どういう意味?
「根拠」や「証拠」のことです。
もう少し詳しく教えて
エビデンスは英語の evidence を由来とするカタカナ語です。英語の evidence には主に(1)根拠・証拠(2)証言などの意味がありますが、日本語のエビデンスはおおよそ(1)の意味で使われます。なお evidence の語源は、ラテン語の evidentia です。 evidentia は「明白であること」や「根拠」を意味します。
どんな時に登場する言葉?
広い分野で使われる言葉です。例えばビジネス一般では「何かを裏付けるための具体的な情報・資料」や「言質(げんち:証拠になる約束の言葉)」などを指すことが多いようです。また医療の分野では「その治療法が良いといえる証拠」のことをエビデンスと言います。また近年では政治の分野でもエビデンスの登場機会が増えました。「政策の立案・評価のための(科学的)根拠」を指すことが多いようです。このほか様々な業界で、エビデンスが登場します。
どんな経緯でこの語を使うように?
一般社会でこの言葉が普及した時期は、ゼロ年代(2000年〜2009年)のことでした。例えば新聞でこの言葉が登場する記事の数は、ゼロ年代後半に増えています(注:朝日・読売・毎日・産経調べ)。また『現代用語の基礎知識』(自由国民社)では、2007年版以降にエビデンスの項目が登場しました。エビデンスの登場機会が増えた背景には、医療分野で EBM (evidence-based medicine)とよばれる新概念が注目されたことが関係しています。詳細は後述します。
エビデンスの使い方を実例で教えて!
エビデンスがない、エビデンスがある
根拠・証拠の有無を語る場合に「エビデンスがある」「エビデンスがない」などと表現をすることが可能です。また証拠・根拠に立脚することを「エビデンスに基づく」と表現することもできます。このほか「エビデンスを得る」「エビデンスを収集する」などの言い方もあります。
EBM(根拠に基づく医療)
1990年代以降の医療界で、 EBM(evidence-based medicine:エビデンス・ベースド・メディシン)とよばれる新概念が定着しました。これは「病気にかかった人に実際に使って、その効果が確かめられている医療」のことです(参考:国立国語研究所「『病院の言葉』を分かりやすくする提言」)。従前の医療がともすれば理論先行になりがちだったことの反省から誕生した概念でした。概念が誕生したのが1990年代初頭のこと。日本の医療界で注目されるようになったのは1990年代中盤のことです。以来、一般社会でもエビデンスというカタカナ語への注目度が高まりました。
そのほかの業界では?
IT 業界では「開発したシステムがうまく動作しているかどうかを示すための証拠資料」を、エビデンスとよぶ習慣があります。また銀行業界では、融資の可否を判断するための資料(住民票、源泉徴収票など)などをエビデンスとよんでいます。
言い換えたい場合は?
多くの場合、エビデンスを言い換える場合は「根拠・証拠・拠り所・裏付け」などの言葉が使えます。根拠・証拠の実態が「資料や情報」である場合「根拠となる資料」「証拠となる情報」などの言い換えも可能です。いっぽう医療分野におけるエビデンスの場合、単純に「根拠」と言い換えるだけでは「背景となる EBM の考え方」が伝わりにくいかもしれません。少々面倒ではありますが「その治療法が良いといえる証拠」などの文章表現を試してみてください。
雑学・うんちく・トリビアを教えて!
理解率はわずか8.5% 国立国語研究所が2009年にまとめた「『病院の言葉』を分かりやすくする提言」によると、エビデンスの認知率(言葉を見聞きした人の割合)は23.6%。理解率(意味を知る人の割合)に至っては、わずか8.5%しか存在しませんでした。エビデンスは「適切な言い換え」や「理解率の向上」が求められるカタカナ語のひとつといえるでしょう。