辞書・ことば企画:10分でわかる「カタルシス」
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10分でわかる「カタルシス」の意味と使い方

【どういう意味?】

「精神の浄化作用」のことです。

【もう少し詳しく教えて】

カタルシスという言葉は、「心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること」を意味します。もともとは、アリストテレスが『詩学』に書き残した悲劇論から、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみを呼び起こし感情を浄化する効果」をさす演劇学用語です。転じて、精神医療においては「抑圧されていた心理を意識化させ、鬱積(うっせき)した感情を除去することで症状を改善しようとする精神療法」をさします。さらに、一般化して、「心の中にあるわだかまりが何かのきっかけで一気に解消すること」をいいます。

【どんな時に登場する言葉?】

哲学思想分野で用いられます。演劇学概論では、最初にならう専門用語のひとつです。ということからもわかるように、演劇・映画をはじめとするパフォーマンスや文芸関係に頻出します。例えば、「仮構の世界に陶酔することよってカタルシスをおこなう」とか、「アリストテレスが悲劇の効用として論じたカタルシス」といった表現は珍しくありません。

心理学・精神医学・カウンセリングなどでも登場します。「サイコドラマにおけるカタルシス」「カタルシスの必要性」といった言い方がされます。

また、俗に「苦痛を吐き出して解消すること」程度の意味で、個人的独白を綴った個人ページのタイトルなどにも見受けられます。

【どんな経緯でこの語を使うように?】

アリストテレスは『詩学』で、悲劇の効用としてカタルシス論を展開しましたが、「カタルシス」が意味するものを『詩学』の中で明確に定義していません。語源的には「カタルシス」は「排泄(はいせつ)」「浄化(作用)」を意味し、「体内の有害物質を瀉出(しゃしゅつ)すること」または「宗教的な浄め」をさすことから、学術研究領域では定義をめぐって、「瀉出(排泄)説」、「教化説」などさまざまな説が展開されています。

精神科医のS=F=フロイト(1856-1939)が、催眠療法と「悲惨な話を聞いて泣くこと」をあわせて用いて行なったヒステリー治療法における除反応を「カタルシス」と呼んだことから、精神療法の用語となりました。

日本では、演劇活動を展開した島村抱月(1871-1918)が、『囚われたる文芸』の中で「其の浄化(カタルシス)の説」と書いています。精神療法が日本に入ってくると、その意味でも用いられるようになります。

【カタルシスの使い方を実例で教えて!】

アリストテレスのカタルシス論
アリストテレスは『詩学』で、作品としてまとまりがあり、演技者の再現代行行為によって、観る人が「あわれみ(エレオス)とおそれ(ポボス)を通じて、そのような感情の浄化(カタルシス)を達成するものである」(1449b)と、悲劇を定義しています。
カタルシスを○○する
「言語化によるカタルシスを体験する」「観客をカタルシスへ誘う」「カタルシスを喚起する」「カタルシスを味わう」という使い方をします。
「カタルシス」
CDや本の題名に用いられています。松本英子のアルバム「カタルシス」、桑沢アツオの漫画『鉄拳のカタルシス』など。また、村上龍は『奇跡的なカタルシス―フィジカル・インテンシティ』の中で、サッカーのカタルシスは爆発的で宗教的ですらある、という中田英寿選手の言葉を伝えています。
映画「カタルシス」
連続少女殺人事件を起こした14歳の少年が、少年院を仮退院した後の、家族の苦悩と再生を描いた、坂口香津美監督・脚本で、2002年に制作された日本映画のタイトルに使われています。

【言い換えたい場合は?】

広範囲に用いられるところでは、「浄化」「浄化作用」です。演劇学ではふつう「カタルシス」を言いかえませんが、「浄化作用」とかっこ付きで説明をくわえることもあります。精神療法の場合は、「通痢(つうじ)」「煙突掃除療法」などの用語があります。場合によっては、「排泄」「瀉出」という表現も考えられないことでもありませんが、カタカナ語で用いられる意味において言い換えるのであれば、「語源的には」と前置きをつける方が無難でしょう。

【雑学・うんちく・トリビアを教えて!】

「カタルシス」の原語表記英語スペルでは「catharsis」、ギリシャ語をローマ字表記したスペルが「katharsis」です。英語のカタルシスには、日本で使われている意味の他に、医学分野で「便通」「瀉下(しゃか)」「下剤」などの意味で使われます。

「カタルシス」は「カタストロフィ」ではありません何となく語感が似ているカタストロフィ(catastrophe)という言葉は、「自然界の大変動」「社会の大変革」「破局」を意味します。「ドラマや小説などの悲劇的結末」を呼ぶことも多いので、混同されやすいのかもしれません。実は語の成立過程からすれば近い単語なのですが、取り違えると、例えば、「カタルシス(浄化作用)を体験した」のと「カタストロフィ(破局)を体験した」のではまったく異なり、おかしなことになってしまいます。

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