三省堂辞書の歩み

第3回 ウヱブスター氏新刊大辞書 和訳字彙

筆者:
2012年4月11日

ブスター氏新刊大辞書 和訳字彙

明治21年(1888)9月19日刊行
初版=F. W. イーストレーキ、棚橋一郎共編/本文1277頁/菊判半裁(縦152mm)
大増補版=F. W. イーストレーキ、棚橋一郎共編、南条文夫増補/本文1280頁、補遺275頁/四六判(縦175mm)

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【ウブスター氏新刊大辞書和訳字彙】初版

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【本文1ページめ】

【ウブスター氏新刊大辞書和訳字彙】大増補版

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【本文1ページめ】

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【補遺1ページめ】

本書は、三省堂が初めて単独で刊行した辞書である。アメリカのウェブスター大辞典(1864年)の翻訳をもとにして作られ、実質的な編者は斎藤精輔だった。彼は明治20年から参加し、明治24年の三省堂編輯所(のちに編修所)設立以降、昭和初期まで辞書編集の中心的な存在となる。

収録語数は約11万、熟語は約2万を掲載。見出し語には発音を表す記号が付けられ、図版を約1200点載せたと記されているが実際は半数ほどか。この発音表記や図版はウェブスター大辞典に倣っている。また、明治21年1月の大倉書店から刊行された『附音挿図 和訳英字彙』が同じウェブスター大辞典から作られていたためか、図版も訳語もかなり似通っていた。

両書はライバル関係にあり、互いに増補や改訂を繰り返している。『ウブスター氏新刊大辞書 和訳字彙』は、明治24年(1891)の14版で「附音人名字類」171頁を追加し、15版では「補遺」275頁を加えた。さらに、図版を描き直したり、本文にも改訂を加えたりして、1274頁以降(X・Y・Z)は3頁増えている。その結果、20年以上も増刷が続くロングセラーとなり、三省堂の躍進を支えるものになったのである。

(注)「○版」は増刷回数を表していて、三省堂が現在のように増刷を「○刷」と奥付に記載するようになったのは昭和40年代から。

●最終項目(初版)

Zythum, n. 麦芽及ビ小麦ニテ製シタル麦酒

●最終項目(大増補版)

Zythum, n  麦酒ノ一種

※原本は「n」の後のピリオドが抜けている。

●最終項目(大増補版の補遺)

Zythem, n.  Zythumヲ見ヨ

●「猫」の項目

Cat, n. 〔動〕猫;〔航〕石炭運搬舩、錨ヲ錨止ニマデ引上ル滑車;〔隠〕貴女ノ暖手筒、[当時刑杖ト云フ語ニモ用ユ]

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●「犬」の項目

Dog, n. 狗、人ヲ罵ル詞、鉄架(ゴトク)、鋸匠(コビキ)ノ鉄鉤;〔天〕狼星;〔機〕鉤索(カギナハ)、制動機

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◆辞書の本文をご覧になる方は

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。