どういう意味?
もともと「小さな板状のもの」の意で、「錠剤」「鉄道の通票」「板状の情報機器」などのことです。
もう少し詳しく教えて
タブレット(tablet)は英語で本来「小さな板状のもの」を意味します。
英語では、書字板(文字を書いたり消したりできる板)、銘板(建物や施設などに掲示する板)、錠剤、鉄道の通票(通行許可票)などを表します。近年では板状の入力装置や情報端末(「タブレット端末」)をさす言葉としても使われています。
以上のうち日本では、「錠剤」「鉄道の通票」「板状の入力装置や情報端末」の意味で使われてきています。
どんな時に登場する言葉?
医薬品・食品・鉄道・情報通信の分野で登場します。
どんな経緯でこの語を使うように?
大正時代には見られた言葉です。例えばそのころの外来語辞典には「タブレット」の項目がありました。当時のタブレットは、主に「鉄道の通票」「錠剤」「銘板」という意味で使われていたようです。
いっぽう「情報機器」の意味が広まったのは近年のことです。まず20世紀末にコンピューターへの入力装置であるタブレット(ペンタブレット)が普及。2000年代以降になると1枚の板状のコンピューターが登場し、これをさす語として「タブレット(端末)」が使われるようになりました。
タブレットの使い方を実例で教えて!
医薬品・食品の「タブレット」
タブレットは、医薬品や栄養補助食品(サプリメント)の分野で「錠剤」、食品の分野で「錠菓」(ラムネ菓子のような食品)をさします。なお『ミンティア』や『フリスク』などの商品名で知られる菓子は「ミントタブレット」と呼ばれます。
錠剤にせよ錠菓にせよ、その形は「板状」とは言い難いかもしれません。しかしこれらも習慣的にタブレットと呼ばれます。
鉄道の「タブレット」
鉄道で列車どうしの衝突・追突を防ぐ仕組みのひとつに「閉塞(へいそく)」があります。これは線路を区間に区切って「各々の区間にはひとつの列車しか進入してはいけない」というルールをさします。
現代の鉄道では多くの場合、人手を介さない「自動閉塞」を用いています。しかしかつてはこの作業を人力で行った時代もありました。そのときに用いていた道具がタブレットと呼ばれる通票です。これは、列車に対して発行される通行手形のようなもの。実際にはコースター(コップ敷き)程度の大きさの「金属製の円盤」を用いていました。列車の運転手は、停車駅で次の区間専用の円盤を受け取ることで、初めてそこから先の区間を走行できるようになります。
入力装置の「タブレット」
コンピューター用語の「タブレット」は、まず20世紀中に「ペンタブレット(pen tablet)」の略称として普及しました。ペンタブレットとは、平面板とペン状の棒で構成されている入力装置のこと。パソコンでイラストを描く時によく使われます。利用者の間では「ペンタブ」という略称も普及しました。
情報端末の「タブレット」
2000年代に入ると、コンピューターの一形態としての意味も加わるようになりました。平らな板のような形で、パソコンに近い機能を備えた機器のことです。
まず2002年にマイクロソフトが「タブレットPC(Tablet PC)」と呼ぶ概念を発表。板のような形状で、タッチパネルやペンによる操作が可能なパソコンでした(キーボード付きの端末も、そうでない端末も存在した)。つづいてアップルが2010年にiPad(アイパッド)を発表。これ以後、このようなコンピューターが「タブレット端末」と総称されるようになりました。なおタブレット端末やスマートフォンなどの情報機器は、スマートデバイス(→スマート)と総称されます。
言い換えたい場合は?
医薬品・栄養補助食品のタブレットには「錠剤」、菓子のタブレットには「錠菓」や「タブレット菓子」という定訳があります。また鉄道のタブレットは、厳密さを求められない場面なら「通票」という定訳を使えます。
入力装置のタブレットには定訳がありません。「平面板とペンで構成される入力装置」などの補足を試してください。また情報端末のタブレットについては、一部マスコミが「多機能情報端末」という補足表現を使っています。
雑学・うんちく・トリビアを教えて!
「タ」ブレットではなく「ダ」ブレット 『不思議の国のアリス』の作者であるルイス・キャロルが遺した言葉遊びに「ことばのはしご(word ladders)」があります。例えば「cold(冷たい)を warm(暖かい)にせよ」というお題を与えられると、cold → cord(コード)→ card(カード)→ ward(病室)→ warm といった具合に1文字ずつ変えてゆき別の単語に変形させる遊びです。
日本では一部で「タブレット」の名称でも知られている遊びですが、ルイス・キャロルはこの遊びを「ダブレット(Doublets)」と呼んでいました。ダブレットという命名には「お題となる対(ダブル)の言葉」という意味が隠されています。