『英語談話表現辞典』覚え書き

(41) 同情表現

筆者:
2011年3月3日

前回まではいろいろなコメント表現をみてきました。今回は聞いたことや相手がおこなったことなどに同情する気持ちを表す表現を考えみます。

相手に同情する気持ちを表す表現として一番に思い浮かぶのは sorry という語でしょう。ただ、この語は単独で用いるときや‘I’m sorry.’では「すみません」と謝る表現になりますので、「残念だったね」とか「大変だったね」という同情を表すときは sorry のあとに同情の対象となったことを続けます。前置詞 about を伴い、‘(I’m) sorry about A’という形が典型です。本辞典からの引用です。

1 A〈よくない知らせ〉を残念に思う, 遺憾に思う:《親友を亡くして》 I am deeply sorry about his death. 彼の死は本当に残念だ / I’m sorry about your trouble, but I can’t help you. あなたが問題を抱えているのは気の毒に思うけど, 私には助けてあげられないの.

さらに、相手から聞いた情報を that で受けて、文字通り「…を聞いて気の毒に思う、残念に思う」の意を表すのに用いられます。

1 〈同情して〉…を聞いて気の毒に思う:“Mary had an accident last week and she is still in the hospital.” “I’m sorry to hear that. We should go to see her.” 「メアリーは先週交通事故にあって, まだ入院しているんだって」「それはお気の毒に. お見舞いに行かなきゃ」 / 《学校での友だち同士の会話》 “Why were you absent from school yesterday?” “I caught cold and had to be in bed all day.” “I’m sorry to hear that. Take care!” 「昨日どうして欠席したの?」「風邪を引いて1日中寝てなくちゃいけなかったの」「大変だったわね. 無理をしないでね」.
2 〈慰めて〉残念だったね:“Who won the game?” “We lost it.” “I’m sorry to hear that. Better luck next time.” “Thanks, buddy.” 「試合どっちが勝ったの?」「負けちゃったよ」「それは残念だったね. でも次は勝つさ」「ありがとう」 / “How was the test?” “I failed. I couldn’t answer at all because I got nervous in the test.” “I’m sorry to hear that. Next time will sure be fine.” 「テストどうだった?」「落ちちゃった. 上がっちゃって全然できなかったの」「残念だったね. 次はきっとうまくいくから」.

‘Bad luck!’も同情表現として使われます。この表現は運やめぐりあわせが悪かったときとか、ゴルフやゲームなどで相手のプレイや試みが惜しくもはずれた場合に用いられます。

1 〈慰めて, ねぎらって〉残念だね, 惜しかったね:“I failed the exam!” “Bad luck! But better luck next time.” 「試験駄目だった!」「残念だったね. でも次はうまくいくことを願っているわ」
2 〈うまくいかなかった行為にとっさに同情して〉惜しい!, ついてない!:《ゴルフのパッティングで, 入ると思われるボールがはずれて》 Bad luck! 惜しい! / 《夫が妻から隣の奥さんの災難を聞いて》 “She hurt her back falling down some stairs.” “Bad luck!” 「彼女, 階段を踏みはずして腰を痛めたんだって」「ついてないね」.

ちなみに、第1例の‘better luck next time’は「この次はうまくいく」という意です。

また、‘Too bad.’という同情表現もあります。

1 〈同情を込めて〉それは残念だ, お気の毒に:Too bad you couldn’t come to the party. It was great fun. パーティに来られなかったのはお気の毒でした. とても楽しかったのに / “I can’t come and see you tomorrow.” “Too bad.” 「明日はあなたに会いに来られないわ」「残念だな」

第1例は‘It’s too bad that . . .’、第2例は‘That’s too bad.’の省略形と考えられます。‘it’は後続する that 節を、‘that’は前言を受けていることに注意しましょう。

筆者プロフィール

内田 聖二 ( うちだ・せいじ)

奈良女子大学教授

専門は英語学、言語学(語用論)

主な業績:

『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

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