三省堂辞書の歩み

第2回 仏和辞書

筆者:
2012年3月14日

仏和辞書

明治19年(1886)12月刊行
中村秀穂編/本文406頁/四六判

『仏和辞書』

【仏和辞書】国際交流基金情報センターライブラリー所蔵

『仏和辞書』本文

【本文1ページめ】

本書は、長崎の英学者岡田好樹が仏英辞典を翻訳した『官許仏和辞典』(明治4年・1871年)の内容を踏襲し、小型・簡約化を図ったものである。編者は中江兆民の仏学塾に入ってフランス語を学んだのち、神田猿楽町でフランス語塾を開いていた。本書刊行の翌年には『仏文典独学』を翻訳出版している。

仏和辞典の出版は、本邦初の洋装・活版(印刷は上海)となる『官許仏和辞典』から15年空白が続き、明治19年以降さかんになり始める。本書は高橋泰山訂正『仏和辞典』に3か月の遅れをとったものの、その先陣を争うものである。日進堂・十字屋・桃林堂・開新堂などの5社と共同の出版だった。

●最終項目

Zythum, sm. 苦味ナキ麦酒

●「猫」の項目

Chat, m. chatte, f. 猫

●「犬」の項目

Chien, sm. chienne, f. 犬、鶏頭

Entre chien et loup. 黄昏

─ dent. 草ノ名

─ marin. 海犬

◆辞書の本文をご覧になる方は

仏和辞書:
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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。