前回はもともと普通名詞として用いられていたboyとmanが間投詞に転用された例をみましたが、今回はGodを代表とする、キリスト教にかかわる語が間投詞として用いられる場合を考えてみます。
Godは基本的に神をいい、キリスト教誕生以後は具体的にはイエス・キリストを指す語で、本来は敬虔な気持ちで呼びかける語です。つまり、軽々しく口に出すことがはばかれる性格をもっていたのですが、言ってはいけないことばをつい口にしてしまうほど感情が高ぶっているということを示すために間投詞として用いられるようになったと考えられています。英語ではこのような語をswearwords(ののしり語)ということがありますが、これももとの意味は「誓いのことば」ということです。
突然目の前で思いもよらなかったことなどが起きたときに驚きのあまりつい口に出ることばとしてoh my Godがあります。用例は三省堂コーパスを改変したものです。
《子どもが血だらけの顔をして帰ってきて》 Oh my God! What happened? まあ、なんてこと、どうしたの?/ 《同窓会で久しぶりに会って》“Do you remember the naughty boy next to you? That’s me!” “Oh my God! Oh my God, I do!” 「隣に座っていたやんちゃなやつ、覚えてる?それが俺だよ」「えっ!わー、覚えてる!」
Oh, GodやGod単独でもよく用いられます。驚きのほか、困惑やいらだちなども表します。次は本辞典からの引用です。
2 〈困惑して〉どうしよう, あれ: God, what can I say? どうしよう, 何を言ったらよいだろう.
3 〈いらだって〉おやおや, もう: 《食器を出そうとして》 Oh God, that’s dirty too. おいおい, そいつも汚れてるぜ /《乱雑な売り場を見て上司が》 Oh God, who’s in charge here? Are you? うわー, ここの責任者は誰だ? 君か?
さらに、主張を強めるために自らの発言の前に置くこともあります。
5 〈主張を強めて〉まったく, 実に, 本当に: No one knows what he’s going to do next. Oh God, he’s so strange. 彼の行動を予測することはできない. そう, 実に変わったやつなんだ/ “I’m sure Ben did it.” “Oh God, it’s not him.” 「きっとベンがやったんだよ」「いや, 彼じゃないよ」.
ほかに、Godにかかわる表現はたくさんありますが、たとえば、God bless you は本来の「あなたにも神様がお恵みをくださいますように」という祈願文として使われるほかに、次のような間投詞的な用法もあります。次も本辞典からのものです。
2 〈驚いたり, 怒ったりして〉すごいね!, えらいね!, まあかわいそうに!, とんでもない!:“I’ve got top marks in the exam, Mum.” “Oh, my dear. God bless you!” 「お母さん, テストで一番取ったよ」「まあ, あなたすごいじゃない!」/ 《事実と反することを言われて》 God bless you! I’d never have done it myself. とんでもない! 私がしただなんて!
ちなみに、誰かがくしゃみをしたときに Bless you. と言うことがあります。
4 〈相手がくしゃみをしたときに〉お大事に, お気をつけて(◆通例Godを省略し, やや上昇調で) “Atchoo!” “Bless you.” “Thank you.” 「はくしょん!」「お大事に」「ありがとう」 (◆言われた人はThank you. と応える)
これは、くしゃみをすると魂が抜けてそこへ悪魔が入り込んでくるという迷信があり、そのことから神に守ってもらおうということから生まれた表現と言われています。