(日本図書センター 2001(復刊))

*

【編集部から】

東京・練馬区の住宅街にたたずむ、唐澤博物館。教育学・教育史研究家の唐澤富太郎が集めた実物資料を展示する私設博物館です。本連載では、富太郎先生の娘であり館長でもある唐澤るり子さんに、膨大なコレクションの中から毎回数点をピックアップしてご紹介いただきます。「モノ」を通じて見えてくる、草創期の日本の教育、学校、そして子どもたちの姿とは。
更新は毎月第二火曜日の予定です。


『日本国語大辞典』をよむ―第16回 走れメロスとメロドラマ

2017年 9月 10日 日曜日 筆者: 今野 真二

第16回 走れメロスとメロドラマ

 太宰治『走れメロス』は雑誌『新潮』の1940年5月号に発表され、同じ年の6月15日に刊行された単行本『女の決闘』(河出書房)に収められている。現在では、中学校の国語教科書に載せられているので、よく知られている作品といってよいだろう。

 作品は次のように終わる。

ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

勇者は、ひどく赤面した。

 教科書に載せられている作品にしては、なかなかしゃれた感じの終わり方だなと思ったような記憶がかすかにある。しかし、この後に「(古伝説と、シルレルの詩から)」と記されていることはすっかり忘れてしまっていた。「シルレル」はもちろん、ドイツの詩人、劇作家として知られている、フリードリヒ・フォン・シラー(1759~1805)のことである。ベートーヴェンの交響曲第九番「合唱付き」の原詞の作者といえばよいだろうか。メロスを「村の牧人」としたのは、太宰治の設定であることも指摘されている。さて、このメロスがどこで『日本国語大辞典』につながるのかというと、次のような見出しがあったからだ。

メロス〔名〕({ギリシア}melos)旋律。特に音の旋律的な上下の動きをさす。

 この見出しをみて、「走れメロス」の「メロス」は〈旋律〉という語義をもつギリシャ語だったのか! と思ってしまった。ところが調べてみると、話はそう単純ではなかった。「メロス」はシラーの綴りに従えば、「Meros」となるはずであるとの指摘がある。しかるに、「走れメロス」のヨーロッパ諸語での訳においては「メロス」が「melos」と綴られているという。なぜ、ヨーロッパ諸語の翻訳者が「melos」と綴ったのかはもちろんわからないが、そのことによって、「走れメロス」と「旋律、歌」とにかすかながらにしても、つながりが生じていることはおもしろい。ただし、そのことは太宰治とは無関係であるのだが。

 「メロス」の次にあった外来語は「メロディアス」で、「メロディー」「メロディック」と続いて、「メロドラマ」があった。

メロドラマ〔名〕({英}melodrama ギリシア語のメロスとドラマの結合した語)(1)演劇形式の一つ。誇張された情況設定やせりふをもつ通俗的な演劇。ヨーロッパで、中世から近世に行なわれ、せりふの合間に音楽を伴奏した娯楽劇。(2)恋愛をテーマとした感傷的なドラマや映画。

 小型の国語辞典は「メロドラマ」をどのように説明しているかあげてみよう。

大衆的、通俗的な恋愛劇。▽melodrama(岩波国語辞典第7版新版、2011年)

〈melodrama〉(映画やテレビ番組などで)通俗的で感傷的な恋愛劇。(集英社国語辞典第3版、2012年)

[melodrama]〘名〙恋愛を中心とした感傷的・通俗的な演劇・映画・テレビドラマなど。▽メロス(=旋律)とドラマを結びつけた語。元来は一八世紀後半のフランス・ドイツなどで発達した音楽入りの大衆演劇。(明鏡国語辞典第2版、2010年)

〔melodrama〕㊀歌の音楽をふんだんに使った、興味本位の通俗劇。㊁愛し合いながら なかなか結ばれない男女の姿を感傷的に描いた通俗ドラマ。(新明解国語辞典第7版、2012年)

〔melodrama〕映画・演劇・テレビなどの、通俗(ツウゾク)的な恋愛(レンアイ)劇。(三省堂国語辞典第7版、2014年)

〈melodrama〉[名] 通俗的で感傷的な劇。(新選国語辞典第9版、2011年、小学館)

 「メロドラマ」の「メロ」は「メロメロ」と関係があるとはさすがに思っていなかったが、ギリシャ語「メロス」だったとは知らなかった。「メロス」とのかかわりにふれているのは、上にあげた辞書の中では『明鏡』のみ。「通俗的」「恋愛(劇)」「感傷的」が、「メロドラマ」を説明するキー・ワードであることがわかる。こうした語釈を並べてみると、『新明解国語辞典』の㊁は目立つ。「なかなか結ばれない」は辞書の語釈としては、限定的過ぎると感じるがみなさんはいかがでしょうか。では最後にもう1つ。

メセナ〔名〕({フランス}mécénat)文化・芸術などを庇護・支援すること。特に、企業などが見返りを求めずに資金を提供する文化擁護活動をいう。紀元前一世紀のローマの将軍、ガイウス=マエケナス(Maecenas)が、隠退後、ホラティウス、ウェルギリウスなどの芸術家を庇護したところから、その将軍の名にちなむ。

 日本では1988年の「日仏文化サミット」をきっかけとしてひろがりをもつようになったとのことで、1990年代にはしきりにこの「メセナ」という語が使われていたことを記憶している。『朝日新聞』の記事データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」に「メセナ」で検索をかけてみると、やはり1988年の「日仏文化サミット」の記事がもっとも古い例としてヒットする。ごく小型の仏和辞典で調べてみても、「mécénat」は見出しになっており、そこには「学問芸術の擁護」というような説明がある。フランスでは、これが将軍の名前であることはわかっているのだろう。

 それにしても、最近は新聞などを読んでいても、この「メセナ」という語にであうことがめっきり少なくなったように思う。こういう時だからこそ、学問芸術を擁護してもらいたいと思う。

 * 

※特に出典についてことわりのない引用は、すべて『日本国語大辞典 第二版』からのものです。引用に際しては、語義番号などの約物および表示スタイルは、ウェブ版(ジャパンナレッジ http://japanknowledge.com/)の表示に合わせております。

◆この連載の目次は⇒「『日本国語大辞典』をよむ」目次へ

* * *

【筆者プロフィール】

今野真二(こんの・しんじ)

1958年、神奈川県生まれ。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。日本語学専攻。

著書に『仮名表記論攷』、『日本語学講座』全10巻(以上、清文堂出版)、『正書法のない日本語』『百年前の日本語』『日本語の考古学』『北原白秋』(以上、岩波書店)、『図説日本語の歴史』『戦国の日本語』『ことば遊びの歴史』『学校では教えてくれないゆかいな日本語』(以上、河出書房新社)、『文献日本語学』『『言海』と明治の日本語』(以上、港の人)、『辞書をよむ』『リメイクの日本文学史』(以上、平凡社新書)、『辞書からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書)、『振仮名の歴史』『盗作の言語学』(以上、集英社新書)、『漢和辞典の謎』(光文社新書)、『超明解!国語辞典』(文春新書)、『常識では読めない漢字』(すばる舎)、『「言海」をよむ』(角川選書)、『かなづかいの歴史』(中公新書)がある。

*

【編集部から】

現在刊行されている国語辞書の中で、唯一の多巻本大型辞書である『日本国語大辞典 第二版』全13巻(小学館 2000年~2002年刊)は、日本語にかかわる人々のなかで揺らぐことのない信頼感を得、「よりどころ」となっています。
辞書の歴史をはじめ、日本語の歴史に対し、精力的に著作を発表されている今野真二先生が、この大部の辞書を、最初から最後まで全巻読み通す試みを始めました。
本連載は、この希有な試みの中で、出会ったことばや、辞書に関する話題などを書き進めてゆくものです。ぜひ、今野先生と一緒に、この大部の国語辞書の世界をお楽しみいただければ幸いです。隔週連載。


続 10分でわかるカタカナ語 第25回 ミニマリズム

2017年 9月 9日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ミニマリズム」の意味と使い方

どういう意味?

 (生活・芸術などで)最小限の要素だけを用いる様式・手法・スタイルのことです。

もう少し詳しく教えて

 ミニマリズム(minimalism)は英語で「最小限である様子」を意味する minimal(ミニマル)と「主義」を意味する -ism(イズム)が組み合わさった言葉です。

 もともとは1960年代以降の美術・音楽で「簡素な形やその反復を用いて、最小限の要素で作品を構成する手法」を指していました。

 いっぽうこれとは別に近年では、一般社会での用例も増えています。その場合「必要最小限の物しか持たないライフスタイル(生活様式)」を意味します。そのようなライフスタイルの実践者や支持者をさす「ミニマリスト」(minimalist)という言葉もよく聞かれるようになりました。

どんな時に登場する言葉?

 一般にはライフスタイルの分野で登場する言葉です。

 また美術・音楽・文学・ファッション・建築・デザインなどの分野では、表現手法としてのミニマリズムが登場します。さらに一部の学術分野でミニマリズムと名付けられた独自概念が登場することがあります。

どんな経緯でこの語を使うように?

 英語の minimalism という言葉が注目されたのは、おおよそ1960年代になってからのことでした。この時代のアメリカで、ミニマリズムと呼ばれる美術や音楽が流行したのです。これ以降、ミニマリズムの概念は文学・ファッションなどの分野でも使われるようになりました。

 いっぽうライフスタイルの面で注目されるようになったのは2010年代のことでした。まず2010年のアメリカで、ジョシュア=フィールズ=ミルバーンとライアン=ニコデマスが The Minimalists というウェブサイトを開設して、必要最小限の物しか持たない生活に関するエッセイを発表。これが大きな反響を呼んだのです。彼らの主張は、著書『minimalism~30歳からはじめるミニマル・ライフ』(フィルムアート社/2014年、原著は2011年)でも確認できます。いっぽう日本でも、佐々木典士が2015年に『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(ワニブックス)という書籍を発表しました。ちなみに同書はその副題で「断捨離(だんしゃり)(※)からミニマリストへ」というフレーズを掲げています。

(※やましたひでこが著書を通じて提唱した生活術。入ってくるいらないものを「断ち」、家にあるいらないものを「捨て」、物への執着から「離れる」ことを意味する)

ミニマリズムの使い方を実例で教えて!

美術の「ミニマリズム」

 1960~1970年代のアメリカの美術界で「ミニマルアート」(minimal art)が流行しました。装飾的・説明的な要素を極力排して、単純な色や形で構成する彫刻や絵画などをさしていました。代表的作家には彫刻家のドナルド=ジャッド(Donald Judd)らがいます。

音楽の「ミニマリズム」

 音楽におけるミニマリズムとは「短いフレーズを反復・持続・展開させる手法」のこと。この手法を用いた音楽を「ミニマルミュージック」(minimal music)と呼びます。1960年代のアメリカの現代音楽界で誕生した音楽ジャンルで、美術界の「ミニマルアート」になぞらえて、このように呼ばれるようになりました。代表的作曲家にはスティーブ=ライヒ(Steve Reich)らがいます。

 また1990年代には「ミニマルテクノ」(minimal techno)というジャンルも登場しました。ミニマリズムの考え方は、ポピュラー音楽の世界にも広がったことになります。

文学・ファッションの「ミニマリズム」

 このほかの文化的ジャンルにもミニマリズムの影響が広まりました。例えば1980年代のアメリカ文学界では「家庭内などの小さな出来事を短編として描く表現手法」がミニマリズムと呼ばれるようになりました。代表的な作家に、レイモンド=カーバー(Raymond Carver)らがいます。また1990年代のファッション界でも「装飾的要素を排して、単純な色や形で衣服をデザインする手法」がミニマリズムと呼ばれるようになったのです。ほかにも建築・デザインなどの分野で、ミニマリズムという表現が登場します。

学術の「ミニマリズム」

 ミニマリズムは学術分野の専門用語として登場することもあります。例えば憲法学(アメリカ憲法学)には「司法ミニマリズム」という用語が存在します。また言語学でも「ミニマリズム」「ミニマリストプログラム」といった立場が存在します。これは、人間の言語能力の仕組みを解明するにあたり、必要最小限の言語処理操作を追究する考え方です。

言い換えたい場合は?

 「最小限主義」と言い換えられることもありますが、各ジャンルにおける「ミニマリズム」を1語に置き換えることは難しいかもしれません。面倒ではありますが、「身の回りの物を最小限にして暮らす生活様式」(ライフスタイルのミニマリズム)、「装飾的・説明的な要素を極力排して、単純な色や形で作品を構成する手法」(美術のミニマリズム)などのような文章表現を試してみて下さい。

 なお言語学のミニマリズムを言い換える場合は「極小主義」とすることが多いようです。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

最小限と最適 上で触れた「断捨離」を、ミニマリズムと同一視する立場も少なくありません。しかし、「断捨離」の提唱者であるやましたひでこはインターネット記事を通じてそれを否定しています。同氏の説明によると、ミニマリストの目標は「最小限」であるのに対して、ダンシャリアン(「断捨離」の実践者)の目標は「最適」であるとしています(参考:やましたひでこ「最小でも最大でもなく『最適』な量と関係で~ダンシャリアンがミニマリストと違う理由」2015年, <https://news.yahoo.co.jp/byline/yamashitahideko/20151121-00051672/>(参照2017-8-10))。

(わ)び寂(さ)びの侘び 日本文化に深く根付いているにも関わらず、日本人自身がうまく説明できない概念のひとつに「侘び寂び」という美意識があります。このうち「侘び」とは、茶道や俳諧で発達した美意識で「質素で静寂なおもむき」を意味します。これはミニマリズムにも通じる考え方といっても良いでしょう。

  *  

◆この連載の目次は⇒「続 10分でわかるカタカナ語」目次へ

◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

* * *

【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

*

【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『見やすいカタカナ新語辞典 第2版』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら


次のページ »