和製英語ではないのにそのまま英語にできないカタカナ語、今日は「アドバイス」をとりあげたいと思います。
まずは形から確認しましょう。アドバイスを英語で書くとき、スペルはadviceとadviseのどちらになるか、覚えていますか? 正解は、“どちらも正しい”なのですが、それぞれ使い方が違います。名詞として使うときはadvice、動詞として使うならadviseになるのですね。アクセントは、どちらの場合も、2音節めのiのところにきます。そして、もう1点気をつけたいのは、動詞のadviseの発音です。動詞の発音は/ədváɪz/で、末尾は/z/と濁るということも、覚えておいてくださいね。
ややこしい語形と発音がきちんと確認できたと思いますので、次に意味をみていきましょう。まずは、日本語の「アドバイス」から考えてみます。『三省堂国語辞典』でアドバイスを引いてみると、「こうすればうまくいく、と言ってやること。助言。」、『新明解国語辞典』では「私的な助言。」となっています。そのほかの多くの辞書でも、アドバイスは「助言」や「忠告」であるとしているように、日本語のアドバイスは、「なにかがうまくいくよう(私的に)助言・忠告すること」というのが主要な意味だと考えてよいでしょう。英語のadvice/adviseも、もちろんこの意味で使えるのですが、語感はかなり異なる場合があります。
英語のadvice/adviseが日本語のアドバイスと違う点は、advice/adviseは「専門知識のある者や年長者が与えるもの」だということです。たとえばあなたが弁護士を訪ね、法律についての専門知識を得たとすると、それをlegal adviceと呼ぶことができます。また、医師から「~をするように」とか「~してはいけない」といった指示を出された場合、それはmedical adviceです。英語では「専門知識を要するタイプの助言」や、「こうしなければ深刻な事態を引き起こす」というような、重みのある忠告のことも、advice/adviseを使って表現することができるのです。
これに対し、日本語のアドバイスは、もっと軽い助言や忠告、また私的な助言としてしか使われませんね。ですから、強い勧告や、深刻な事態を引き起こすようなことがらに対してadvice/adviseという語を使うイメージが、あまりない人も多いのではないでしょうか。
I took some sick leave on my doctor’s advice.(医師の勧めにしたがって病気休暇をとった。)
Guests are strongly advised to keep valuables in the safe.(貴重品は必ず金庫の中に保管してください。)
このように、英語のadvice/adviseは「専門知識を要する助言」「重大な勧告」などについても使います。日本語の「アドバイス」の意味にとらわれすぎずに、これらも使いこなせるようになってくださいね。
日本語のアドバイスのような軽い助言については、a piece of adviceやsome adviceという表現を使うのがおすすめです。Listen, this is a piece of advice from me.のようにいうと、「これは私からのアドバイスだから、聞いてね。」と、重々しくなりすぎずに伝えることができるでしょう。また、tipはちょっとしたヒントやコツのことなので、I’m going to show you a useful tip.のように言ってもいいかもしれません。
注意したいのは、adviceは不可算名詞だということです。×an adviceとか×some advicesといった形になることはありませんので、この点には留意してくださいね。
〈出典〉
- 『三省堂国語辞典 第7版』 三省堂 (2014)
- 『新明解国語辞典 第8版』 三省堂 (2020)