世界のラン大図鑑

定価
8,580円
(本体 7,800円+税10%)
判型
A4変型判
カラー
オールカラー
ページ数
656ページ
ISBN
978-4-385-16246-1

世界中のランの愛好家・研究者に贈る、美しいランの大図鑑!

749属2万6000種からなるラン科の魅力を1冊に凝縮!
オールカラー656ページ、美しいランの大図鑑!

マーク・チェイス、マーテン・クリステンフース、トム・ミレンダ 著/横田昌嗣 日本語版監修/白木耀子、竹村奈央、成広あき、石黒千秋 訳

  • 野生ラン600種を厳選、それぞれどのような環境に生育し、どのような動物によって花粉が媒介されるのか、ランの花の特徴と関連づけて詳説。
  • 発見されたときの経緯やかかわりのある人々に関する蘊蓄、花が美しいがゆえに採集が進み絶滅の危機に瀕している状況などにも言及。
  • 第一線で活躍する分子系統学の研究者たちによる執筆、最新の分類系に従った記述。

特長

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さらに詳しい内容をご紹介

日本語版監修にあたって

横田昌嗣

 ラン科植物は、古くから人々の関心を集めて来た。虫眼鏡で拡大しないと花と気付かないような小さな花が思いのほか巧妙な作りになっていたり、カトレヤのように1輪が人の顔ほどの大きさがあり見るも艶やかな花があったりと、実に多様である。地球上に存在するすべての被子植物のうち、ラン科は種数では1割を占める大きなグループである。そのため、ラン科植物に関しては、数多くの書籍が発行されている。各国の図鑑や様々な写真集などの他、ラン科植物が図柄になった切手を集めた写真集、ラン科植物の研究に関わった人たちだけを取り扱った伝記集、ラン科の属名の由来だけを解説した本など、実にユニークな本があるのも、ラン科への関心の現れだと思われる。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンもラン科には多大な関心を寄せており、進化論を発表した後も、当時なかなか受け入れられなかった進化論を補強するためにラン科の花の仕組みについて研究を続け、「ランの受精」という本を書いている。この本は、植物の花と花粉を運ぶ昆虫との密接な関わりについての研究の先駆けだろう。

 ラン科は世界中に分布し、形態が多様な上、種数も膨大なので、ラン科全体を深く研究することは非常に難しい。そのため、ラン科の進化については様々な学説が提唱され、混乱が続いていたが、近年急速に発展してきた分子系統学的な研究により、ラン科ばかりでなく被子植物全体の進化の道筋がようやく明らかになってきた。本書の著者の1人であるマーク・チェイス博士は、ラン科の研究で学位を取った後、分子系統学的な研究を大々的に進めており、近年広く受け入れられている分類系を提案している被子植物系統グループAPG(Angiosperm Phylogeny Group)の中心的なメンバーである。マーテン・クリステンフース博士もAPGのメンバーである他、シダ植物の分類系に関する重要な論文の著者でもある。トム・ミレンダ氏は熱心なラン栽培家で、数々の植物園で9000種以上のランの栽培に携わり、アメリカ・イギリス・オランダなどのラン協会誌に数多くの記事を投稿している。

 本書は、一般的なラン科植物の図鑑ではなく、野生ランがどのような環境に生育し、どのような動物によって花粉が媒介されるのかが、ランの花の特徴と関連づけられて解説されている。ランの種類が発見されたときの経緯や関わりのある人々に関する蘊蓄や、花が美しいが故に採集が進んで絶滅の危機に瀕している状況などが語られている。著者たちが分子系統学の研究者であるため、最新のラン科の分類系に従って記述されており、オンシディウム類やバンダ類など、最近属の名称がたびたび変更されたものについては経緯の解説がある。残念ながら日本のランについての情報が十分には欧米に伝わっていないため、記述が不十分な場合は、適宜訳註などで情報を付け加えた。本書は、ラン科植物に関する最新の知識を知る上では、格好の参考書になりうると期待している。

著者・日本語版監修者プロフィール

著者

マーク・チェイス(MARK CHASE)

イギリス王立植物園上級研究員。ロンドン大学School of Biological Sciencesと西オーストラリア大学植物生物学部で特任教授を務める。ロンドン・リンネ協会フェロー、ロンドン王立協会フェロー。Genera Orchidacearumシリーズの共著者。植物科学に関する論文の寄稿数は500を超える。

マーテン・クリステンフース(MAARTEN CHRISTENHUSZ)

博士。ヘルシンキのフィンランド自然史博物館、ロンドン自然史博物館、イギリス王立植物園の植物学顧問。学術専門誌Phytotaxaを創刊。Botanical Journal of the Linnean Societyの副編集長を務める。著書は学術書と一般書を合わせて100冊にのぼる。

トム・ミレンダ(TOM MIRENDA)

ワシントンのスミソニアン協会でランのコレクション・スペシャリストを務める。アメリカ内外でランの生態や保護に関する講演を多数行うかたわら、アメリカ蘭協会の機関誌Orchidsでコラムを執筆中。

日本語版監修

横田昌嗣(よこた まさつぐ)

1955年滋賀県生まれ。広島大学大学院理学研究科博士後期課程中退。理学博士(ラン科植物の細胞遺伝学)。琉球大学理学部生物学科助手を経て、現在は理学部海洋自然科学科教授。琉球列島の維管束植物の分類と進化について研究しており、自然保護にも関わっている。主な共著書に『園芸植物大事典 第5巻 ラン科』(小学館)、『日本のラン』(日本放送出版協会)、『朝日百科 植物の世界 ラン科』(朝日新聞社)、『山溪カラー名鑑 蘭』(山と渓谷社)Flora of Japan 4b Orchidaceae(Kodansha Scientific)などがある。