続 10分でわかるカタカナ語

第24回 ベネフィット

2017年9月2日

どういう意味?

「利益」のことです。

もう少し詳しく教えて

ベネフィット(benefit)とは、英語で「利益」を意味する言葉です。ただしここで言う利益とは、必ずしも金銭的な利益だけを指すのではありません。例えば自動車を購入したとき、消費者は機能的な利益(例:移動時間の短縮)や心理的な利益(例:自動車で旅行した時の楽しさ)を得ることになります。このような「お金ではかることができない便益」もベネフィットと言うことができます。

なお英語の benefit には利益という意味のほか、「公的機関や企業が提供する手当や給付金」、「慈善興行」という意味もあります。いずれも「利益」から派生した意味です。カタカナ語でも、まれにこの意味のベネフィットが登場する場合があります。

どんな時に登場する言葉?

利益・便益などが関連するあらゆる分野で登場します。例えばマーケティング分野では「顧客に提供する便益」のこと、行政などの分野では「事業によって得られる便益」のこと、医療分野では「医薬品の安全性や有用性」のことを、ベネフィットと表現します。

どんな経緯でこの語を使うように?

専門用語として以前にもあった言葉ですが、広く使われるようになったのは1980年代ごろからと考えられます。

国会の議事録では、1990年代後半からベネフィットの登場回数が増加しました。バブル崩壊後の厳しい経済状況・財政状況が、公共事業のベネフィット(効果)を意識させる要因となった可能性があります。

また近年では、ビジネス用語としてさまざまな分野で登場機会が増えているようです。例えばウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』の人気投稿コーナー『オトナ語の謎』では、2003年6月17日公開分で、利益を意味する「ベネフィット」が投稿されていました。

ベネフィットの使い方を実例で教えて!

マーケティングの「ベネフィット」

マーケティングの分野では「メリット(merit)とベネフィットの違いを意識せよ」という論説も見かけます。この場合メリットとは「商品・サービスそのものが持つ長所」のことで、ベネフィットは「顧客にとっての便益性」を意味します。

「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」。これはマーケティング界の有名な格言です。この格言に即して言うなら、メリットとはドリルが持っている「穴をあける機能」のことで、ベネフィットとは「穴があくこと」ということになります。

行政の「ベネフィット」

行政の分野では、公共事業の有効性を評価するための方法として「費用便益分析」という概念が登場します。公共事業にかかる費用(コスト)と得られる便益(ベネフィット)を比較する分析手法のことです。コスト・ベネフィット分析とも言います。

この費用便益分析で、よく登場するのが「B/C」(ビーバイシー)という指標。これは費用便益比(Cost Benefit Ratio,CBR)のことです。数値化した便益(ベネフィット)を費用(コスト)で割った数値を意味します。費用に対して得られる便益の比率を表し、事業計画の評価に用いられます。

医薬品の「ベネフィット」

医療分野では「医薬品の安全性や有用性」のことをベネフィットと呼びます。ベネフィットと対照をなす概念はリスク。こちらは「副作用などの不具合の可能性」を指します。近年これらを評価・比較するための具体的方法論について、活発な議論が交わされるようになりました。

そのほかの「ベネフィット」

まれに「手当・給付金」や「慈善興行」を意味するベネフィットが登場する場合もあります。手当・給付金は「フリンジベネフィット」(fringe benefit)。これは、企業が従業員に与える追加的給付を意味します。具体的には、本給以外の諸手当や福利厚生制度などがこれにあたります(金銭以外の給付をも指す点に注意)。また慈善興行の代表例には「ベネフィットコンサート」(benefit concert)があります。これは慈善目的で行う音楽興行のこと。いわゆるチャリティーコンサートを意味します。

言い換えたい場合は?

基本的には「利益」「便益」「恩恵」などの言葉で言い換えることが可能です。「金銭的な利益」を想起させたくない場合は「便益」「恩恵」などを使うのが良いでしょう。

行政分野のベネフィットは、多くの場合、費用便益分析の文脈で登場するため「便益」で言い換えるのが妥当だと思われます。医療分野のベネフィットは「医薬品の安全性や有用性」などの文章表現を試してみてください。また、フリンジベネフィットは「追加的給付」「賃金外給付」などと言い換えられます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

プロフィットとの違い 日本語に訳すと「利益」になる英単語は benefit だけではありません。例えば profit(プロフィット)も advantage(アドバンテージ)も「利益」と訳せます。
 では benefit とこれらの言葉の違いは何なのでしょうか? 実は profit は「金銭的な利益」「収益」を限定的に指す表現。(→NPO) また advantage は「何かと比較した時の優位性」を意味します。これらに対して benefit は「状況の向上に資するもの(便益一般)」を指すという違いがあります。

善行 benefit の語源をたどると、ラテン語の benefactum に辿り着きます。これは「善行」を意味する言葉です(参考:『ランダムハウス英和辞典』小学館)。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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