歴史を彩った洋楽ナンバー ~キーワードから読み解く歌物語~

連載開始にあたってのプロローグ

2011年10月12日

日本のレコード会社からリリースされたかつてのLP、今のCDに付随する洋楽ナンバーの歌詞を訳したものを、音楽業界では「対訳」と呼びます。個人的には、“一言一句、対に訳す”を想起させる「対訳」よりも、「訳詞」の呼び名を好みます。

筆者は、大学在学中から四半世紀以上にわたって訳詞に携わり、過去に1万曲以上の洋楽ナンバーを訳して参りました。R&B/ソウル・ミュージック/ラップ・ミュージックが中心ですが、25年余の間には、ロック、ポップス、カントリー、ゴスペル、時にはへヴィ・メタルの訳詞も手がけて参りました。

巷に出回っている「対訳」、さらに言えばネット上で素人さんたちが公開している「和訳」(ナゼだかこの呼称を用いる人が多いのです)には、あからさまな誤訳が少なくありません。また、長きにわたって歌詞の内容が誤解されてきた、あるいは曲解されてきた洋楽ナンバーもあります。そのたびに忸怩たる思いを抱えてきました。

洋楽ナンバーの歌詞は英単語・イディオム・英文法の宝庫です。筆者自身、学校で習ったそれらの数よりも、洋楽ナンバーの歌詞から習ったもの、覚えたものの方が遥かに上回ります。そして、それらは、いつまで経っても頭から離れません。”楽しみながら学ぶ”ことを、無数の洋楽ナンバーの歌詞は教えてくれました。

本連載では、“超”がつくほどの有名な洋楽ナンバーを中心に採り上げ、その曲がヒットした社会情勢を鑑みつつ、キーワードやフレーズから歌詞の奥義を読み取っていきたいと思います、また、それらを使ったセンテンスの一例などを紹介し、みなさんと共に洋楽ナンバーを通して楽しく英語を学びたいと思っております。

洋楽ナンバーの歌詞は、文芸作品や洋画のスクリプトのように長くはありません。短い曲であれば3分足らずですし、長いものでも5~6分程度です。が、その短い歌詞の中には、驚くほど濃密なストーリーが潜んでいるのです。行間を読むようにして、歌詞物語を共にひもといていきましょう。

***ご参考までに***

本連載でご紹介したURL以外の歌詞サイトをご覧になりたい方は、以下の方法を試してみて下さい。

検索ワード:アーティスト名+曲のタイトル(タイトルの一部もしくは歌詞の一部)+lyrics

これで出てきますので、お気に入りの歌詞サイトを見つけてみて下さい。

コラムの概要

ポピュラー・ミュージック史に残る名曲や、特に日本で人気の高い洋楽ナンバーを毎回1曲ずつ採り上げ、時代背景を探る意味でその曲がヒットした年の主な出来事、その曲以外のヒット曲もあわせて紹介します。アーティスト名は原則的に音楽業界で流通している表記を採りました。煩雑さを避けるためもあって、「ザ・~」も割愛しました。アーティスト名の直後にあるカッコ内には、生没年や活動期間などを示しました。全米もしくは全英チャートでの最高順位、その曲がヒットした年(レコーディングされた年と異なることがあります)も添えました。

曲の誕生には様々なエピソードが潜んでいるものです。それを細かく拾い上げてみました。また、歌詞の要旨もその都度まとめましたので、ご参考になさって下さい。

筆者プロフィール

泉山 真奈美 ( いずみやま・まなみ)

1963年青森県生まれ。幼少の頃からFEN(現AFN)を聴いて育つ。鶴見大学英文科在籍中に音楽ライター/訳詞家/翻訳家としてデビュー。洋楽ナンバーの訳詞及び聞き取り、音楽雑誌や語学雑誌への寄稿、TV番組の字幕、映画の字幕監修、絵本の翻訳、CDの解説の傍ら、翻訳学校フェロー・アカデミーの通信講座(マスターコース「訳詞・音楽記事の翻訳」)、通学講座(「リリック英文法」)の講師を務める。著書に『アフリカン・アメリカン スラング辞典〈改訂版〉』、『エボニクスの英語』(共に研究社)、『泉山真奈美の訳詞教室』(DHC出版)、『DROP THE BOMB!!』(ロッキング・オン)など。『ロック・クラシック入門』、『ブラック・ミュージック入門』(共に河出書房新社)にも寄稿。マーヴィン・ゲイの紙ジャケット仕様CD全作品、ジャクソン・ファイヴ及びマイケル・ジャクソンのモータウン所属時の紙ジャケット仕様CD全作品の歌詞の聞き取りと訳詞、英文ライナーノーツの翻訳、書き下ろしライナーノーツを担当。近作はマーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイン・オン 40周年記念盤』での英文ライナーノーツ翻訳、未発表曲の聞き取りと訳詞及び書き下ろしライナーノーツ。

編集部から

ポピュラー・ミュージック史に残る名曲や、特に日本で人気の高い洋楽ナンバーを毎回1曲ずつ採り上げ、時代背景を探る意味でその曲がヒットした年の主な出来事、その曲以外のヒット曲もあわせて紹介します。アーティスト名は原則的に音楽業界で流通している表記を採りました。煩雑さを避けるためもあって、「ザ・~」も割愛しました。アーティスト名の直後にあるカッコ内には、生没年や活動期間などを示しました。全米もしくは全英チャートでの最高順位、その曲がヒットした年(レコーディングされた年と異なることがあります)も添えました。

曲の誕生には様々なエピソードが潜んでいるものです。それを細かく拾い上げてみました。また、歌詞の要旨もその都度まとめましたので、ご参考になさって下さい。