(第3回からつづく)
「呪怨」ちゃんの出生届
「悪魔」ちゃん命名事件は、司法判断上は尻切れトンボに終わったのですが、戸籍行政においては大きな意味がありました。「悪魔」のような名が付けられた出生届を戸籍窓口は受理すべきでない、という先例が法務省によって示された(平成5年9月14日)ことになるからです。
したがって、萎彙咽淫鬱怨苛楷潰諧骸顎毀嗅惧憬股錮喉乞傲痕挫斬恣摯餌𠮟嫉腫呪羞尻脊腺箋狙踪唾綻緻嘲捗溺妬賭貪丼罵剝氾膝訃璧蔑哺麺喩瘍沃拉辣慄賂弄籠(字体は第1回を参照)の66字が常用漢字表に追加されたとしても、「呪怨」ちゃんの出生届を、役場の窓口は受理しない可能性が高い、ということです。あるいは一旦、受付はするものの、出生届の受理は保留し、法務局経由で法務省にお伺いをたてる可能性もあります。
ただし、これら66字を出生届に書けない、というわけではないところに注意が必要です。しかも、出生届が受理されてしまえば、たとえそれが命名権の濫用にあたるとしても、その名が戸籍に登載されることになるわけです。
「龍」の1画目
改定常用漢字表は、これまでの常用漢字表のうち1940字を引き継いでいますが、丸カッコに入った康煕字典体の中には変更されたものがあります。その中で、微妙に問題になりそうなのが「龍」の字体です。
現在、常用漢字表の「竜」には、丸カッコ書きで「龍」が添えられています。つまり、「竜(龍)」となっているのですが、この「龍」の1画目は横棒です。現時点での人名用漢字においても、やはり「龍」の1画目は横棒です。ところが、改定常用漢字表の「竜(龍)」では、「龍」の1画目は縦棒になっているのです。この結果、人名用漢字の「龍」の1画目を縦棒に変更するか、それとも横棒のままでいくか、という点が、今後、微妙に問題となります。
ただし、法務省民事局は、「龍」の1画目が横棒であっても縦棒であっても「同一字体」とみなして取り扱ってよい(平成17年8月3日)、としていますので、人名用漢字の「龍」の1画目が縦棒になっても、取扱上は変更されないかもしれません。
合計2997字に
結局のところ、常用漢字表の改定にともない、子供の名づけに使える漢字が66字ほど増えることになりますが、でも、それら66字は、名前にはあまりふさわしくなさそうな漢字ばかりです。一方、「痩」と「龍」には微妙な変更が加わる可能性があり、最終的には合計2997字が子供の名づけに使える漢字になりそうです。ただし、改定常用漢字表の内閣告示までには、まだ半年近く時間があります。その間に新たな動きがあった場合には、また、このページでお伝えすることにいたします。