前回から紹介している「漢字伝言ゲーム」では、
鰯 > ます
と、「鰯」(いわし)が「ます」に変わった班が出た。誤解か、臨時的な当て読みによるのだろう。合宿での自由な空気の中とはいえ、皆真剣に取り組んでいた。
「まゆ」は「眉」が原文だったが、「繭(中の糸虫が虫虫となって出現した字体に対して、知人の名前にでもあって記憶が確かだったのか、違いを指摘する女子あり)」や「繭(中の虫がない)」へとなっても、答えには差し支えが出ないのも面白みがある。漢字の全形を漠然とパターン認識している様子、訓読みは安定している状況がうかがえよう。
眉 > (字体がやや似る層と解釈して) そう
これは予想だにしない転訛だ。高校までにはまだ「眉」が常用漢字表に入っていなかったことも関係するのだろう。
「顰めて」は、確かに難しめだ。しかし、「潜めて」と変わってしまっても、次の人で「ひそめて」と読まれ、取り戻すことができて大丈夫だった。「密めて」と変わった班も、結局は正解にたどりついた。「まゆをひそめる」を慣用句的に覚えていたことも、役立ったのだろう。
「喧々囂々」、これは若年層はめったに使わず、メタレベルな言及としてはありがちだが、あえて含めてみた甲斐があった。班ごとに、以下のひらがな表記に変わった、つまりそういう読みがなされた。
けんけんきき
けんけんかいかい
けんけんひんひん
最後のヒンは、「口」が多いので、「品」と見たようだ。一種の類推読み(百姓読み)が行われたのである。その班は、「険々貧々」という悲壮な字面へと進み、やはり「けんけんひんひん」で確定した。カイは「回」、いや「貝」からだろう。
他の班では、
せんせんきょうきょう
となった。「セン」はいわゆる百姓読み。口偏が取れたわけではないので、旁からの類推でセンになり、その前後に「戦々恐々(戦々兢々)」と結びついたものだろう。「喧伝」もセンデンと読まれることがある。「喧嘩」のケンだ。質問されたときに、ボソボソと「佐々木さんのサ」などと話をしていたので、「踊り字」「繰り返し」は理解されていたのかもしれない。
確認の時間には、ケンケンガクガクという声も挙がった。有名な混淆だ。「喧々囂々」と「侃々諤々」(カンカンガクガク)、語感が似ていて、響きとしてケンケンガクガクのほうがもっともらしくなってしまった。