辞書・ことば企画:10分でわかる「モラル」
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10分でわかる「モラル」の意味と使い方

【どういう意味?】

「道徳」「倫理」「良識」のことをいいます。

【もう少し詳しく教えて】

モラル(moral)は、「道徳・道義的な」「教訓」などを意味する英語から来ています。現実社会や実人生に対する態度や気持ちのありようをいい、法的根拠による拘束力をもたないもので、宗教のように超越者との関係においてではなく、人間相互の関係において「善悪の判断を伴う感性」のことをいいます。モラルというときは、特に「現実生活に即した道徳」という点がポイントです。

【どんな時に登場する言葉?】

どこにでも登場します。ビジネス・法律・政治などの分野で、最近とみに聞かれるのは、「モラルハザード」という言い方でしょう。「モラルハラスメント」、「情報モラル」といった使われ方も多くみられます。エッセイや小説などに「私のモラルに反する」といった表現もよく見られます。

【どんな経緯でこの語を使うように?】

モラルは早くから使われてきたカタカナ語です。漢字で「道徳」と書くと、中国の思想家である老子の思想をさす場合もあり、また、第二次世界大戦前の初等教育課程における「修身」の流れをくむ、戦後の「道徳」教育をさすこともあります。「道徳」という漢字がもっている、そうしたニュアンスを削ぎ落とした言葉として、カタカナ語の「モラル」が使われるようです。

【モラルの使い方を実例で教えて!】

○○のモラルがどうした?
比較的日常的な表現です。「○○としての」という条件をくわえて、例えば、「科学者としてのモラルに欠ける」とか、「国際社会に生きる日本人としてのモラルが求められる」、「企業経営者としてのモラルがある」、「学生としてのモラルの問題」などのように使われます。「個人のモラル」「研究者のモラル」「英国のモラル」という言い方もされます。
モラルハザード(moral hazard)
この言葉は、カタカナ語と英語で意味にずれがあります。日本では英語のモラル(moral)とハザード(hazard)をそれぞれに直訳して「モラルの危機」、つまり「倫理観の欠如」「道徳の喪失」という意味で用いられます。つまり、カタカナ語のモラルハザードは個人的倫理観に帰するものといえます。
しかし、英語でいうモラルハザード(moral hazard)は、保険用語で「保険をかけていることによって、かえって故意や不注意から起こす事故の危険性」をいいます。転じて、経済や政治の分野でも「危険回避の仕組みを整備することによって、かえって注意が散漫になり、事故率が上がり、規律が損なわれること」をさします。これはセーフティーネットというシステムにおける二律背反なので、モラルで解決できる問題ではありません。
モラリスト(moralist)
一般に、道徳家・倫理主義者などをさします。口語では、「モラルを大事にする人」「モラルのある人」「良識家」程度の意味で使われます。「彼って実はモラリストだったのね」というときは、「身持ちのかたい人」ということかもしれません。
狭義には、16〜18世紀にかけてフランスで「モラル」という概念を随筆に著したモンテーニュやラ=ロシュフーコーなど思索家の一群をさし、彼らの流れをくむカミュやジードといった作家、20世紀の日本における森有正らを含めることもあります。

【言い換えたい場合は?】

「道徳」「倫理」が最も一般的なものです。モラルハザードのような熟語は、専門用語としてのモラルハザードなのか、カタカナ語としてのモラルハザードなのか気をつけて言い換える必要があります。後者は「倫理観の崩壊」や「道徳の欠如」などに言い換えられます。情報モラルは「情報倫理」、モラルハラスメントは精神医療分野の用語で「精神的虐待」と言い換えられます。

【雑学・うんちく・トリビアを教えて!】

モラル(moral)とモラール(morale)モラル(moral)は英語、モラール(morale)はフランス語です。末尾に「e」が付くか付かないかの違いのようですが、英語やカタカナ語に輸入されたフランス語のモラール(morale)は、困難に立ち向かう「士気」「やる気」を意味する語として扱われます。企業や軍隊など組織や集団で、「社員のモラール」「モラールの向上」のような使われ方をします。日本で危機に瀕しているのは、こちらの方だったりして……?

不道徳にもいろいろあって英語のモラル(moral)に否定をあらわす接頭語(im-)がつくと、インモラル(immoral)という言葉になります。「不道徳」「道徳的ではない」という意味ですが、前述のモラルハザードは、火災保険をかけてから自宅に火をつけるような行為を「不道徳」としたことに由来します。インモラルという言葉は、「背徳的な」「淫らな」というニュアンスが強い「不道徳」です。

モラルハザード、再び国立国語研究所の「『外来語』言い換え提案」によると、モラルハザードは「倫理崩壊」「倫理の欠如」とされています。また、2003年掲載の情報によると、モラルハザードの理解度は国民の全体の25%未満です。

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