日本の漢字辞典には、部首索引、音訓索引、総画索引の三種が準備されているのが一般的である。たとえば、『新明解現代漢和辞典』(三省堂 2012初版)には、巻頭にこの三種が準備されている。横組みの印刷など、印刷の仕方によっては、後二者は巻末に置かれることもある。小文では、三省堂の、この辞典を例に説明してみることにする。この文章をお読み下さっている方々も、試みにお手元に、出版社はどこでも良いので、漢和辞典があれば、実際に経験してみてほしい。筆者は、手元の辞書の、訓索引と部首索引とを併用することが多い。部首は214種しかないので、まず探すと言うときには便利だからである。総画索引と音索引は極力避ける。これは、漢字辞典をできる限り、早くスピーディに使うためである。
総画索引は、個々の漢字の部首も読みもはっきりしない場合に用いられる。たとえば、「龗」などについてみれば、読みは不分明であっても、部首が「龍」であると見当づけることができれば、たいへん楽に、辞書の中でこの字にたどり着くことができる。ましてや、画数を数えて33画の該当箇所を「総画索引」の中から見つけ出し、辞書中の該当箇所にたどり着くといった方法をとることはまずないであろう。
簡単な漢字でも部首の見当がつかない場合は、やむを得ず総画索引に頼ることになる。たとえば、「褒」などは、「衣」であることに気づけば、最初から部首索引に依るのである。しかし、「衣」であることに気づかない場合は、何回か、また、何通りかの検索方法を試みてしまうのである。この字は、「衣」が二つの部分に分解されているため、慣れない内は、「衣」であることに気づかず、探しあぐねてしまう場合もあるが、最上部の「なべぶた」に気づけば、比較的容易に「衣」にたどり着ける。もし、読みがホウであることが分かっていれば、さらに簡単であるが、この字の場合は、ホウの音を持つ。音訓索引には、ホウ音の漢字が150字以上ある。その中から探すのは、決して楽ではない。総画数を数えて該当の箇所を見ることを考えなければならない。ところが、索引には誤植のある場合もある。このためかなりの時間を要してしまう。そしてようようの思いで該当字にたどり着くのである。あるいは、この字の訓が「ほめる」であることが分かれば、さらに検索が楽になるのである。この字の場合、同訓の字は、10字程度である。この字の訓が「ほめる」であることを知れば、検索が、大変、楽になるのであるが、常にと言って良い程、音による検索をする人もいる。それでは、総画索引を使っているのと同じである。
漢字辞典では、なるべく効率よく漢字検索を行わないと、漢字辞典を使う意欲が薄れてしまうこともなきにしもあらずである。このことは、訓による検索をしてみるとよく分かるであろう。それは該当する漢字が非常に少なくなるからである。そこで、総画索引を使うことを極力やめ、また、音索引を使うこともできる限り避けることが、効率よく漢字辞典を使う、手始めとなる。
実は、部首索引を使っていても、同様のことはしばしば起きる。同じ部首の漢字で、画数が同じである漢字は意外に多い。その中から探すのは、やはり大変なのである。たとえば、部首が大変分かりやすいものの一つである、「さんずい」の字の内、総画数が11画の漢字は、60字程ある。此を総画索引で探すとなるとなかなか大変である。また辞典の該当画数の部分を見ても、本文11ページ程の分量があるのである。ともかく、辞典を見ても漢字を探せないと言うこともでてくるのである。これは、漢字検索に際しての、索引の選択が悪いからである。この場合の手っ取り早い解決法は、辞書に準備されているすべての索引を、何回となく試してみることである。こうすることによって、場合場合の索引選択についての、カンが生まれてきて、手早く検索することが可能となる。