前々回は新しい話題の導入にかかわる表現、前回は脇道にそれるときの標識となる表現を取り上げました。今回は脇道にそれた話題を元に戻す時に用いられるものを考えてみます。
anywayにはいろいろな用法がありますが(本辞典では10の語義に分けています)、よくみる使い方に元の話題に戻るものがあります。次例は本辞典からの引用で、「e-mailで送ってほしい」という要請に対して、コンピュータの問題があることをまず述べ、そこから元にもどって要請に答えることを示す標識としてanywayを使っています。
2 〈話題の本筋に戻って〉とにかく: “Can you send your CV by e-mail?” “Well, my computer doesn’t work properly. I’m thinking of buying a new one. Anyway, I’ll try to send it.” 「履歴書をメールで送ってくれませんか」「実は, コンピュータの調子が悪くてね, 新しいのに買い換えようと思っているんだ. ま, とにかく, 送ってみます」.
by the wayは過去2回でも取り上げましたが、今回も登場します。語彙項目ごとに記述していくと一緒に述べることができるのですが、このようにテーマごとにまとめると、煩瑣ですが、それぞれのところで記述せざるを得ません。いずれにしましても、by the wayは話題の導入、転換にかかわる語句で、次は前置きの話から本来の主題に移る用法です。
4 〈会話の本題に入るときに〉さて, ときに, ところで; 《会議の始めに》 It’s good to see you again. By the way, what’s become of the matter we spoke of? こんにちは, みなさん. ときに, 前回話し合った例の件はどうなりましたか? / 《採用試験面接官が雑談の後で》 Oh, by the way, do you have any special skills? さて, 何か特技はありますか?
また、文字通りの意味から元の話題に戻る言い方もあります。代表例がas I was sayingです。
1 〈話題を元に戻して〉前に言ったように, 先ほどの話だけど: Yes, honey, as I was saying, what would you like to do this summer holiday? そうそう, あなた, さっきの話だけど, この夏休みはどうするの? / 《コンピュータの話をしていて電話で中断した後で》 Well, as I was saying, the switch is turned on here. えーと, さっきのことだけど, スイッチはここだよ.
三省堂コーパスから元の話題が明示されている例を付け加えておきます。
《テレビを見ている夫に》‘Breakfast is served. Oh, I hate boxing.’ ‘There’s nothing wrong with boxing. It’s just sport, like any other.’ ‘But they’re just hitting one another.’ ‘Two highly trained athletes trying to outwit each other in a ring of combat.’ ‘Whatever you say. As I was saying, breakfast is served.’「朝ごはんの準備ができましたよ。うわ、ボクシングは嫌いだわ」「ボクシングのどこが悪いんだ。スポーツだよ、他のスポーツと一緒じゃないか」「だって殴りあっているだけじゃない」「2人の鍛え抜かれたアスリートが闘いのリングの中で互いに頭を使って勝とうとしているんだよ」「そうですか。とにかく食事ができてますから」