ちはやぶる神代(かみよ)もきかず竜田川(たつたがは)からくれなゐに水くくるとは
出典
伊勢・一〇六、古今・秋下・二九四・在原業平(ありはらのなりひら) / 百人一首
訳
(ちはやぶる)不思議なことが多かった神代の昔にも聞いたことがない。竜田川で、あざやかな紅色に水をくくり染めにしているとは。
技法
「ちはやぶる」は、「神」の枕詞。二句切れ。
参考
『古今和歌集』によれば、屏風に描かれた竜田川に紅葉が流れる景色を題にして詠んだ歌。「からくれなゐ」は、舶来の紅で、あざやかな紅色。「くくる」は、くくり染め(=しぼり染め)にすること。川水に浮かぶ紅葉を、あざやかな紅のくくり染めに見立て、その美しさをたたえたのである。古くは、「水くくる」を「水潜(くく)る」と解していたが、いまは、くくり染めにすると解するのが一般的である。『伊勢物語』では、竜田川に出かけていって実景を詠んだ歌となっている。
(『三省堂 全訳読解古語辞典』「ちはやぶる…」)
◆参考情報
このたびは、最近、マンガ『ちはやふる』などでも広く知られている一首を取り上げました。
和歌では、必ずしも自分の実体験に基づいて詠む必要はなく、この歌の解説にあるように、絵を見たり、風景を想像したりして詠むことが多くありました。