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第62回【共同配送】きょうどうはいそう

筆者:
2024年10月28日

[意味]

物流の効率化を図るために、複数の企業が共同で配送を行うこと。(大辞林第四版から)

[類語]

共同輸送

 * 

トラックドライバーの残業制限に伴い輸送能力が不足する「2024年問題」。4月から働き方改革関連法が運送業にも適用され、トラック運転手の時間外労働に年960時間の上限規制が設けられました。長距離輸送は運転手の拘束時間が長くなり、十分な休憩時間を取る必要もありますので、輸送時間もこれまで以上に長くかかるようになりました。時間短縮をするには中継地点で運転手を交代させることなども考えられますが、人件費の高騰や働き手の不足もあって、なかなか思うようにはいかないようです。

こうした「2024年問題」に悩む物流業界で進んでいるのが「共同配送」や「共同輸送」です。関連法の施行後、日本郵便と西濃運輸の大手2社が長距離輸送で協業するとの報道がありました(5月6日付日本経済新聞朝刊1面)。両社のトラック1万台に荷物を混載して運ぶほか、他社の荷物を受け入れることも検討。1台当たりの積載率を高めて、効率的に運送できるようにしようという試みです。物流センターから店舗などへ運ぶ共同配送は増えていますが、大手が全国規模で長距離の共同輸送をするのは珍しいとされます。

記事データベース「日経テレコン」で、1990年以降の日本経済新聞での「共同配送」の出現記事件数を調べたところ、1990年代前半に件数が多く見られました。景気拡大による人手不足のなかで、物流業界が強いられた多頻度小口配送への批判が起きたり、窒素酸化物の排出抑制が求められたりし、コスト削減を含めた「共同配送」への動きが出てきた時期でもあります。また2000年以降に見られるグラフの山は「宅配危機」が叫ばれた2017年。インターネット通販による物流量の急増で、配達時間を指定した荷物が要望どおりに届けられないケースが増えるなど、生活インフラのひとつとなった宅配便が危機に直面した時でした。「置き配」なる新語も、この頃から使われるようになりました。

かつては自前主義が強かったという物流業界。「2024年問題」が深刻になるなかで「共同配送」は今後も物流網を維持していく手段として、さらに増えていくものと見られます。

2024年は9月まで

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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