日本のレコード会社からリリースされたかつてのLP、今のCDに付随する洋楽ナンバーの歌詞を訳したものを、音楽業界では「対訳」と呼びます。個人的には、“一言一句、対に訳す”を想起させる「対訳」よりも、「訳詞」の呼び名を好みます。
筆者は、大学在学中から四半世紀以上にわたって訳詞に携わり、過去に1万曲以上の洋楽ナンバーを訳して参りました。R&B/ソウル・ミュージック/ラップ・ミュージックが中心ですが、25年余の間には、ロック、ポップス、カントリー、ゴスペル、時にはへヴィ・メタルの訳詞も手がけて参りました。
巷に出回っている「対訳」、さらに言えばネット上で素人さんたちが公開している「和訳」(ナゼだかこの呼称を用いる人が多いのです)には、あからさまな誤訳が少なくありません。また、長きにわたって歌詞の内容が誤解されてきた、あるいは曲解されてきた洋楽ナンバーもあります。そのたびに忸怩たる思いを抱えてきました。
洋楽ナンバーの歌詞は英単語・イディオム・英文法の宝庫です。筆者自身、学校で習ったそれらの数よりも、洋楽ナンバーの歌詞から習ったもの、覚えたものの方が遥かに上回ります。そして、それらは、いつまで経っても頭から離れません。”楽しみながら学ぶ”ことを、無数の洋楽ナンバーの歌詞は教えてくれました。
本連載では、“超”がつくほどの有名な洋楽ナンバーを中心に採り上げ、その曲がヒットした社会情勢を鑑みつつ、キーワードやフレーズから歌詞の奥義を読み取っていきたいと思います、また、それらを使ったセンテンスの一例などを紹介し、みなさんと共に洋楽ナンバーを通して楽しく英語を学びたいと思っております。
洋楽ナンバーの歌詞は、文芸作品や洋画のスクリプトのように長くはありません。短い曲であれば3分足らずですし、長いものでも5~6分程度です。が、その短い歌詞の中には、驚くほど濃密なストーリーが潜んでいるのです。行間を読むようにして、歌詞物語を共にひもといていきましょう。
***ご参考までに***
本連載でご紹介したURL以外の歌詞サイトをご覧になりたい方は、以下の方法を試してみて下さい。
検索ワード:アーティスト名+曲のタイトル(タイトルの一部もしくは歌詞の一部)+lyrics
これで出てきますので、お気に入りの歌詞サイトを見つけてみて下さい。
コラムの概要
ポピュラー・ミュージック史に残る名曲や、特に日本で人気の高い洋楽ナンバーを毎回1曲ずつ採り上げ、時代背景を探る意味でその曲がヒットした年の主な出来事、その曲以外のヒット曲もあわせて紹介します。アーティスト名は原則的に音楽業界で流通している表記を採りました。煩雑さを避けるためもあって、「ザ・~」も割愛しました。アーティスト名の直後にあるカッコ内には、生没年や活動期間などを示しました。全米もしくは全英チャートでの最高順位、その曲がヒットした年(レコーディングされた年と異なることがあります)も添えました。
曲の誕生には様々なエピソードが潜んでいるものです。それを細かく拾い上げてみました。また、歌詞の要旨もその都度まとめましたので、ご参考になさって下さい。