デンスモアのウィックオフに対する反論は、結論において以下の7点にまとめられていました。
- 「Caligraph」は「Type-Writer」より軽いが、それはメインフレームに可鍛鋳鉄を使用しているからである。可鍛鋳鉄はネズミ鋳鉄に較べ、同じ剛性を得るのに、より軽くすることができる。「Type-Writer」も、その形状による限り、もっと軽くできるし、コンパクトにできるはずである。
- 「Caligraph」は、安価な機械として設計されたわけではない。最初から一定の価格を維持する、という約束の通りだ。
- 「Caligraph」の代理店は、事実を広く述べているだけである。もちろん、野卑だったり、誇張が入っていたり、ある見方の下では間違っていたりするが。ウィックオフ氏が、あわて狼狽するのも無理はない。ただ、同じやり方で反対陳述をおこなって、引き分けに持ち込もうとするのは、間違った方法ではあるまいか?
- 「Caligraph」には、一貫した原理もなく、各部品に本質的なメリットもない、というウィックオフ氏の主張は誤りだ。「Caligraph」と「Type-Writer」は、同一の原理に基づいていて本質的に同じものであり、違いはほんの少しだ。「Caligraph」は「Type-Writer」と同様に、実用的で高速で耐久性もある。理論的に両者は、同じレベルで作られたなら、同じぐらい良いものとなる。「Caligraph」の工夫のいくつかは、「Type-Writer」のそれより優れているし、「Type-Writer」の工夫のいくつかは、「Caligraph」のそれより優れている。しかし、もし同じように作られたなら、両者は本質的に同じものとなる。
- 現時点では、「Type-Writer」の方が良い機械である。よく出来ているし、耐久性も高く、満足度も高い。同じ論点で言えば、「Caligraph」は安価なために売れていない。「Caligraph」の生産者は、過去に「Type-Writer」が経験したのと同じ問題に直面している。「Caligraph」のプロモーターは、その事実に学び、さらなる改良を続けている。そして、改良に成功したならば、価格は上がる。必要に応じて上がる。この5年近くで、出荷量はどんどん増えているにもかかわらず、いまだ利益が出るに至っていないのだ。
- 私個人は、両者の特許使用料に浴している。大半が「Type-Writer」で、「Caligraph」はごく一部だ。両者ともまだまだ伸びしろがあって、いずれミシンのように世界中で使われるようになるだろう。
- 「Type-Writer」の方が、そのコンパクトさにおいて「Caligraph」に勝っている。ただ、持ち味が違うのだ。「Type-Writer」は、1つのキーに2つの活字が取り付けられており、「Caligraph」は1つのキーに1つの活字が取り付けられている。ちょっとした違いだが、根本的な差でもある。どちらにもファンが付くだろうし、ファンは各々好きな方を応援するだろう。現時点では、両方に秀でている者はいないし、したがってどちらが、より良いのか判断できる者はいない。
デンスモアとしては、「Caligraph No.2」にだけ肩入れするわけではなく、タイプライターの市場全体が発展することを期待していたのです。しかしその夢は、これまで同様、棘の道でした。
(ジェームズ・デンスモア(26)に続く)