日本新辞林
明治30年(1897)10月15日刊行
林甕臣、棚橋一郎共編/本文1875頁/四六判半裁(縦128mm)
『帝国大辞典』(明治28年)をもとに小型版として改訂され、収録語数は約4万6000。『帝国大辞典』の半分足らずの大きさだが、活字は小さくせず、1万項目あまりの減少にとどめている。語釈や用例を簡潔にしたうえ、接尾語によって品詞が異なる語形や復合語を子項目として追い込むことで、行数を節約する工夫がほどこされた。
たとえば、「いたずら」の項目は、以下のようになっている。
いたづら[名](徒)むだなるあそび、小児などのたはむれ、むだごと、無益なること、(悪戯)。 ──なる[形]。 ──に[副]。 ──いね[活名](徒寝)あだね、むだにねること。 ──ごと[名](徒言)むだぐち、無益なる言語。 ──ごと[活名](徒事)いたづらなるしわざ。 ──じに[活名](徒死)むだ死、死にても其のかひなきこと。 ──ね[活名](徒寝)いたづらぶし、只だひとり寝ること。 ──びと[名](徒人)何の益にもたゝぬ人。 ──ぶし[活名](徒臥)いたづらね。 ──もの[名](徒者)①役にたゝぬもの、悪戯をなすもの。②ねずみの異名。 ──こ[名](徒子)いたづらをする小児。
『日本新辞林』では14行だが、『帝国大辞典』ではそれぞれが独立した項目で28行(「いたづらなる」の項目はない)だった。前者は1頁46行、後者は1頁93行だから、行数から見るとほぼ同じ割合になっていることが分かる。
その他は『帝国大辞典』とほとんど同じ形式で編集された。見出し項目の掲載順も、わ行の後に促音の「ッ」を置き、最後に「ん」の順である。
目立った違いは、簡略化した語釈を補うため、小活字で同義語を掲げたこと。また、古典による用例も小活字で、頭に「☞」の記号を使っているのが珍しい。そして、漢字表記が複数ある場合は、代表的な表記を語釈の前に、ほかの表記は語釈の末尾に置かれた。
さらに、品詞の表示にも「形動」「形名」「活名」などが新たに使われているが、その説明は載っていない。なお、近代デジタルライブラリーの『日本新辞林』では、巻頭2ページ分の「例言」が欠落している。
●最終項目
をんわ[名](温和)①気象のおだやかに落ち着きてあること、すなほにおとなしきこと。②気候の暖かにしてのどかなること、寒熱其の中を得ること。
●「猫」の項目
ねこ[名](猫)①人家に飼養する獣、人に馴れ易く、よく鼠を捕るもの。②旧幕時代の末より芸妓の異名。
●「犬」の項目
いぬ[名](犬)家に飼養する獣の名、(狗)。
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