どういう意味?
「統治・支配・管理」のことです。
もう少し詳しく教えて
ガバナンス(governance)は英語で「組織などをまとめあげるために方針やルールなどを決めて、それらを組織内にあまねく行き渡らせて実行させること」という意味で、「統治・支配・管理」という語に相当します。
「統治」というと「権力者」が「国」を治めるイメージを思い浮かべますが、ガバナンスの主体は「権力者」とは限りませんし、ガバナンスの対象も「国」とは限りません。
例えば近年では、コーポレートガバナンス(企業統治)という概念をよく見聞きします。この概念の場合、ガバナンスの主体は「株主」などで、ガバナンスの対象は「企業」ということになります。
どんな時に登場する言葉?
政治や経営の分野でよく登場する語ですが、実は「統治すべき組織・仕組み」が存在するあらゆる分野で使われる言葉でもあります。例えば情報通信の分野では、国際的な通信ネットワークであるインターネットの運営や管理のことを「インターネットガバナンス」と呼んでいます。
どんな経緯でこの語を使うように?
マスメディアでガバナンスという言葉をよく見かけるようになったのは1990年代のことでした。例えば新聞では、「ガバナンス」が登場する記事数が1990年代後半に増えました(注:毎日・朝日・産経・読売調べ)。これは当時、コーポレートガバナンスの概念が注目されたことが背景にあります。なぜ、この時代に注目度が高くなったのかは後述します。
ガバナンスの使い方を実例で教えて!
ガバナンスを強化する
ガバナンスと結びつきやすい言葉には「強化・向上・改善・確立・改革・発揮」などがあります。例えば「強化」の場合は「ガバナンス(の)強化」とか「ガバナンスを強化する」などの表現が可能です。このような表現によって「統治の影響力を強める」ことを表現できるわけです。
ガバナンス体制
結びつきやすい言葉は、ほかに「体制・機能・構造」などもあります。例えば「体制」の場合は「ガバナンス体制」という複合語を作ることができます。これは「統治のための体制」を意味します。
コーポレートガバナンス(企業統治)
株主などの利害関係者が、企業の経営を監視することを言います。経営陣による経営の私物化(それに伴う不利益)を防ぐこと、さらには企業の不祥事を防ぐことを目的としています。この場合、ガバナンスの主体は「株主などの利害関係者」、ガバナンスの対象は「企業(狭義には経営陣)」となります。
この概念は1960年代のアメリカで誕生しました。当時、企業の様々な非倫理的な行動(黒人の雇用差別など)が問題になっていたことが背景にあります。いっぽう、日本で同概念が注目されたのは1990年代のことでした。バブル崩壊で倒産する企業が相次ぎ、経営健全化の手段として米国型の企業統治が注目されたためです。2000年代には企業の不祥事が相次いだことから、それを防ぐ方法としての企業統治も注目されました。
グローバルガバナンス
環境問題や難民問題などの国際的な問題に対処する際、従来のように「国家」だけが主体になるのではなく、国家・企業・NGO(非政府組織)などの多様な主体が関与する仕組みのことをグローバルガバナンスと呼びます。この概念が登場したのは1992年のこと。冷戦後の国際社会で、社会課題の複雑化や広範化が進んだことが概念誕生の背景にありました。
言い換えたい場合は?
多くは「統治」で言い換え可能です。コーポレートガバナンスを「企業統治」と言い換える場合が好例でしょう。「統治」につきまといがちな「国を治めるイメージ」を避けたい場合は「管理」や「運営」を使った言い換えも試してみてください。
なおガバナンスが登場する文脈によっては「統治」ではなく「統治能力」「統治手法」などと言い換えると良い場合もあります。「ガバナンスの向上」を「統治能力の向上」と言い換えたり、「ガバナンス改革」を「統治手法の改革」と言い換えたりする場合がそうです。
グローバルガバナンスのように単純な言い換えが困難な概念もあります。その場合は文章などで意味を補足するのが良いでしょう。
雑学・うんちく・トリビアを教えて!
舵取り ガバナンス(governance)に近い語として、「政府」を意味するガバメント(government)があります。そしてこれらの語源をたどると、ギリシャ語の kubernan に行き着きます(参考:New Oxford American Dictionary)。「舵取(かじと)り」を意味する言葉です。