今回からつなぎ語として働く一群の語句を考察してみたいと思います。ここでの「つなぎ語」とは発話と発話、あるいは文と文をつなぐ語をいい、談話の構造の観点からみることにします。談話の構造というと、話し相手とのやりとりにかかわるつなぎ語と、話し手自身の話のなかでつないでいく語とを区別することができます。今回は、まず、相手の発言を受けてそこからさらに話しを続けていくときに用いられる語句を取り上げてみます。
まず、ごく普通にみられるbutをみてみましょう。相手の発話を受けて用いられる典型的なbutを本辞典では次のように記述しています。
2 〈不同意や不信感などの感情を表して〉でも:“I don’t think I should stay in this house.” “But why?” 「この家にいるべきじゃないと思うんだ」「でもいったいどうして」//《ルームメイトとのやりとり》 “Somebody wants you on the telephone.” “But who knows I’m here?” 「誰かからあなたに電話よ」「でも誰が? 私がここにいることは誰も知らないのに」.
感情表現は一般に文頭に現れますが、butにも次のように相手の発話を受けて意外性を表す用法があります。この場合は、第2例のように、自分の発話内でも用いられます。
1 〈驚きや非難などの感情を表して〉まあ, 何と, それにしても:“Mary passed her exams.” “But that’s great!” 「メアリーは試験に受かったんだ」「それにしてもすごいね」//《友人が着ていたコートを思い出して》 It was mink. But what a glorious colour! It was so attractive to me. ミンクだったのよ. それにしてもすばらしい色だったわ. とても魅力的だった.
wellにも前の発話をうけて話をつなぐ使い方があります。
2 〈応答を少し考えて〉えっと, そうねえ(◆上昇調で; 時間かせぎとして用いられる) “How much will the train to Newcastle cost?” “Well, it depends what class you go.” 「ニューキャッスル行きの電車はおいくらですか」「あのー, どの等級で行くかによって異なりますが」 / “What do you think about my hair cut?” “Well, it looks OK to me.” 「このへアスタイルどう?」「そうねえ, いいと思うよ」 (◆間を置くことで考える時間をとっている. ときに全面的に賛成ではない含みがある) / “How’s business?” “Well, I can’t complain.” 「景気はどう?」「そうねえ, まあまあだね」 (◆この場合はかなりよいという含みがある)
これらの用法はいずれも間を置くことで、直接の答えにはなっていないこと、次に続く賛意と直結しないこと、必ずしも否定的な状況ではないこと、をそれぞれ表しています。このことは決めかねていることをあいまいに言う次のような用法に通じています。
3 〈質問にあいまいに答えて〉そうね, そうだね, まあ(◆上昇調で) “Are you going to the party tonight?” “Well, I think so.” 「今日のパーティに行く?」「そうだな, おそらくは」.
また、in other wordsにも相手の発言を受ける次のような用法があります。
2 〈相手の発言を受けて〉要するに, つまり “I’m afraid there isn’t much we can do to help.” “In other words, you can’t be bothered.” 「あまり多くはお手伝いできないんじゃないかしら」「つまり, ごめんこうむるってことなんですね」
ここでは相手が言いにくいことをより直接的な言い方に言い換えています。