「Molle Typewriter No.3」は、ウィスコンシン州オシュコシュのウィン(Robert D. Wynn)率いるモリー・タイプライター社が、1918年に発売したタイプライターです。「Molle」の発音がややこしかったのか、地元オシュコシュの新聞広告にも「Pronounced “Mollie”」と注記があったりします。
「Molle Typewriter No.3」は、30キーのフロントストライク式タイプライターです。扇状に配置された30本の活字棒(type arm)は、それぞれが対応するキーにつながっており、キーを押すと活字棒が立ち上がって、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられます。それぞれの活字棒の先には、活字が3つずつ埋め込まれていて、通常の状態では小文字が印字されます。キーボード下段の両端にある「CAP」キーを押すと、プラテンが持ち上がって、大文字が印字されるようになります。キーボード中段の左端にある「FIG」キーを押すと、プラテンがさらに持ち上がって、数字や記号が印字されるようになります。「FIG」キーの左上には小さなノブがあって、「CAP」や「FIG」を押し下げたままにできます。
「Molle Typewriter No.3」のキーボードは、いわゆるQWERTY配列を基本としています。下の広告に見えるキーボードでは、上段の小文字側にqwertyuiopが、大文字側にQWERTYUIOPが、記号側に1234567890が並んでいて、右端に「TABULATOR KEY」があります。キーボードの中段は、左端に「FIG」キーがあり、小文字側にasdfghjkl½が、大文字側にASDFGHJKL¼が、記号側に@$%^*=/¢#!が並んでいて、右端に「BACK SPACER」キーがあります。キーボードの下段は、両端に「CAP」キーがあり、小文字側にzxcvbnm&,.が、大文字側にZXCVBNM-,.が、記号側に()?'":;_,.が並んでいます。コンマとピリオドがダブっているので、30個のキーで86種類の文字を打てるのです。
「Molle Typewriter No.3」は筐体がアルミニウム製で、重さが11¾ポンド(5.3kg)でした。モリー・タイプライター社としては、小型軽量を売りにしたかったのですが、ライバル機の「Corona 3」には及ばず、値下げ競争による苦戦をしいられていたようです。