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続 10分でわかるカタカナ語 第1回 インテリジェンス

2017年 3月 4日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「インテリジェンス」の意味と使い方

どういう意味?

 「知能・知性」のことです。「諜報」「情報収集」の意味としても使われます。

もう少し詳しく教えて

 インテリジェンスは、英語の intelligence を由来とするカタカナ語です。基本的には「知能」や「知性」を意味します。

 intelligence の語源をたどると、おおもとはラテン語の inter と lego という言葉に行き着きます。このうち inter は「〜の間」、いっぽうの lego は「何かを集める、ひろい集める」という意味。これが組み合わさって「ものごとをうまく識別できる」つまり「理解力がある」という意味をもつようになりました。そこで intelligence は「知能・知性」を意味するわけです。

 いっぽう安全保障・軍事の世界でもインテリジェンスが登場します。この分野におけるインテリジェンスは、敵や国際情勢などに関する「情報収集」や「情報分析」の意味をもつのです。ラテン語で登場した「何かを集める」「ものごとをうまく識別する」というイメージが、一般とは異なる形で生きていることになります。

どんな時に登場する言葉?

 「知能」や「知性」を意味するインテリジェンスは、あらゆる分野で登場する言葉です。またインテリジェンスを含む複合語は、ビジネスや情報通信などの分野で登場することも多いようです。詳細は後で述べます。いっぽう「情報収集」を意味するインテリジェンスは軍事や政治の分野でよく登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 日本語でインテリジェンスというカタカナ語が登場するようになったのは明治時代のことであるようです。ちなみに昭和初期の文献には、次のような用例が残っていました。物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦が、顔の美醜について記した文章です。「おでこは心の広さを現わし、小さく格好よく引きしまった鼻はインテリジェンスとデリカシーの表象であり、下がった目じりは慈愛と温情の示現である、という場合もあるであろう。」(「破片」1934年11月)この場合のインテリジェンスは「知性」を意味します。

インテリジェンスの使い方を実例で教えて!

インテリジェンスを感じる

 何かに知性の高さを感じるような場合「インテリジェンスを感じる」「インテリジェンスが高い」などと表現できます。また「知的な」とか「賢い」という意味を表現する場合に、インテリジェンスを形容動詞化して「インテリジェンスな○○」などと表現する場合もあります。「インテリジェンスな機能を追加する」などの表現です。

情報収集機関

 インテリジェンス(情報収集・分析)には多くの複合語が存在します。例えばインテリジェンスサービスやインテリジェンスエージェンシーとは「情報収集機関」のこと(この場合のエージェンシーは機関・局などの意味)。またカウンターインテリジェンスとは「相手に対抗して行う情報収集」を意味します。さらに近年では「情報通信技術を利用した情報収集」を意味するサイバーインテリジェンスという概念も登場しました。ちなみにサイバーとは「コンピューターネットワーク」に関係することを意味する接頭語です。

ビジネスインテリジェンス

 ビジネス(経営)の分野では「企業が蓄積する情報を経営に活用すること」をビジネスインテリジェンス(BI)と表現します。またそのために利用する「データ分析用のソフトウェア」のことを、 BI ツール、 BI システムなどと呼んでいます。

インテリジェント

 intelligence(インテリジェンス)は英語の名詞です。これに対応する形容詞が intelligent (インテリジェント)。この言葉も「知性がある」とか「賢い」などを意味します。この言葉は、日本語では複合語として登場することが多いようです。例えばインテリジェントビルは「高度な情報通信機器の設置・利用に便利な設備を持つビルディング」という意味。インテリジェント材料は「環境変化に自動的に反応できる材料」という意味です。

言い換えたい場合は?

 知能・知性を意味する場合のインテリジェンスは「知能」や「知性」などと言い換えることができます。ただし「人工知能」のように定着した訳語が存在する場合は、それをそのまま使ってください。また「ビジネスインテリジェンス」のように言い換えが難しい概念も存在します。その場合は「企業が蓄積する情報を経営に有効活用すること」などの説明を加えてみてください。

 いっぽう安全保障・軍事分野のインテリジェンスは「情報収集」や「情報活動」「情報収集・分析」と言い換えることが可能です。実際、新聞や書籍などでは、このような言い換えがよく登場します。なお相手が専門家である場合は「諜報(ちょうほう)」という定まった訳語を使う方法もあります。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

インテリは何の略? 知識人や知識階級を意味する「インテリ」という言葉。一見するとインテリジェンスまたはインテリジェントの省略形のように見えます。しかしインテリの語源は英語でなく、ロシア語で知識階級を意味するインテリゲンチャ(интеллигенция)です。

IQ の I は? 知能指数を意味する IQ は、intelligence quotient の略。つまり IQ の I とはインテリジェンスのことなのです。

AI の I も? 人工知能を意味する AI は、artificial intelligence(アーティフィシャルインテリジェンス)の略です。アーティフィシャルとは「人工」を意味します。

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

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2017年 3月 4日