旧字の「榮」は人名用漢字なので、子供の名づけに使うことができます。新字の「栄」は常用漢字なので、やはり子供の名づけに使うことができます。つまり、「栄」も「榮」も出生届に書いてOK。でも、旧字の「榮」が子供の名づけに使えるようになるまでには、かなり長い歴史が必要だったのです。
昭和23年1月1日の戸籍法改正時点では、 当用漢字表には新字の「栄」が収録されていて、直後にカッコ書きで旧字の「榮」が添えられていました。つまり、「栄(榮)」となっていたわけです。ただし、旧字の「榮」はあくまで参考として当用漢字表に添えられたものでしたから、子供の名づけに使ってはいけない、ということになりました。この時点では、新字の「栄」はOKだけど、旧字の「榮」はダメだったのです。その後、常用漢字表の時代になって、新字の「栄」は常用漢字になりましたが、旧字の「榮」は人名用漢字になれませんでした。ここまでは、「歐」と良く似たパターンですね。でも、この後が違うのです。
法制審議会は平成16年2月10日の総会で、人名用漢字の見直しを決定、人名用漢字部会を発足させました。 3月26日に発足した人名用漢字部会では、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213(平成16年2月20日改正版)、平成12年3月に文化庁が書籍385誌に対しておこなった漢字出現頻度数調査、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。
追加候補選定基準 | 漢字出現頻度数調査 | |||
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200回以上 | 50~199回 | 1~49回 | ||
不受理の法務局数 | 11以上 | JIS第1~3水準 | JIS第1・2水準 | JIS第1・2水準 |
8~10 | JIS第1~3水準 | JIS第1・2水準 | JIS第1水準 | |
6~7 | JIS第1~3水準 | JIS第1水準 | JIS第1水準 | |
0~5 | JIS第1・3水準 | - | - |
平成16年8月25日、人名用漢字部会は、人名用漢字の追加候補488字を選定し、法制審議会に報告しました。この488字の中に、旧字の「榮」が含まれていました。「榮」は、出現頻度が50~199回の範囲内で、全国50法務局のうち8以上の管区で出生届を拒否されたことがあって、しかもJIS X 0213の第2水準漢字だったので、追加候補となったのです。
報告を受けた法制審議会は、平成16年9月8日の総会で、 追加候補488字をそのまま法務大臣への答申としました。そして平成16年9月27日、戸籍法施行規則が改正され、これら488字は全て人名用漢字に追加されました。新字の「栄」に遅れること56年あまり、やっと旧字の「榮」は子供の名づけに使えるようになったのです。この結果、現在では、新字の「栄」と旧字の「榮」、どちらも出生届に書いてOKなのです。