「Remington Type-Writer No.2」は、E・レミントン&サンズ社が1878年に製造を開始したタイプライターです。発売当初は、ロック・ヨスト&ベイツ社が販売をおこなっていましたが、1878年7月にはE&T・フェアバンクス社に販売権が移っています。ただ、宣伝はE・レミントン&サンズ社が自らおこなっていて、上の広告もそうなっています。
「Remington Type-Writer No.2」の最大の特長は、大文字と小文字が両方とも打てる、という点にありました。ブルックス(Byron Alden Brooks)が発明したプラテン・シフト機構を搭載することで、38個のキーで76種類の文字を打ち分けることができたのです。上の広告では、キーが44個あるように見えますが、実際のキー数は、「Upper Case」と「Lower Case」を合わせても40個でした。「Remington Type-Writer No.2」のキー配列は、以下のようになっていて、アルファベットに関しては「Sholes & Glidden Type-Writer」を踏襲していました。
38本の活字棒(type bar)は、プラテンの下に円形に配置されています。活字棒はそれぞれがキーにつながっており、キーを押すと活字棒が跳ね上がってきて、プラテンの下に置かれた紙の下側に印字がおこなわれます(アップストライク式)。打った文字をその場で見ることはできず、プラテンを持ち上げるか、あるいは数行分改行してから、やっと印字結果を見ることができるのです。活字棒の先には、活字が2つずつ埋め込まれていて、プラテンの位置によって、大文字と小文字が打ち分けられます。「Upper Case」キーを押すと、プラテンが機械後方(オペレータから見て奥)へ移動し、その後は大文字や記号が印字されます。「Lower Case」キーを押すと、プラテンが機械前方(オペレータから見て手前)へ移動し、その後は小文字や数字が印字されます。なお、数字の「1」は小文字の「l」で、数字の「0」は小文字の「o」で、それぞれ代用することになっていました。
大文字と小文字の両方が打てるようになったことから、タイプライターの市場は大きく拡がりました。市場の大きな部分は速記者で、初期の段階ではタイプライターを速記の反訳に用いていたのが、やがて、直接、タイプライターで速記をおこなうようになりました。それとともに、速記専門学校でタイプライターを教えるようになり、「Remington Type-Writer No.2」は全米に拡大していったのです。