(菊武学園タイプライター博物館(20)からつづく)
菊武学園タイプライター博物館には、「Monarch Pioneer」も展示されています。「Monarch Pioneer」は、1932年頃から1938年にかけて、モナーク・タイプライター社が販売していたタイプライターです。ただし、この時期のモナーク・タイプライター社は、もはや実質的な生産拠点を持っておらず、菊武学園の「Monarch Pioneer」も、製造はレミントン・ランド社がおこなったと考えられます。
「Monarch Pioneer」の印字機構や筐体は、同時期の「Remington Remie Scout Model」を、かなりの部分で使い回しています。右側面のレバーも、その一つです。「Monarch Pioneer」は、右側面のレバーを手前に倒した状態では、印字できません。右側面のレバーを奥に倒すことで、タイプ・バスケット全体がせり上がります。この状態でキーを押すと、対応するタイプ・アーム(type arm)が、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。いわゆるフロントストライク式の印字機構であり、打った文字がすぐ読めるのです。
この「右側面のレバーを倒すことでタイプ・バスケット全体がせり上がる」という機構は、もともとは「Remington Portable No.1」で採用され、その後「Remington Remie Scout Model」や「Monarch Pioneer」にも転用されたものです。菊武学園の「Monarch Pioneer」のタイプ・アームの先には、それぞれ活字が2つずつ埋め込まれています。2つの活字は、上が大文字(および記号)で、下が小文字(および数字)です。キーボード左端の「SHIFT KEY」を押すことで、プラテンが奥へと移動し、大文字(および記号)が印字されるようになるのです。
「SHIFT KEY」のすぐ上の「SHIFT LOCK」キーを押すと、「SHIFT KEY」が下がりっぱなしになります。菊武学園の「Monarch Pioneer」では、42個のキーはQWERTY配列に並んでいますが、キートップが小文字なのが特徴的です。