同じ金浦空港の中の免税品店の土産物には、
蔘鷄湯 2字目は鶏の旧字体
のほか、
しおから 塩辛
とある。隣の「キムチ 泡菜」から見て、この「塩辛」という漢字表記は中国語として書かれたものらしい。社名、商品名までは漢字表記がやはり多い。
皇作
正官庄
乐天
最後のこれは、韓国系の企業のロッテの中国名だ。日本のプロ野球に、「楽天」が参入する際には、ロッテを「楽天」と音訳していた中国語圏を動揺させたそうだ。企業の楽天は中国では「楽酷天」となったそうだ。「酷な」という使い方に慣れている日本人には、「酷」がカッコイイという褒めことばとしてのcool(クール)の音訳として使われるようになった中国語に違和感を感じるという。
以上、現代の韓国では漢字はベトナムよりも使われているといえる。上記のように、マスメディアと、看板など空間メディアでは漢字がそこそこ用いられていた。ただし、主として読ませるため(難しめの漢字にはハングルが添えられる)、あるいはあくまでも雰囲気を出すだけのための漢字使用であり、現在の韓国語を個々人が自主的に書くための漢字ではない。
ベトナムの実際については、かつての連載(第89回~第118回)を参照していただきたいのだが(⇒目次へ)、そことの違いの一つに、韓国は市内に寺院が見当たらないことが挙げられる。山まで登らないと、仏教、道教、宗教化した儒教などの寺社、宗教施設の漢字がなかなか見つからないのは、韓国の大都市らしい特色といえる。
漢字圏といっても、漢字が現に読める人の比率はどうなっているのだろうか。漢字を対象とする国としない国とに分かれており、いわゆる識字率というものは、計算法の問題と合わせて別に考えないといけない。韓国では、漢字教育が復権をみたそうだが、漢字を読める人の割合はベトナムよりは多く、日本よりは少ないようだ。世代間の凹凸の形にも差が感じられる。
自国語に用いられる主たる文字(使用頻度順。各国で作られた国字は漢字に含める)について、主な特徴を大づかみにまとめると下記のようになる。「・」は併用、「( )」は稀に見られる程度の使用を表す。アラビア数字、ふりがな・発音を注記するピンインの類、多言語表示における他言語の表示については、ここでは除いておく。
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