今回は会話の終結を表す表現を考えてみます。まず、会話を終えようという意思を文字通り表す言い方にThat’s it. があります。話を途中で打ち切るときに用いられます。以下は本辞典からの引用です。
4 〈話を打ち切って〉それまでだ, それでおしまい, 以上, もうたくさん: 《不利な立場になって一方的に》 “You never wash the dishes!” “That’s it. Finish.” 「あなたはいつも食事の後片づけをしないわね」「それまで. この話はこれでおしまい」 / 《レストランで料理を注文して》 I’ll take onion soup, roast beef with a side of salad, and vanilla ice cream for dessert. That’s it. オニオンスープ, サラダ添えローストビーフ, それとデザートにバニラアイスクリーム. 以上.
第2例は料理を注文するときの用法ですが、第1例は相手の発言で不利な立場に立たされそうになったときに、それをさえぎる言い方です。次の例は相手の言い訳に対してあきれてしまったときの発言となります。
6 〈相手の発言に我慢できなくなって〉もうおしまい: 《恋人同士の会話》 “I saw you kissing Cathy yesterday.” “No. You took me for someone else.” “That’s it. I can’t stand it any longer.” 「昨日あなたがキャシーとキスしているところを見たわよ」「違うよ. 君は僕と誰かを見間違えたんだよ」「もうおしまいよ. 我慢できないわ」.
また、That’s it. は談話構造の中で、話の終結を示したり、仕事や作業などを切り上げるときの標識としても用いられます。
5 〈話や仕事の最後に〉これでおしまい, これで終わりです, 以上です, それで万事OKだ: Well, that’s it, folks! Off home with you! お話はこれでおしまいです, 皆さん! うちへ帰りましょう! / That’s it for my lesson today. 今日の授業はこれでおしまい/ Well, that’s it. Everything’s ready for the camp tomorrow. よし, そこまでだ. これで明日のキャンプの準備ができた.
いずれの用法のThat’s it. にも話し手側からの「一方的な終結宣言」というニュアンスが感じられます。
今までにもよく取り上げてきたanywayやwellにも同じような話を切り上げる用法があります。anywayは特に電話で「用件は終わった」「言いたいことは言った」といった含みで終わりのあいさつの前によく使われます。
4 〈会話を終えようとして〉じゃあとにかく, それでは: Anyway I’ll give you a ring tonight. じゃ, とにかく今晩電話するよ.
このあとには、おそらく、終わりのあいさつのやり取りが続き、電話が切られるというシナリオになるでしょう。
次のwellは話題の転換につながるものですが、一区切りがついたことを合図しています。
4 〈中心となる話が終わったことを合図して〉それでは(◆下降調で): 《会議の席で》 I’m sure this project will be completed by this weekend. Well, I see it’s just about time for lunch. このプロジェクトは週末には完結すると思う. それでは, そろそろ昼食にしましょう.