三省堂辞書の歩み

第44回 センチュリー英和辞典

筆者:
2015年9月26日

センチュリー英和辞典

昭和8年(1933)2月5日刊行
三省堂編輯所編/本文1606頁/三六判変形(縦191mm)

センチュリー英和辞典

【センチュリー英和辞典】25版(昭和9年)

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【本文1ページめ】

本書は、昭和3年刊行の『三省堂英和大辞典』より本文は1000頁ほど少なく、大正8年刊行の『模範新英和大辞典』に近い規模の辞典である。サイズは昭和4年刊行の『新訳和英辞典』(本文1502頁)にほぼ等しい。

内容は、『三省堂英和大辞典』をもとに簡約化しているが、意味分類や用例などに手を入れ、分かりやすくなっている。例えば、「猫」の意味分類は9つから5つに減り、「犬」のほうは9つから8つとなった。熟語(慣用句)は、「猫」が33から17に、「犬」は29から15に減った。

しかし、単純に減らしただけではなく、語釈に「備考」を設けたり、新たな熟語を加えたりもしている。また、動物の鳴き声、花ことばや宝石の石ことば(玉詞)が英語で掲げられた。

発音記号は、三省堂の大型辞典として初めて国際音声記号(ジョーンズ式)を採用。語釈は、従来どおりカタカナ交じり文で表記されていて、外来語は平仮名にしている。

付録には、「固有名一覧」30頁、「動詞ノ語形変化」7頁、「名詞ノ語形変化」3頁、「形容詞及副詞ノ比較」4頁、「常用略語解」12頁がある。

定価は3円50銭、普及定価は2円だった。『三省堂英和大辞典』の定価7円、特価5円50銭に比べると、かなり割安な印象である。

なお、「センチュリー」といえば、アメリカの『センチュリー辞典』(1889~91年、12巻)がある。イギリスの『オックスフォード英語辞典』(1884~1928、12巻)が完成するまでは、世界最大の英語辞典だった。書名の関連性について、序文では触れられていないが、当然知っていたうえで「センチュリー」を用いたものと思われる。

●最終項目

●「猫」の項目

●「犬」の項目

筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2または第3水曜日の公開を予定しております。