金浦空港では、土産品やメニューに、日本語が多数見られた。若年層を見ていると、韓国の人たちは日本語の習得が概して早い。それは、文法的、語彙的な近似性によるところが大きい。
대구탕 たら鍋 鳕汤鱼
このハングル(daegutang)は「大口湯」が相当する。「湯」がスープを意味するのは中韓で共通している。日本の国字「鱈」(たら)が本国のことばではこうしてひらがな表記となり、むしろ中国に移動した感が確かにある。
にくるい
しょくじるい
看板でのこれらの漢語の仮名表記は、日本では極めて珍しい。日本語が何かと身近なだけに、不用意な表記もまた散見されるのである。ここでは隣に記された「肉类」が補助情報を与えてくれる。
よくありがちな仮名の使用に間違いが頻発している看板に、漢字の誤変換のようなものも多数あった。
漁卵スープ
このように惜しい誤字が思いのほか目立つ。
冷面 ネンミョン
中国の簡体字を日本語としても使ってしまっている。この場合、カタカナがあまり意味をなしていない。「冷麺」だ。
肋眼
牛骨とウゴジの煮るスープ
これらは、何だか分からない。さらに、
牛の舌
豚の生首肉ロース
と、一見、不気味そうな文字が並び、注文するにはつらそうだ。仕方ない、帰りも機内食に賭けよう(結果は、行きとほぼ同じメニューだった)。空港内では薬屋も店を開いていた。
藥
ハングルと併用されていた。街中では、ハングルのみの方が多かった。日本では「ヤク」というと薬物、カタカナでリスクを逆に並べたとされることもあるクスリを指す隠語となっている。
膳物用
この「膳物」は、韓国語でプレゼントの意だ。漢字で書いても、日本人はもちろん、中国人にも通じない。店の外には、「”力”」の1字がハングルによる文の中に用いられている。これも今回気になった単漢字使用の一例だ。
その店の中には、
「贈り物コーナー」
「高血壓」(3字目は「圧」の旧字体)
などの字を打った紙が貼ってある。勝手に想像すると、きっとすごい精力剤なども置いてあるのかもしれない。どことなく怪しげな店に惹かれてしまうのだが、25年前に、最初に韓国に訪れたときにはまだ学生だったせいか恐い印象の店がたくさんあった。