今回は感情表現について、これまでと同じく、G(2007年第4版)、W(2007年第2版)、O(2008年発行)の3つの辞書の記述と比較しながら解説したいと思います。
感情表現というと、代表的なのは驚いたときの各種の表現だと思います。ただ、驚きにもいろいろな驚きがあり、その種類によって使われる語句が異なるということに注意が必要です。共通するのは意外なこと、予想していなかったことが起こったときの驚きで、そのとき用いられる代表例がwellです。次は本辞典の記述です。
1 〈驚いて〉あらあら, えっ!, まあ! :《ぶつかった相手が旧友とわかって》 “Excuse me. Are you OK?” “I’m not OK! . . . John? Is that you?” “Mary? Well, well! I didn’t think I’d see you here!” 「すみません, 大丈夫ですか?」「大丈夫じゃないわよ! …ジョン? ジョンなの?」「メアリーか? まさか! こんなところで会うだなんて!」 / Well, well, it’s snowing! I never thought we’d ever have snow here in September! まあ! 雪が降ってる! 9月にここで雪が降るなんて思ってもみなかった.
予想外ということは同じwellの語義2にも通じることです。
2 〈慌てて〉えっ, まさか(◆下降調で): 《試験終了のベルを聞いて》 Well, well, the time is up. えっ! 時間だ.
また、一般にはあまり区別されませんが、驚きにはネガティブなものとポジティブなものがあります。たとえば、いやなことの驚きに使われるものとして、(oh) (my) Godがあります。本辞典では次のように説明しています。
1 〈驚いて〉何てことだ:Oh God, how embarrassing! 何てことだ, ああ恥ずかしい! / God, what a ridiculous thing to do! ああ, 何てばかなことをしたんだ!
ここではいけないことをしてしまったという反省の気持ちが込められています。次のoh dearの例ではよくないこと、いやなことが起こったときの反応を表しています。
1 〈驚いて〉あらまあ, どうしましょう Oh dear, it’s started to rain and I haven’t got an umbrella. あらまあ, 雨が降ってきたけれど, 傘がないわ / 《車の異常な音を聞いて》 Oh dear, something seems to have gone wrong? おや, どこか故障したのかな?
一方、うれしさなどを含意するポジティブな驚きもあります。たとえば、Great! とかTerrific! などがその代表です。
1 〈相手の話に感嘆して〉 (それは)すごい, すばらしいことですね:“Helen has come top of her class again!” “That’s great!” 「ヘレンがまたクラスでトップになったんだよ!」「それはすごい!」 / “I’ve bought a convertible car.” “Great! We can go driving to the seaside.” 「オープンカーを買ったんだ」「まあ, すごい! 海へドライブに行けるわね」.
2 〈すごさに驚いて〉すごいね:“She looks nice tonight.” “Yeah. Terrific!” 「今夜の彼女かわいいね」「うん. すてきだね」 / “He earns two million yen a month, I heard.” “Wow, terrific!” 「彼1か月に200万円稼ぐんだって」「へえ, すごい!」.
いずれも相手が言ったことを肯定的にとらえていることを示しています。G、W、Oの辞書には特にそのような記述はありませんが、「すばらしい」という訳語からもよいことに対しての感情表現であることがわかります。
大事なことは、単に「驚き」を表すと言ってもいろいろな「驚き」があり、相互に置き換えることができないことが多いということです。上にあげた例でもそれぞれの語句を他の語句と単に言い換えることはできません。言い換えることができたとしても用いることのできる文脈が変わります。