今回は、「構文別」の中の「否定構文」です。
2 否定構文
「否定構文」は、日本語と英語とでは大きく違います。日本語では、動詞に否定詞が付けて動作や状態を否定するのですが、英語では、主語や補語や目的語を否定して文全体を否定します。
例えば、日本語では、「~しない」とか、「~できない」とか、「~ではない」などといって動作や状態を否定しますが、英語では、When no metal presents, ……のように主語を否定して、「金属がない時には、……」とか、A ballistic missile has no wings. のように目的語を否定して、「弾道ミサイルには翼がない」などというように、文全体を否定します。
こうしたことをふまえ、「トミイ方式」では否定構文を、次のような9個の「小分類」に分類しています。その9個の「小分類」をそれぞれ「細分類」し、それをさらに「細々分類」しています。この表では、「細分類」を(a)、(b)、(c)、……で表わし、「細々分類」を(i)、(ii)、(iii)、……で表わしています。1個所、「極細分類」まで分類されているところがありますが、それは(1)、(2)、(3)、……で表わしてあります。
この「否定構文」では、今までとは違い、「トミイ方式」が採っている「細々分類」までのすべての項目を列記し、読者のみなさんに幅広い問題意識を提示してみたいと思います。「トミイ方式」では、すでに、これらすべての項目の中に英例文が入れられています。それは、今までに何回も繰り返し述べて来たように、「トミイ方式」というのは、先に分類をして、その中に収集した英例文を入れていくのではなく、収集したすべての否定構文の英例文を、たくさん集まったある時点で分類し、その中に英例文を入れていくわけですから、当然のことです。
紙幅の関係で、それぞれについて説明をすることも、例を挙げることもできませんので、代表的な項目についてのみ説明をしてみます。もし、この否定構文についてご関心またはご興味がありましたら、「科学技術英語構文辞典」(三省堂)をご参照ください。
ご自分でこの構文をゼロから攻略したいと思うならば、片っ端から否定語句を使った構文を収集し、ある時点で分類するという方法が良いと思いますが、それには時間がかかります。そうではなく、すぐに手っ取り早く否定構文を実務の翻訳にうまく活用できるようになりたいというのであるならば、筆者がすでに作成した以下の「分類表」を効率よく使い、集めたその時点でその「分類表」の中に入れていく方法を採ると、手っ取り早く、否定構文を攻略できると思います。
1 否定詞の種類
(a) 直接否定詞
(b) 準否定詞
(c) 意味上の否定詞
(d) 複合否定語句
(i) 否定詞を含まない否定語句
(ii) 否定詞を含む否定語句
(e) 接頭辞・接尾辞
(f) 否定代名詞
2 否定詞の位置
(a) no
(i) 主語に no を付ける場合
(ii) 目的語に no を付ける場合
(b) few
注:これは、英語では「数」として扱われる名詞に使う「否定詞」です。
(i) 主語に few を付ける場合
(ii) 目的語に few を付ける場合
(c) little
注:これは、英語では「量」として扱われる名詞に使う「否定詞」です。
(i) 主語に little を付ける場合
(ii) 目的語に little を付ける場合
(d) little or no
(i) 主語に little or no を付ける場合
(ii) 目的語に little or no を付ける場合
3 二重否定
(a) 二つの否定詞の組み合わせ
(b) 否定詞と否定を表す接頭辞を付けた形容詞との組み合わせ
(i) not unadvisable の例
(ii) not incompatible の例
(iii) not uncommon の例
(iv) not impossible の例
(v) not unreasonable の例
(vi) not unusual の例
(vii) no inexpensive
(viii) no unfavorable
4 部分否定
(a) not all
(b) not every
(c) not always
5 間接否定詞
注:これらのほとんどのものは、否定詞と考えられる言葉を使われていませんが、日本語になると「否定詞」または「否定語句」となり、文全体を否定構文にしてしまう語句です。
(a) hardly
(b) scarecely
(c) seldom
(d) rarely
(e) rather than
注:一般には、「~というよりもむしろ~」というように肯定詞と思われていますが、いろいろ例文を集めてみると、「~ではなく~」というようにあたかも否定詞であるかのように使われていることが非常に多いです。
(f) free from
(i) be動詞 free from ____
(ii) …… free from ____
(g) only
注:一般には、「~のみ~である」というように肯定詞と思われていますが、いろいろ例文を集めてみると、「~しか~ではない」というようにあたかも否定詞であるかのように使われていることが非常に多いです。
(h) regardless of
(i) 名詞を伴った場合
(ii) 関係副詞を伴った場合
(i) without
(j) without ____ing …….
注:この中には、without —- ____ing …….のように —- を入れることによって、「—- が …… を ____ することなく」というように意味上の主語を入れた否定表現ができることがわかります。
(k) no longer
(i) 動詞を否定する場合
(ii) 形容詞を否定する場合
(l) not necessarily
(i) 動詞を否定する場合
(ii) 形容詞を否定する場合
(m) unless
(n) less
(i) 名詞を修飾する場合
(ii) 形容詞(副詞)を修飾する場合
(o) -less
(p) in no case (event)
注:日本語で、「いかなる場合も、~してはいけない」という場合、初心者は、In any case, do not ~(~してはいけない)と書いてしまいます。しかし、ネイティブの書き方は、そうではなく、In no case ~(~しなければいけない)と書きます。さらに面倒なことには、case の後ろにカンマを付けず、主文の主語と述部動詞を倒置させます。たくさんの例をご自分で集めてみると、よく理解できるようになります。後から出てくる、8の(c)の(i)がそれです。
(i) 文頭に使う場合
(ii) 文中に使う場合
(q) by no means
6 否定の慣用表現
(a) too ____ to ……
(i) 形容詞と共に
(1) too ____ to ……
(2) too ____ for ,,,,,, to ……
(ii) 副詞と共に
(b) not ____ but ……
(c) not only ____ , but (also) ……
(d) cannot ____ too ……
(i) be 動詞を伴った場合
(ii) 一般動詞を伴った場合
(e) not ____ till (until)……
(f) not ____ because ……
(i) 理由を表す場合
(ii) 条件を表す場合
(g) no ____ because ……
(h) neither ____ nor ……
(i) 名詞を否定する場合
(ii) 動詞を否定する場合
(iii) その他の語句を否定する場合
(i) no ____ nor ……
(j) not ____ either
(k) no more than と not more than、no less than と not less than
(l) no matter+ 関係詞 ____
(i) no matter how
(ii) no matter what
(iii) no matter which
(iv) no matter where
(v) no matter whose
(iv) no matter whether
7 There is ____構文
(a) There is no ___
(b) There is little ____
(c) There is little or no ____
8 否定倒置構文
(a) neitherの場合
(b) nor の場合
(i) no(または、not)___ nor …… が一つの文の場合
(ii) 前の否定文を受けて Nor …… という形の場合
(c) no の場合
(i) in no case の例
(ii) in no event の例
(d) seldom の場合
9 否定代名詞
(a) nothing
(i) 主語として用いられ場合
(ii) 補語や目的語として用いられた場合
(b) nobody
(c) none
(i) ____ が複数名詞の場合
(ii) ____ が単数名詞の場合
(iii) none が複数名詞の場合
(iv) none が単数名詞の場合
(d) neither
次回は、「倒置構文」と「強意構文」です。