前回の記事で、日本語のフォローと英語のfollowには、いくつか意味用法上のズレがある、ということをお話ししました。今回は、このことについて、日本語の辞書と英語の辞書両方を引きくらべて検証してみたいと思います。
まずは、下の表をみてください。これは、国語辞典に載っているフォローの意味と、英語辞書に載っているfollowの意味を、まとめて表にしたものです。どの意味がどの辞書に載っているか、そして多くの辞書が採用している中心的な語義はどれなのか、おわかりいただけるのではないかと思います。
まずは、濃い青の①のところをごらんください。これは、「ラグビーのニュースをフォローする」のように、ある情報を興味をもって追いかけるようなときに使うものです。これは日英すべての辞書が採録しており、英語でも問題なく使える表現だということがわかります。②の「SNSでフォローする」は、まだ新しい用法なので載せていない辞書もありますが、英語でもfollowを使うところです。①と②で、日本語のフォローも英語のfollowも同じ意味で使えることがわかります。
薄い青色をつけた、③はどうでしょうか。「ついていく」という意味は、英語のfollowのもっとも基本となる意味なのですが、日本語には移入されていないことがわかります。ただし、スポーツでは、味方選手について走ったりシュートしたりすることを「フォローする」という例があり、これは「ついていく」に近いとみてよさそうです。ただし、日本語のフォローがこのような物理的な移動を指すのは、スポーツの場合だけのようです。
そして、オレンジ色をつけた④、⑤をみてください。これらは英語の辞書ではすべて空欄になっており、「助ける/ミスを補う」「追い風」という意味は、英語のfollowにはまったくないことが見てとれます。特に「助ける」という意味でfollowという語を使いたくなる人は、多いのではないでしょうか。「手助けする」「補助する」といった意味合いのときは、followは使えないということを、しっかり覚えてくださいね。
そのほかにも、英語のfollowのほうが、日本語のフォローよりもかなり意味用法が広いということが、この表からもわかるのではないでしょうか。みなさんお手持ちの辞書をひらいてfollowの項目をじっくり読んでみてください。とても幅広く、いろいろな場面で使えますね。あまりにもたくさんの語義があるので理解が大変かもしれませんが、理解するコツはあります。それは、どの意味のときでも、「A follow B」というとき「B(=目的語にあたるもの)が先にあって、A(=主語)のものがその後に続いて移動する/起こる/従う」になっている、ということです。模式図にすると、こんな感じです。
Bには「人」「もの」「事件」「情報」「規則」などなど、さまざまなものが入る可能性があります。そうすると、それぞれ違った訳語になりますが、followの基本的な意味はこの図のような感じだととらえておくと、理解しやすいと思います。よかったら、この図に当てはめながら、辞書の例文を1行ずつ読んでみてくださいね。
〈出典〉
- 三国:『三省堂国語辞典 第7版』 三省堂 (2014)
- 明鏡:『明鏡国語辞典 第3版』大修館書店 (2021)
- 新明:『新明解国語辞典 第8版』 三省堂 (2020)
- 林:『大辞林 4.0』 三省堂 (2019)(iOSアプリ「辞書 by 物書堂」)
- 泉:『大辞泉(デジタル大辞泉)』 小学館 (2019)(iOSアプリ「辞書 by 物書堂」)
- W:『ウィズダム英和辞典 第4版』 三省堂 (2019)
- OX:『オーレックス英和辞典 第2版』 旺文社 (2013)
- G:『ジーニアス英和辞典 第5版』 大修館書店 (2014)
- C:“COBUILD Advanced Learner’s Dictionary 9th Edition” HarperCollins Publishers (2018)
- OL:“Oxford Advanced Learner’s Dictionary 10th Edition” Oxford University Press, (2020)
[注]