(第1回からつづく)
「勺」「錘」「銑」「脹」「匁」
常用漢字から削除される「勺」「錘」「銑」「脹」「匁」の5字は、そのままの字体で、人名用漢字に追加されることが予想されます。これら5字は、戸籍法第50条で言う「常用平易」な漢字として認められてきたものですから、新しい常用漢字表が告示されたからといって、ある日、突然「常用平易」でなくなってしまうとは考えにくいからです。つまり、これまでどおり、「勺」「錘」「銑」「脹」「匁」は出生届に書いてOKとなるでしょう。
人名用漢字から「昇格」する129字
常用漢字表に新たに追加される196字のうち、挨曖宛嵐畏椅茨唄媛艶旺岡臆俺牙瓦崖蓋柿葛釜鎌韓玩伎亀畿臼巾僅錦串窟熊詣稽隙桁拳鍵舷虎勾梗駒頃沙采塞埼柵刹拶鹿袖蹴憧拭芯腎須裾凄醒戚煎羨詮膳遡曽爽捉遜汰堆戴誰旦酎貼椎爪鶴諦塡藤瞳栃頓那奈梨謎鍋匂虹捻箸汎阪斑眉肘阜蔽餅蜂貌頰睦勃昧枕蜜冥冶弥闇湧妖藍璃侶瞭瑠呂麓脇(字体は第1回を参照)の129字は、人名用漢字がそのまま常用漢字になります。つまり、これら129字は、人名用漢字からは削除されますが、今後は常用漢字として子供の名づけに使えるということになります。なお、129字のうち「曽」については、新字の「曽」は常用漢字となるものの、旧字の「曾」は人名用漢字のままで、継続して子供の名づけに使える予定です。
「痩」と「瘦」
微妙な問題を含んでいるのが「痩」です。現在、人名用漢字に収録されているのは旧字の「瘦」なのですが、今回、新たに常用漢字に追加されるのは新字の「痩」なのです。現時点ではっきり決まっているわけではありませんが、新字の「痩」と旧字の「瘦」に関しては、新字の「痩」は常用漢字として、旧字の「瘦」は引き続き人名用漢字として、今後は両方とも子供の名づけに使えることになると思われます。
人名用漢字になかった66字
常用漢字表に新たに追加される196字のうち、残りの66字、すなわち萎彙咽淫鬱怨苛楷潰諧骸顎毀嗅惧憬股錮喉乞傲痕挫斬恣摯餌𠮟嫉腫呪羞尻脊腺箋狙踪唾綻緻嘲捗溺妬賭貪丼罵剝氾膝訃璧蔑哺麺喩瘍沃拉辣慄賂弄籠(字体は第1回を参照)は、これまで人名用漢字に含まれていなかった漢字です。これら66字は、今回、新たに常用漢字表に追加されることで、子供の名づけに使えるようになります。でも、「怨」だの「呪」だの「妬」だの、子供の名前にあまりふさわしくなさそうな漢字ばかり並んでますね。たとえば子供に「呪怨」と命名したとして、その出生届は果たして役場の窓口で受理されるでしょうか?
(第3回「悪魔ちゃん命名事件」につづく)