続 10分でわかるカタカナ語

第5回 ガラパゴス

2017年4月1日

どういう意味?

「孤立した環境で独自に発達した物事やそのさま」のことです。

もう少し詳しく教えて

ガラパゴス(Galápagos)は、孤島という閉じられた環境の中で、生物が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島の名からきています。生物が他の影響を受けずに固有種に進化していくように、ある閉じられた社会環境で、技術・サービス・システムなどが独自に発達していくさまを表して使われます。また、内部だけに適応して、外部に対してはまったく通用しない、というニュアンスも含まれることがあります。

どんな時に登場する言葉?

「ガラパゴス化」「ガラパゴス現象」などという言い方で、独自に発達した技術・サービス・システムなどを表す場合によく登場します。特に、日本の中だけで独特の発達の仕方をしたものが、世界標準のものとはかけ離れたものであったり、競争の中で淘汰(とうた)されたりする現象をさして使われることがあります。

どんな経緯でこの語を使うように?

東太平洋の赤道上にあり、世界自然遺産としても知られるエクアドル領の島々、ガラパゴス諸島。ダーウィンが進化論を着想したきっかけとなった島々としてよく知られています。

火山活動によってできたこの島々は、大陸と地続きになったことがなく、常に外の世界から隔離された環境にありました。そこで島々の生物は独自の進化を遂げ、多くの固有種が見られる特殊な生態系ができあがったのです。

このように、外の世界と切り離され孤立した環境で独自に発達したものをたとえて、「ガラパゴス」と呼ぶようになりました。例えば、「小笠原は東洋のガラパゴスだ」のような使われ方から、さらに、「日本の携帯産業はガラパゴスだ」のように使われるようになりました。

ところでガラパゴス諸島では生態系の破壊が問題になっています。外来生物が流入してしまったことが大きな原因のひとつです。これを踏まえて「ガラパゴス化」などの表現には「外部からの流入に弱い」「外部に淘汰されるかもしれない」といったニュアンスが含まれる場合もあります。

ガラパゴスの使い方を実例で教えて!

ガラパゴス化

規制によって守られた国内市場のように、特異な環境の中で独特の発展を遂げた技術・サービス・システムなどが、その独特さゆえに、かえって国際市場など外の環境に対してはニーズを満たさず、競争力を持たなくなることを言います。「ガラパゴス化した日本的経営」「ガラパゴス化された技術開発」などのように使われます。

ガラパゴス携帯(ガラケー)

インターネット、ワンセグ、おサイフケータイ、カメラ機能など日本国内のニーズにいち早く対応し、独自かつ高度な進化を遂げた携帯電話(フィーチャーフォン)のことをさして俗に言われる言葉です。略してガラケーとも言われます。結局、世界市場では受け入れられず、海外から入ってきたスマートフォンによって国内のシェアが奪われてしまいました。

言い換えたい場合は?

ガラパゴスを言い換える場合は「(孤立した環境で)独自に発達した物事」「独自進化のため競争力を失った(失いつつある)物事」などの文章表現を試してみてください。このうち「孤立した環境」の部分を「日本」「日本市場」「国内環境」などに差し替える方法もあります。また「物事」の部分を「市場」や「機能」などに差し替える方法もあります。

ガラパゴス化の場合は「独自進化」「独自化」「孤立」「タコツボ化」などと表現する方法があります。ガラケーについては「従来型携帯電話」という代替表現が定着しています。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

亀の諸島 ガラパゴス諸島のことを、スペイン語で Islas Galápagos と表現します。これを直訳すると「亀の諸島」となります。スペイン人司教がこの諸島にヨーロッパ人として初めて到達したのが1535年のこと。このとき司教は、同諸島だけに生息する巨大な亀、ガラパゴスゾウガメに初めて出会いました。この話をもとにオランダ人の地質学者が1570年製の地図に「亀の諸島」と記述。これがガラパゴス諸島の命名の由来となりました。なお同諸島の正式名称は Archipiélago de Colón(コロン諸島)。直訳で「コロンブスの群島」を意味します。(参考:『西和中辞典・第二版』小学館など)

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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