鈴木マキコ(夏石鈴子)さんに聞く、新明解国語辞典の楽しみ方

新明解国語辞典を読むために 続・番外編 ~LINEのすてきな辞書スタンプ~

筆者:
2023年3月29日

先日、センスのいい友達からラインで「おめでとう」というスタンプが来た。え、これは何?「おめでとう」を、じーっと見る。「新明解国語辞典」と書いてある。あれ?

「新解さんのスタンプ、買いました!」

とのこと。わー、すてき。わたしも欲しいよ、使いたいです。はい、すぐに「スタンプショップ」で「新明解国語辞典」と検索する。「三省堂公式 三省堂辞書スタンプ」と出た。必要なコインは50。足りなかったからチャージして、すぐ買った。『三省堂国語辞典』からの言葉もある。「実生活で役に立つことばをピックアップ!」と、ある。この「!」がいいですね。三省堂のガッツを感じる。『新明解国語辞典』からは、「おはようございます」「ありがたみ」「めでたい」「おめでとう」「すき」「ほぼほぼ」「すやすや」「びみょう」「くさ」「がんばる」「しゅっぱつ」「とうちゃく」「ぼんじん」「じっしゃかい」「どうぶつえん」「やばい」「うそ」「くそ」「ぜひ」「だめ」の二十の言葉が選ばれている。素晴らしいです。

まず、ラインスタンプにしようという発想がいい。

p.814「スタンプ」

㊃は八版から出ていて、七版には無い。実際にスタンプにしようと、会議で三省堂の重役のみなさんがお決めになったのですね。うーん、どんな会議で、どんな議論がどんな顔で交わされたのか。ちょっと知りたいです。すごいなー、こういう自由な会社だからこそ、『新明解国語辞典』が存在する。よその会社、よその辞典が、「あー、うちも!」と思ってももう遅い。こういうことは、一番最初にやった会社が格好いい。

わたしは前回、三省堂から全然頼まれていないのに「姥桜」について、原稿を書きたくて書いてしまいました。

はい、今回も全然頼まれていないのですが「じゃあ、第二弾のスタンプは、これでどうですか」という言葉を勝手に選んでみました。『新明解国語辞典』の「恋愛」「読書」「性交」の語釈の良さは、広く知られていますが、ラインスタンプとしては、使い方が難しい。そこをよく考えないといけないです。

p.816「すてき【素敵】」

そうですね。この言葉は、わかりやすいほめ言葉です。言われて怒る人はいない。

p.1578「ヤッホー」

実際には使う場面は、あまりないかもしれない。でも、こんな風に言ってみたい時はある。スタンプで来れば嬉しい。

p.143「うれしい【嬉しい】」

ラインで、いい知らせをもらったら一緒に喜びたいです。そんな時には、このスタンプの出番ですね。よろしくお願いします。

p.517「こうふく【幸福】」

けれど生きていると、いい事ばかりではありません。

p.363「きびしい【厳しい】」
p.292「かなしい【悲しい】」
p.1042「つらい【辛い】」
p.605「つらい【寂しい】」

ああ、大人は大変。がんばっている。そんな大人に必要なスタンプも作って下さい。辞書にしか出来ない役目だ。

p.202「おとな【大人】」
p.1138「どりょく【努力】」
p.365「きぼう【希望】」
p.172「おうえん【応援】」

こんなスタンプが届いたら嬉しい。感動する。

p.331「かんどう【感動】」

 

筆者プロフィール

鈴木マキコ ( すずき・まきこ)

作家・新解さん友の会会長
1963年東京生まれ。上智大学短期大学部英語学科卒業。97年、「夏石鈴子」のペンネームで『バイブを買いに』(角川文庫)を発表。エッセイ集に『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』(以上、角川文庫)『虹色ドロップ』(ポプラ社)、小説に『いらっしゃいませ』『愛情日誌』(以上、角川文庫)『夏の力道山』(筑摩書房)など。短編集『逆襲、にっぽんの明るい奥さま』(小学館文庫)は、盛岡さわや書店主催の「さわベス2017」文庫編1位に選ばれた。近著に小説『おめでたい女』(小学館)。

 

編集部から

『新明解国語辞典』の略称は「新明国」。実際に三省堂社内では長くそのように呼び慣わしています。しかし、1996年に刊行されベストセラーとなった赤瀬川原平さんの『新解さんの謎』(文藝春秋刊)以来、世の中では「新解さん」という呼び名が大きく広まりました。その『新解さんの謎』に「SM君」として登場し、この本の誕生のきっかけとなったのが、鈴木マキコさん。鈴木さんは中学生の時に出会って以来、長く『新明解国語辞典』を引き続け、夏石鈴子として『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』を執筆、また「新解さん友の会」会長としての活動も続け、第八版が出た直後には早速「文春オンライン」に記事を書いてくださいました。読者と版元というそれぞれの立場から、これまでなかなかお話しする機会が持ちづらいことがありましたが、ぜひ一度お話しをうかがいたく、このたびお声掛けし、対談を引き受けていただきました。「新解さん」誕生のきっかけ、その読み方のコツ、楽しみ方、「新解さん友の会」とは何か、赤瀬川原平さんとの出会い等々、3回に分けて対談を掲載いたしました。その後、鈴木さん自身による「新解さん」の解説記事を掲載しております。ひきつづき、どうぞお楽しみください。