今回は「ちょっとお話があるのですが」という表現について考えてみます。
一般に「(A〈人〉と)話をする」は‘to have a word (with A)’という言い方があります。我々日本人にはすぐには思い浮かばない表現かもしれませんが、よく聞きますので、関連する言い方を含め使えるようにしましょう。本辞典でも次のように記述されています。
1 A〈人〉と(一言二言)話がある:Can I have a word with you for a minute? ちょっとお話ししたいことがあるんですが/ I’d like to have a word with your boss, please. ちょっとあなたの上司の方とお話ししたいのですが.
2 A〈人〉に一言断りのことばを言う:Have a word with the boss and take a day off. 上司に一言言って休暇をとりなさい/ Have a word with the curator, or she will not allow you to park here. 館長に一言断りを入れてください, さもないとここに駐車できません.
以下では語義1の第1例のように、直接相手に話しかける言い方をみてみます。まず、この例のように疑問文を用いるときは can ではじめるのが一番よく使われます。改まった場面や目上の人などに話しかける場合は could,may,might などが用いられます。次は三省堂コーパスからの用例を改変したものです。それに対する応答表現にも注意してみてください。
(部長が)‘Could I have a word with you? In my office, if you don’t mind.’「ちょっと話があるのだが。よければ私の部屋で」/ ‘Your Highness, may I have a word?’ ‘Certainly.’「殿下、お話がございます」「もちろん」/ ‘Might I have a word with you, please?’ ‘What do you want?’「よろしければお話があるのですが」「なんだろう」
平叙文では、‘I’d like to’ではじめるのが一般的です。
‘I’d like to have a word with you alone.’「ふたりだけで話がしたいのですが」/ ‘Excuse me, sir. I’d like to have a word with you.’ ‘Oh? . . . Quickly please.’「失礼ですが、お話があるのですが」「話?急いでお願いできるかな」
‘I want to’ではじめると‘I’d like to’に比べ、ややぞんざいな言い方になります。
‘I want to have a word with you about this painting of yours.’「君のこの絵について話がしたい」
さらに、wanna を使うとよりくだけた言い方になります。
‘I wanna have a word with you during the week.’「今週中に君と話がしたい」
もちろん、当事者が複数の場合は‘I’が‘we’となります。
(両親が子どもに)‘We’d like to have a word with you about chocolate.’ ‘What?’「チョコレートのことで話があるのだけど」「何?」/ ‘Can we have a word, Del?’ ‘Yeah, ‘course you can.’「デル、ちょっと話があるのだけど」「もちろん、いいとも」
‘a word’の代わりに‘a few words’も用いられます。
‘Jacques, can I have a few words with you?’ジャック、2,3話があるのだけど」
なお、「話す」ということを表す動詞はたくさんあり、たとえば、‘Can I speak to you?’も可能ですが、‘Can I have a word with you?’に比べると頻度は少ないようです。
‘Excuse me. Can I speak to you outside for a minute?’ 「すみませんが、部屋の外で少しお話があるのですが」/ ‘May I speak to you for a moment in private?’「ちょっとふたりだけでお話しできますか」