このカタカナ語、英語で言うと???

第9回 アドバイス(1)

筆者:
2021年10月5日

和製英語ではないのにそのまま英語にできないカタカナ語、今日は「アドバイス」をとりあげたいと思います。

まずは形から確認しましょう。アドバイスを英語で書くとき、スペルはadviceとadviseのどちらになるか、覚えていますか? 正解は、“どちらも正しい”なのですが、それぞれ使い方が違います。名詞として使うときはadvice、動詞として使うならadviseになるのですね。アクセントは、どちらの場合も、2音節めのiのところにきます。そして、もう1点気をつけたいのは、動詞のadviseの発音です。動詞の発音は/ədváɪz/で、末尾は/z/と濁るということも、覚えておいてくださいね。

ややこしい語形と発音がきちんと確認できたと思いますので、次に意味をみていきましょう。まずは、日本語の「アドバイス」から考えてみます。『三省堂国語辞典』でアドバイスを引いてみると、「こうすればうまくいく、と言ってやること。助言。」、『新明解国語辞典』では「私的な助言。」となっています。そのほかの多くの辞書でも、アドバイスは「助言」や「忠告」であるとしているように、日本語のアドバイスは、「なにかがうまくいくよう(私的に)助言・忠告すること」というのが主要な意味だと考えてよいでしょう。英語のadvice/adviseも、もちろんこの意味で使えるのですが、語感はかなり異なる場合があります。

英語のadvice/adviseが日本語のアドバイスと違う点は、advice/adviseは「専門知識のある者や年長者が与えるもの」だということです。たとえばあなたが弁護士を訪ね、法律についての専門知識を得たとすると、それをlegal adviceと呼ぶことができます。また、医師から「~をするように」とか「~してはいけない」といった指示を出された場合、それはmedical adviceです。英語では「専門知識を要するタイプの助言」や、「こうしなければ深刻な事態を引き起こす」というような、重みのある忠告のことも、advice/adviseを使って表現することができるのです。

これに対し、日本語のアドバイスは、もっと軽い助言や忠告、また私的な助言としてしか使われませんね。ですから、強い勧告や、深刻な事態を引き起こすようなことがらに対してadvice/adviseという語を使うイメージが、あまりない人も多いのではないでしょうか。

I took some sick leave on my doctor’s advice.(医師の勧めにしたがって病気休暇をとった。)

Guests are strongly advised to keep valuables in the safe.(貴重品は必ず金庫の中に保管してください。)

このように、英語のadvice/adviseは「専門知識を要する助言」「重大な勧告」などについても使います。日本語の「アドバイス」の意味にとらわれすぎずに、これらも使いこなせるようになってくださいね。

日本語のアドバイスのような軽い助言については、a piece of adviceやsome adviceという表現を使うのがおすすめです。Listen, this is a piece of advice from me.のようにいうと、「これは私からのアドバイスだから、聞いてね。」と、重々しくなりすぎずに伝えることができるでしょう。また、tipはちょっとしたヒントやコツのことなので、I’m going to show you a useful tip.のように言ってもいいかもしれません。

注意したいのは、adviceは不可算名詞だということです。×an adviceとか×some advicesといった形になることはありませんので、この点には留意してくださいね。

〈出典〉

  • 『三省堂国語辞典 第7版』 三省堂 (2014)
  • 『新明解国語辞典 第8版』 三省堂 (2020)

筆者プロフィール

武田 三輪 ( たけだ みわ)

日本語教育能力検定合格及び420時間の研修修了。外資系企業(ダイソン・ノキア等)で日本語教育に従事し、その後大手英会話スクールで日常会話、TOEIC800点コース、ビジネス英語等を担当。早稲田大学文学学術院博士後期課程中退。大学院では日本語学を修め、辞書についても研鑽を積んだ。現在はフリーランスの英会話講師として、日本語学の知識を活かした英文法、辞書指導に力を入れながら、話せるようになることに特化した指導をしている。
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編集部から

「日本語風の発音になってはいるけど、メールはmailでしょ」
では、そのまま英語として使えるのでしょうか。
もとの英語とカタカナ語との間にズレがあるもの、そもそも英語ではないもの、カタカナ語のなかにはいろいろあります。
発信が重視される昨今、このカタカナ語、英語で言うと……そんな疑問に答える連載です。