どういう意味?
「職業・職業的経験」、または「運ぶ者」のことです。
もう少し詳しく教えて
カタカナ語ではいずれも「キャリア」ですが、元になる英語は異なる単語です。「職業」や「職業的経験」を意味する場合は career、「運ぶ者」を意味する場合は carrier です。
前者は、「経歴」「職歴」、特に「専門知識・技術を必要とする職業」をいいます。また、日本では、国家公務員試験 I 種合格の職員をさす俗称としても使われます。
後者は、「保菌者」、「担体」、「搬送波」などの意味があります。また、自動車の屋根につけるスキー板などの「荷台」をさすことがあります。そのほか、「電気通信事業者」、「運送業者」、「航空会社」をさすこともあり、その場合は「コモンキャリア」ともいいます。
どんな時に登場する言葉?
前者は、ビジネスや人事・就職・転職などで、よく用いられます。関連して、「キャリアセンター」「キャリア戦略」「キャリアカウンセラー」など、就職支援施設やセミナー、カウンセリングなどでも見かけられます。
後者は、医療・衛生分野では「保菌者」「保因者」、物理学・化学・生物学・遺伝学などでは「担体」、電気・通信・IT関係では「搬送波」「電気通信事業者」といった意味で用いられます。また、運輸・通信関係では、前述のコモンキャリアの意味で使われることが多くなります。
どんな経緯でこの語を使うように?
もともと一般に広く使われたのは、高度成長期以降にあらわれた、熟練した技術と知識をもつ女性専門職である「キャリアウーマン」でしょう。その後、「キャリア」の英語的な意味が一般的になり、後述する「キャリア組」「ノンキャリア組」といった官庁用語が一般に広まりました。
一方、「運ぶ者」を意味する「キャリア」はそれぞれの分野で専門用語的に使われていたものが、情報化時代になりメディアを通して一般に広まりました。
キャリアの使い方を実例で教えて!
キャリア組vsノンキャリア組
「キャリア組」とは日本の公官庁で国家公務員上級職( I 種)試験合格者をさす俗称です。この資格は高級官僚コースの必須条件といわれています。この資格を持たないのが、「ノンキャリア組」といわれる人々です。1997年からフジTV系で放送された刑事ドラマ「踊る大捜査線」で、警察機構におけるキャリア組とノンキャリア組の確執が描かれました。後に映画化もされるほど大ヒットしたこのドラマから、「キャリア」「ノンキャリア」という公官庁の隠語が子どもにまで広まりました。
キャリアウーマンは死語?
フェミニズムの台頭でアメリカを中心に「○○ウーマン」「○○ガール」という言い方自体が女性蔑視(べっし)を含意すると嫌われ、今日では和製語の感じが強い言葉になってきました。バブル期に流行った派生語に「バリキャリ」があり、これは「バリバリのキャリアウーマン」の略です。
キャリアアップ/キャリアダウン
どちらも和製語です。概して、「キャリアアップ」は現在より上級の資格や職業的能力を取得して職歴を高めることをさし、「キャリアダウン」は現在よりも低賃金や降格した地位への転職などをさしています。
○○ウイルスのキャリア
ウイルスの保菌者を「キャリア」と呼びます。例えば、「C型肝炎の無症候性キャリア」といった場合、肝機能に持続的な異常があらわれないがC型肝炎ウイルス抗体陽性の保菌者をさします。
ITでいう「キャリア」とは
「電気通信事業者」か「搬送波」のいずれかです。電気通信事業者には、自社で伝送路設備をもつ事業者(旧第一種通信事業者)と、他社の伝送路設備を借りる事業者(旧第二種事業者)の 2 種類があります。
前者は、加入電話のNTTやKDDI、携帯電話のNTTDoCoMoやソフトバンクモバイルなど、ほかにケーブルテレビ事業者などがあります。これらはコモンキャリアとも呼ばれ、特に1985年に電気通信事業自由化後に参入した事業者をニューコモンキャリア(NCC; New Common Carrier)といいます。
いっぽう後者は、BIGLOBE、Nifty、So-netといったインターネットサービスプロバイダーなどが該当します。
言い換えたい場合は?
例えば、「プログラマーとしてのキャリア」と言うときには、「経験」「経歴」「職歴」「職業的経験」「履歴」などに、「彼は弁護士というキャリアを活かそうとして」と言うときは、「職業」「専門職」「技術職」などに言い換えられます。
「運ぶ者」の意味で用いられる場合は、前述のように、それぞれ対応する専門用語に言い換えるとよいでしょう。「キャリアー」「キャリヤー」とも言われます。自動車の屋根に着ける荷台は「ルーフキャリア」、「電気通信事業者」や「航空会社」「運送業者」などをさす場合は、それぞれに言い換えるか「コモンキャリア」とした方が紛らわしくないかもしれません。
雑学・うんちく・トリビアを教えて!
キャリア(career)とキャリア(carrier) 英語の発音は、どちらかというと、カタカナ語の発音と逆です。ところで、これらの英語の語源を辿っていくと、それぞれ紆余曲折を経ていても、いずれもラテン語で「四輪車」を意味する「car」に行き着きます。