10分でわかるカタカナ語

第47回 ベンチャー

2006年5月29日

どういう意味?

「起業」「新規事業」をさします。また、「ベンチャー企業」の略称として用いられることもあります。

もう少し詳しく教えて

ベンチャーは、「投機的事業」「投資対象の新規開発事業」「リスクを伴う試み」などを意味する英語のベンチャー(venture)からきています。日本ではベンチャーというと、特に「ベンチャー企業」の意味で、大企業が進出していない領域で、高度な専門性と創意工夫を凝らして新しい事業を起こす、知識集約型の小企業をさすことが一般的です。

どんな時に登場する言葉?

ビジネスや経営、マーケティング、金融(投資)などの分野で主に用いられます。最近では、産学連携構想によって、官公庁や、大学・研究機関でも用いられます。

どんな経緯でこの語を使うように?

アメリカにおける研究・デザイン開発型小企業の経営概念をもとにして、日本に入ってきた言葉です。1970年に開催された第2回ボストンカレッジ・マネジメント・セミナーに参加した当時通産省の佃近雄のレポートに「ベンチャービジネス」という表現が用いられたのが最初とされ、翌1971年に日本経済新聞社から刊行された、清成忠男・中村秀一郎・平尾光司共著による『ベンチャービジネス:頭脳を売る小さな大企業』という書籍によって、経営学分野から一般社会に浸透していきました。

今日なにをもって「ベンチャー」「ベンチャービジネス」「ベンチャー企業」とするかについては、専門家や研究者によって細かな点で差異がみられます。一方、巷では、これら3語が、ほとんど同義語として用いられることも少なくありません。

ベンチャーの使い方を実例で教えて!

「ベンチャービジネス」は和製英語。

ベンチャービジネスは前述のような過程で『ベンチャー・ビジネス:頭脳を売る小さな大企業』のなかで具体的に定義づけられたため、清成忠男(当時法政大学教授)らの造語とされています。英語では単にベンチャー(venture)と表現され、起業家はベンチャラー(venturer)といいます。

ベンチャー企業

単に「ベンチャー」ということもあります。ベンチャー企業は大別して 2 種類あります。ひとつは、日本でよく使われる意味で、「新技術や高度な知識を軸に、大企業では実施しにくい創造的・革新的な経営を展開する小企業」をさします。他方は「ベンチャーキャピタルに出資されている企業」です。

ベンチャーキャピタル(venture capital)

有望なベンチャービジネスに対して、株式の取得などによって資本を提供する企業のことです。またベンチャー企業に「提供される資本」を意味します。「VC」と略称されることも多い言葉です。

大学発ベンチャー

文科省が推進する産学連携構想は、学術研究機関から発せられる新しい産業の勃興を目指すもので、2004年4月の国立大学独立行政法人化に伴い、理工系のみならず人文系でも急速に対応が進められています。「大学発ベンチャー」とは、大学の教員や研究員または学生が学内での研究成果を元に事業を起こすことをさし、個人起業の場合と、事業主への技術移転の場合があります。なお過去には、フェライトコアの生産を目的に1935年に設立された東京電気化学工業株式会社(現在のTDK)があり、これなどは今風に言えばまさに「東工大発ベンチャー」でした。

ネットベンチャー

インターネットベンチャーともいいます。インターネット関係の新規事業または起業家をさします。検索サービスの Yahoo!や Google なども、もともとはベンチャーとしてスタートしました。

言い換えたい場合は?

ベンチャーを漢字で表現すると「起業」「起業家」とするのが一般的なようです。ただし、ベンチャー企業の意味の場合は「新興中小企業」「専門知識集約型小企業」、あるいは「新機軸の産業」「投機の対象としての新事業」「リスキーな企業活動」など、その状況に応じた説明を加えた表現をとった方が分かりやすいかもしれません。またベンチャービジネスは「新規事業」「専門知識集約型事業」、ベンチャーキャピタルは「起業投資」や「起業投資会社」、ベンチャー支援は「起業支援」などというように表現できます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

もともとはアドベンチャー(adventure) 英語のベンチャー(venture)は、アドベンチャー(adventure)の頭音消失異形語として、1430年頃から用いられるようになったとされています。もともと英語では「冒険」「危険にさらす」「敢行する」などを意味する言葉で、どちらかというと「生命や財産・社会的地位などを失う危険を冒して行う」行為、つまり「賭け」「投機」の意味合いが強く、結果の予測が難しい冒険的行為をさします。ベンチャービジネスはリスキーですが、起業の際にはそのリスクをいかに少なくするかが重要です。なお、一般的な意味で「冒険」というときは、英語でもアドベンチャー(adventure)というのがふつうです。

「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」 英語では“Nothing ventured, nothing won(または、gained)”となります。

ベンチャーの理解度 国立国語学研究所の2003年掲載の情報によると、「ベンチャー」の理解度は国民全体の25%以上50%未満です。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

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