三省堂辞書の歩み

第5回 英和新辞林

筆者:
2012年6月13日

英和新辞林

明治27年(1894)5月27日刊行
F. W. イーストレーキ、岩崎行親、棚橋一郎、中川愛咲、秋保辰三郎共編/本文1265頁/袖珍判(縦90mm)

【英和新辞林】56版(明治38年)

【本文1ページめ】

本書は、オギルビー編、アンナンデール校訂の英語辞典(1883年)を翻訳したもの。ただし、見出しにはウェブスター式の発音記号が施された。編者の岩崎は農学、棚橋は文学、中川は医学、秋保は法学の専門家として名を連ねている。

明治23年(1890)刊行の『英和袖珍新字彙』と同じサイズながら、収録語数が大幅に増えたため、本文は490頁も多く、1.6倍あまりになった。これまでの英和辞典は訳語を羅列してあるだけだったが、番号を付けて意味別に分類した最初の英和辞典である。なお、附録は最初が96頁で、増刷途中に94頁となった。改訂によって「略語解」が10頁から11頁に、「熟語集」が42頁から39頁になり、「不規則動詞表」が最後になるといった掲載順の変化もある。

●最終項目

Zyxomma, n.〔動〕蜻蛉ノ一種.

●「猫」の項目

Cat, n. ①猫.②〔航〕錨ヲ錨拮ニ引上グル轆轤.③双鼎[六脚ヲ具フル器物].──,v.t.〔航〕錨拮ニ引上グル[錨ヲ].

●「犬」の項目

Dog, n. ①狗,②卑劣ノ小人.──,v.t. 附纏フ.

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。